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記録107_慈悲と傲慢と後悔と






「《愚聖者》もいなくなった。俺たちも、次で最後にするとしようか」


「……」




 《咎人》はもう戦う気だ。


 鎖をジャラジャラと構えている。



 彼はもう精神が壊れてしまい、仲間の死を易々と乗り越えれてしまうようだ。



 慈悲を与えてやれるほどの余地も………残されちゃいない。






 いや、この期に及んで“慈悲”なんてものを彼に与えようとしている俺が甘いのだろうか?



 こんな中途半端なところで見逃したとしても、彼はただ一人、これからの人生を生きていかなければならなくなる。



 果たしてこれは、彼を罪から解放する救済か?


 それとも、見渡す限りただ一人の荒野に置いていくような、孤独を味合わせる暴虐か?




 俺の行動によって、彼の人生が変わる。



 彼の人生にある、一つの分岐点として、俺はここに立っている。




「………ふぅぅ……」






 覚悟を決めろ。



 一番人生がかかってる、《咎人》はもう覚悟ができてるんだ。


 人差し指で2回クイクイ、と挑発する。




 俺は、《咎人》のその覚悟が消えないうちに…………。





「あぁ。来いよ。最高の葬送にしてやるぜ」







 俺は、コイツの最後にして最大の障壁として、コイツを殺さなきゃいけないんだ。












 〉〉〉






 一介の高校生、だと思っている。



 少なくとも、御齢67歳である俺からすれば、アイツららまだまだガキだ。



 俺はもう年金をもらって生活するような年だし、老後の楽しみでやっているゲームなのだから、俺がゲームをやっている分には別になんの問題もないと思っている。




 だが、アイツらはただの高校生。






 あんな、裏社会に通じているようなやつを相手取っていいようなやつじゃないはずなんだ。




 もっとまともな教育を受けて、ちゃんと授業を受けて、すくすくと育っていくはずだったのだ。







「なるほどなぁ……。コイツも、俺の責任、いや、罪ってことか…………」





 俺も、罪を犯したようだ。


 俺は、アイツらを責任持って育ててやらなきゃ行けなかったのかもしれない。




 でも、気づくのが遅すぎたんだ。





 “こうなる前に、止めるべきだった。”


 そう思う日がいつかくるのかもしれない。





 そうなった時、俺が全員まとめて守れるように……。




「………早昌、俺に策と、提案がある」






 〉〉〉









「行くぞおぉ!《錬金翁》、いや、早昌ああぁぁ!!」



「本名を叫ぶな!万が一にも聞かれたら、現実の方でのイザコザがあるんだから!!」





 そう言いながら、彼が振り回す鎖を、《錬金術》で宙空から作り出した棒に巻きつけさせて威力を相殺する。




 が、その棒のついた状態で、棒を突き刺すように鎖を振り回し、殺傷能力を高めてくる。






「フハハハ、こんなものか!早昌!!ご自慢の先読みはどうした!?」



「そう手軽にできるもんだと思ってんのか?忙しかったらできるわけないだろ!!」




 そう言いながら、鎖の一部分を破壊してリーチを少なくするが、《咎人》に巻きついている鎖で補填される。



 悪態をつきながら、二人は一進一退の攻防を繰り広げる。



 鎖を唸らせて鞭のように使い、鎖の端で音速を超える打撃を出すが、衝撃吸収材を咄嗟に作られてカバーされる。



 それに負けじと、早昌の入った《錬金翁》は、人形まるまる一体、と言うわけではないが、地面から腕だけ生やして行動を阻害する。





 やがて、二人は笑い合いながらも交戦を続け、足を止めた。





「………ふっ、ふぅ。ははっ、やはり1ゲーマーとして、今までで最高と言わざるを得ない。最期というのはここまで高揚するものか!?」



「人生最期のゲームを楽しめているようで何よりだ」





 やがて攻撃しあっていた手も止まり、《錬金翁》こと、早昌は問いかけた。







「ゲームでは死ぬが、現実世界で生きていける方法も、無いことはない。最後だが、本当にいいんだな?」



 またその問いか、とため息をつきながらも、《咎人》は答える。


「俺の答えは、依然として変わらない。同じ罪を背負った《愚聖者》が、精神を壊しているとは言え、裁かれたんだ。俺も、アイツと一緒に裁かれるべきなんだ」




「…………」



 《錬金翁》は目の光を失って、俯いている。





「現実に帰っても、俺が犯した罪と、それを責めるような目しかなく、俺と歩みを共にして、苦楽を分かち合った《愚聖者(アイツ)》……反田 聖也はもういない。なら、ここで正々堂々、悪に染まっていくのが、俺にとっての大正解なんだよ!」


「……………」




 黙りこくった《錬金翁》に、《咎人》は叫びながら、勢いよく拳銃を突きつける。



「お前、俺が負ける前提で話を進めるが……先読みが得意だからって、《(ペナルティ)》による“必中の銃弾”を避けることができるのか?無理だよなぁ、流石に銃弾は見切れねぇだろ?」


「…………」




 何も答えない《錬金翁》に勝ち誇った嘲笑を浮かべ、能力(アビリティ)を発動する。






「《(ペナルティ)》!これより、範囲内で生きていられる人間は俺のみとする!!」





『規則違反者。罪禍の処刑を執行します』




 その言葉とともに、必中の銃弾が撃ち込まれる。




 そして、《錬金翁》は…………。









「ならば俺は、責任を取るまでだ」





 その言葉と共に、手のひらに作られた球体は、《咎人》の天敵。





「《法則の破壊者(ルール・ブレイク)》」






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