記録99_ 風走一刀流
「……《錬金翁》が、ログアウト……?」
状況がイマイチよく飲み込めない。
どういうことだ?
なぜログアウトした?自分の意思で?戦闘の真っ只中に?何のため?
その答えは、案外早く帰ってきた。
「シンプルな話さ。これは所詮ゲーム。なら、ゲームじゃなくて、現実の方で襲われても何が起こったかはわかるまい」
「……っ!!お前らぁ!!」
「おっと、暴力はナシナシ。俺はしらねぇぜ?もしかしたら現実でそうなってるかもしれないって可能性を引き出してるだけだ。別に俺たちがそんなことやろうだなんて、一言も言ってねぇぜ?」
確かに、彼らの言うことは的を射ているかもしれない。
だが、心情的に信じたくない話。
そして、今までの《錬金翁》の行動と、このメッセージの信憑性。
どちらを信じる方が正しいかと言われれば、間違いなく前者だ。
「どちらにせよ、最大戦力である《錬金翁》が行動不能になったのは確かだ。このままだと奴らの能力に押されてオサラバだ。《風姫》、何かいい案……」
「私が、本気でいきましょう」
「……ほぇ〜」
「《カタクリフト》さんがやったらすごいことになりそうなので!!私、が程よく手加減してあげますよ」
《風姫》が前へ出る。
「正直言って、自殺行為だよ?確かに君は《四天王》の弟子だし、《隼鬼の加護》を持ってるかもしれない。だけどね、そんな生半可な攻撃手段で僕らを倒せるとは大間違いだね」
「あなた方には、これが蛮勇に見えると?相手の実力の底を測れない人間は、それが原因ですぐに死にますよ?」
「実力を測れていないのはどちらか、試してやろうかぁ?」
《風姫》に向かい《咎人》と《愚聖者》が共に動き出す。
完全な2対1。
今までの戦績から言っても、《風姫》は不利だ。
しかし、それは命を賭けた殺し合いではなかったから。
真に、身命を賭して勝負をする人間は………。
「決着をつけるまで、絶対に手の内を明かさない、ですよ。師匠の受け売りです」
刀に手をかけて、唱える。
「風走一刀流、【牛歩】の型。《一の次》」
鞘から刀が抜かれる。
それほどのスピードがあるわけではない。
しかし……。
ブォン!!
「!?風圧、だと!?これほどまでの風圧……!!」
基本、風走一刀流というのは、動きの速さに緩急をつけて相手を翻弄する流派だ。
それを《隼鬼》が独自にアレンジしてみたのが、瞬足の居合術である《七点抜刀》。
そして、《七点抜刀》は奥義であるが、これ以上に強い技は存在する。
その技を使うためには、技を順序通りに打つこと。
つまり、コマンドである。
まず最初に打つ技が、今の《一の次》である。
そして、二発目が……。
「《三姿》」
「次は何だ!?こんな技、報告にはなかったはずだ!!試合でも見せたことがない!!」
これは、緩急の『急』の部分。
風走一刀流【隼】の型、《三姿》。
素早い動きによって3人に見えるという、いわゆる影分身だ。
そして、その次が……。
「《五輪の夢》」
「……………」
「………………………遅い。なんだこの太刀筋は、攻撃してくれと言ってるようなものなのか」
【牛歩】の型。
宮本武蔵の『戦わずして勝つ』を体現するほどの、最高かつ最低速の太刀筋で勝負を決める技だ。
これに当たる人間は少ないだろうが、どのようなものでも切ることができる。
そしてその次こそが………
「《七点抜刀》」
「うおっ、あぶね!!」
「急すぎてびっくりしたわぁ」
風走一刀流【隼】の型。
みなさん知っての通り、最速の剣で相手に7回切り掛かる、この流派の中で最もすぐに使えて戦闘によく使うことがある技だ。
そして、最後の一太刀。
「《雲》」
これが、風走一刀流【牛歩】の型、最終奥義だ。




