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 ガタンッ、と大きな音がして目が覚めた。ベッドから落ちたのだ、と脳味噌が理解するより早く両手は顔を覆っていた。


 気分は最悪だった。びっしょりと寝汗を掻いているのがわかってやけに気持ちが悪い。


 息を吐いて覆っていた目をゆったりと開ける。そうしてちらりと時計を確認すれば時刻は朝七時。ちょうど普段、目が覚める時間だ。二度寝も許されない時間に、小さく溜息を吐く。


 そのまま起きてベッドに腰かけた。レースのカーテンの向こうから柔らかな朝日が差し込んできている。


 さっさと起きてシーツを洗ってしまおう。もう少し日が昇ったら布団も干そう。でもまずは寝汗を吸ったパジャマを着替えたい。こういう時は気持ちを切り替えてしまうに限る。悪夢には慣れっこなのだ。


 階下に行けばローズがトーストを焼いて、紅茶も淹れて、ベーコンと卵を焼いてくれているはずだ。卵の黄身は私好みに半熟にしてくれる。そういう、優しい友人が、私にはいる。そんなローズとの共同生活も、半年になった。つまり、私が前線を退いてから、半年。


「こういう時は、気持ちを切り替えてしまうに限る、のだけど……」


 ベッドから抜け出してカーテンを開ける。どうして半年も引きずっているのだろう、と私は窓に映る自分の姿を見てまた溜息を吐いた。



 自分で言うのもなんだけれど、私は幼い頃から優秀な魔女だった。難しいとされる高難度魔法も詠唱さえすればすぐに使えたし、その魔法のコツさえ掴めば無声呪文もさして失敗しなかった。


 それが高じて、この王国でも一番の「上級魔女」として長く任務に就いていた。それが誇りだったし、私にとっては生きがいでもあったのだけれど。


 考えごとに耽ってすぐ、階下から可愛らしい声が聞こえてきた。


「リリィ、起きてる? 朝ご飯できてるわ」

「ごめんローズ、すぐ行く」


 私は頭をふるふると振って思考を切り替えると、素早くパジャマを脱いで、手近にあったワンピースを頭から勢いよく被った。薄いオレンジの小花がデザインされた春らしい可愛い服だ。そうしてローズからまた呼ばれる前に、急いで階段を降りることにした。



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