記録10_真人の試練・2
「クソッ!ここどこだ!?」
今、俺は恐怖の館の攻略中であった。
扉を開けるとそこには一回も見たことがない部屋。廊下。階段。
振り返っても、そこには見たことのない光景が広がるばかり。
いや、振り返って、向き直ったとしても、そこは一回も見たことのない場所に変化している。
嫌な夢でも見てるこのような、変な気分になる。
そう、これは夢のような光景なのだ。
見ている光景は次々と変わっていき、瞬き一つで見れる光景がわかる。
ここから、俺はどうやって出ればいいというのか。
第一、出る方法すらまだわかっていないのだ。
どうすることもできない。
ただただよくわからない道を進むのみ。
だが、違和感があった。
すべてのものが、最低でも、俺の見ているときは動いていない。
だが、一つだけ動いているものがある。
テレビだ。
テレビは、砂嵐を映し、ずっとそのままなのだ。
俺の目に入ったもので、動いているのは自分の体とテレビに映る砂嵐だけだ。
つまり、テレビの砂嵐になにか細工があるのだ。
テレビをよく観察してみる。
気づいたものは、リモコンがなかったことぐらいだった。
一応、心に留めておくことにする。
今できることなんて何もないわけだし、リモコン探しでもしてみるかと歩き回っていたが、違和感があった。
テレビは何個もあるのに、どのテレビにもリモコンはひとつもない。
手に持てるものは出てこないなんてことはない。
現に、壺やロウソクはあるしそれを持って移動もできる。
明らかにリモコン自体に何かあるとしか思えない。
別に光景がめちゃくちゃ変わると言うだけで物理法則は通用する。
これから僕はリモコン探しをするわけだが、一箇所でも見てない部分があるとそこをみることはできない。
どうするか?
もうここは、脳筋でいくしかないだろう。
まず、こんな館、無限に広がってる訳ではないだろう。
強制的に、壁を壊して一方向に突っ走っていけば端に着く筈だ。
そして、端についた。
なんか壁がバリアみたいに透明な膜と一緒に佇んでいる。
全く壊せそうにないから、ここが端でいいだろう。
今の俺にできるかわからないが、やるしかない。
俺は、この館を全壊させる!
HPを減らしてでも魔力を超回復させる魔力ドーピング剤と、かなり昔、使えるようになったら使おうと買った魔導書を出す。
魔力ドーピング剤を使った状態の今の俺なら、ギリギリ使えるかどうかだろう。
今から使うのは、広範囲型爆撃魔法だ。
俗に言う、核爆発を起こす魔法である。
核爆発と言うと、アニメ化した某実力者が連想されるが、そこはもう気にしない。
俺の腕力でも頑張れば壊せるほどの館だ。
爆撃魔法なんて使えばもう跡形もないだろう。
魔法の範囲は充分。
自分の後ろも攻撃できるくらいだ。
魔導書に魔力を込める。
範囲は、この館全体。
今あるだけの魔力を全部注ぎ込んで、絶対的な条件、目を逸らさないこと。
逸らせば、この館は復活する。
この魔法さ一度きり。
早昌戦でも使いたくなかった切り札だ。
だが、これで試練が終わるなら使ってもいい!
よし、魔力が足りた!
いつでも行ける!
「フルチャージ・バスタアアアァァァァ!!!」
恐怖の館を、一撃で吹き飛ばした。
〉〉〉
「わぁー、すごいことすんな、あいつ」
恐怖の館は端から端までまっさらになった。
真人のいるVIPルームはこことは異次元なので影響はない。
そして、実は元々、恐怖の館に端なんてない。
これがないと攻略が難しいという彼の優しい配慮により端が出現している。
元々、どこまでも広がり、ある程度でループする形になっていたが、その見当違いは致命的だ。
急いで作ったんだぞ。
そして、壊れないのは恐怖の館の橋だけではなく、リモコンも同じだ。
リモコンに着目したのはいい観点だ。
この館の脱出方法。
それは、この館にあるテレビのチャンネルを変えることだ。
テレビは、リモコンを持たない人には無関心だが、一度リモコンを手にすると態度が豹変する。
そんな中、数多あるテレビの中からおとなしいテレビを選び、チャンネルを変えると出口となるのだ。
なんでこんな頭おかしい設定なのかはわからないが、とりあえず、テレビのチャンネルを変えなければこの館からは出られない。
たった今、翔が放った爆撃魔法で恐怖の館はほぼ全壊した。
壁は消え去り、廊下と部屋の概念は消え、ただの何もない大きな部屋、という奇妙な光景となっていた。
テレビがそこかしこに、そして、唯一。
リモコンがそこには転がっていた。
「さて、リモコンを拾ってからが始まりだ。ほとんど魔力が空っぽの君に、テレビの群れをおさめられるかなぁ?」
真人は意地悪く笑っていた。




