記録109_敵の船からの手土産
《コロッシウム》での戦闘が終幕した、一方。
《女傑》、《スナイパー》、《スターロウ》は。
「ねぇおっさん!ここのボタンなんだと思う!?」
「あ、美花、ちゃん。説明、書、見つけ、た」
「ナイスゥ舞ちゃん!最っ高すぎ!」
「……これで、《睡魔》負けて、この船の持ち主来たら、終わりだよね………」
《コロッシウム》のメインである《コロシアム》の付近、隠し能力派が援軍を送るために使った宇宙飛行が可能な乗り物。
いわゆる宇宙船ってやつだ。
そんな中で何をやっているのかというと、この船を起動させて奴らの本拠地に乗り込んでやろうという魂胆らしい。
「いやぁ、そんな苦労事、やめて欲しいったらありゃしないんだけど……」
「「弱いおっさんは黙ってて!」」
「シュン!」
肩をすぼめて大人しくする《スターロウ》。
ギルドリーダーの面目丸潰れである。
「あの、おっさん、なんで、《近衛》?に、呼ばれた、んだ、ろ?」
「ま、昔は強かったからね〜。事実、一昔前の、プロゲーマーとかアマチュアゲーマーっていう枠組みを無視したプレイヤー最強ランキングの掲示板には、最強格として扱う人もいたし」
「落ちぶれて、しまった、のか……っ!あ、やば…」
そう言いながら作業すると、《スナイパー》が、バランスを取れずに倒れる。
そのはずみに、《スナイパー》が机のボタンを一つ押してしまった。
その瞬間、船が起動する。
「おぉ!舞ちゃん!着いたよ着いたよぉ!」
「やった、これ、も、私の、おかげ……」
立ち上がりながら輝かしいほどのドヤ顔を見せつける。
起動したことにより、船のマップ機能が起動して、敵の本拠地が映し出される。
そこは……。
「やっ……ぱり、再利用してるわけね。《断罪の巨城》。たしかに、セキュリティも完璧な、地下迷宮付き超巨大城塞のある惑星とか、むざむざと廃棄する方が愚策だもんね」
映し出されたのは、かつて《連勤翁》固有の惑星であった、死の星、《断罪の巨城》である。
そして、マップ機能とは違うモニターが二つ、存在していた。
一つは録画、もう一つはマップとは違う、位置情報が入ったファイルであった。
「……どっちから行く?」
「お、おじさんは録画からの方がいいと思うなぁ〜」
「じゃ、それで行こ!」
録画の再生ボタンを押す。
そこに映ったのは、《ドクター》その人であった。
『あ、あーあー、聞こえてるかな?君たち。ご存知の通り、《ドクター》だ。このデータが消えずに君たちに届くことを願う』
この瞬間に、《スターロウ》はもう気づいていた。
自分たちは誘われた。
もしかすると、自分たちはここでハッキングされるかもしれない。
そう考えた瞬間、更なる思考が働き、彼は叫んだ。
「ま、待て!外からまた援軍が来てないか!?」
「え、ちょ、ホントに!?」
これは本当だ。
この状況で味方を騙すようなことはしない。
「舞ちゃん、出るよ!」
「おっけー。頼り、に、するよ。《女傑》……」
二人は武器を持って迷わず飛び出して行った。
多分、コロシアムで使うはずだった軍勢を、《錬金翁》や《カタクリフト》に無駄打たさせるのは勿体無いと思ったのだろう。
しかし、録画を見始めた瞬間に現れる気配や、あからさまにハッキングする気マシマシの録画。
……コイツが、俺が考えているような人間であれば、コイツが次に言うセリフは、こうだ。
「『さて、話をしようか。《スターロウ》』」
被った。
ならば、コイツの思考は大体読めている。
位置情報の入ったファイルを開く。
そこには案の定、ウィルスが入っていた。
「『どうする?中の位置情報を取るには、ウィルスにかかる必要がある。ウィルスにかかってでも取る、大事な情報だと思うか?』、だろ?どうせ。わかってんだよ……」
これの位置情報がなんなのか。
アイツがただの能無しであれば、ウィルスを無効化されて、情報を取り出されるのを防ぐために、なんの意味もない位置情報が入っているだろう。
しかし、アイツは《メビウス》をハッキングできる、後にも先にも出てこないであろう大天才だ。
ならば、俺がこう予測しているのもわかっているはずだ。
だから、アイツはこの位置情報を、価値あるものにしなければならなかった。
この位置情報は、俺たちにとって大きな飛躍になる可能性がある。
ならば!
「ウィルスがなんだってんだ。ただの老骨一人と、その情報なら、等価交換だぁっ……っ!!」
目を爛々と輝かせた《スターロウ》は、その位置情報に手を伸ばし、アカウントの自由を失った。




