〜月と太陽〜
第三話目です!
是非読んでいただけると嬉しいです!
日が落ちて、俺と背の高い男は闇と静寂に包まれ、この世界に2人だけ取り残されたようだ。
目的地も分からずただ脚を動かす。しかし、痺れを切らしてため息混じりに男に訊ねる。
「あの、一体どこへ向かってるんですか...?」
街灯はないが、こちらを振り向く男の顔が月明かりに照らされ、ニヤついてる顔が鮮明に見える。
人工的ではない自然の光に照らされたその男は、とても綺麗で神秘的に見えた。てか普通にイケメンじゃん...
「それは着いてからのお楽しみ。あてのない旅は男心をくすぐるだろ?少年。」
どうやら人をからかうのが好きらしい。ニヤニヤしながら、目的地を言わずはぐらかしている。
と思っていたが、男は急に真面目な声色で俺を見ずに話す。
「目的地は言えないんだよ。今から行くのは、組織の秘密基地みたいなとこだ、誰にも知られるわけにはいかない場所だ。」
さっきまでとは違い、男の真面目な声と静寂のせいで緊張感が漂う。
額に汗がぐっしょりとついている。その汗を拭いながらおそる、おそる男に訊ねる。
「なんで、そんなところに俺を?」
男は俺の方を向かないがはっきりと、答える。
「お前は、保護対象なんだよ。うちの秘密基地で匿うことにした。暴力団組織は日高透がスーツ男を殺した犯人じゃねえってことは気づいてるだろうしな。だから、次のターゲットはお前だ。」
男は俺に指を刺し脅すように答えた。
しかし、一つ疑問がでてくる。
「でも、さっき来るか来ないかはお前が決めろって言ってなかったですか?もし、行かなかったらどうしてたんですか?」
またニヤニヤしながら男は答える。
「上の命令だからなー、無理矢理連れていく予定だったよ。」
無理矢理って...この男、俺のこと試したな...
ニヤニヤしてるかと思えば、すぐに真面目な顔をしている。感情の波すごいな...まるで『二重人格』のようだ。
今はどうやら真面目モードらしい。
「お前も聞いたことくらいはあるだろ。『セレーネ』っていう組織を。お前が相手にした暴力集団もセレーネの息がかかった連中どもだ。上がお前を保護してやれってよ。」
もちろん、聞いたことある。『セレーネ』は史上最悪の極悪集団。密輸、強姦、殺人、なんでも武力を行使して、奪う最強の武力集団。
「上って、あなたも何かの組織に所属しているんですか?」
あっ、と男は何か思い出した。
「そういえば、言うの忘れてたな。俺の名前は、浅我 勇だ。あなたじゃなくて兄貴って呼べ。もちろん俺もある組織に所属している。迷える人々を導き守る組織、その名も『ヘリオス』。俺たちは太陽だ。明るい光でこの地球を照らさなきゃならねぇ。」
現代、世界は恐怖と憎悪に包まれている。どうやら、この組織は殺伐とした世界で、困っている人々を救う奉仕組織みたいだ。太陽...か...
「だからお前も、俺たちからしたら迷える人なんだよ。お前はこれからヘリオスの保護施設でしばらく暮らすことになる。まあ安全だから安心して過ごしてくれ」
吐き捨てるように男は言う。しかし、納得がいかなかった。
「保護施設って、俺はトオルを探した男を許せない!そいつを見つけるまでは!」
感情が荒ぶり大きい声がでた。しかし、男の小さく鋭い声に、俺の声は負けた。
「うぬぼれてんじゃぇ。お前の友達を殺った男は俺がとっ捕まえて殴らせてやる。ヘリオスの最前線で戦う、俺たちは命掛けだ。お前みたいな能力も無いガキは足手まといなんだよ。大人しく保護されてればいいんだよ。」
キツい言葉だが、この人は俺のために言ってくれているのだろう。
「...分かりました」
了承せざるを得なかった。
男は自信ありにげに言う。
「安心しろ。お前の友達の仇は俺がとってやるからよ。なんたって俺たちは太陽だからな。」
しばらく歩いて、建物が見えてきた。
「もうすぐ着くぞ。あの建物が保護施設だ。」
やっと着いた...都会から人里離れたとこに施設はあった。建物の中には老若男女30人くらいの人がいる。みんな俺と同じように辛い想いをしたのだろうか...
施設に着くなり男は施設に背を向けて、俺に言う。
「俺の役目はここまでだ。後は施設で自由にしてくれ。基本的に外出は自由だが、これを持っていけ。」
ほらよっと男に何かを渡された。
「ケータイ??」
男はそのケータイの説明をする。
「GPS付きのな。外出自由と言っても、保護監視下の身だからな。これ持っとけば、どこにいようと駆けつけられるからな。まあほとんどの人は怖くて外出しねーけどな。」
じゃあなと言いながら、男は来た道を引き返し闇に消えた。
施設に入ると、子どもの鳴き声や老人の怒声が響き渡っている。同じだ、みんな家に帰りたいんだろう。肉体的には安心でも心は全然安心できない。
みんな同じ部屋らしい。用意している布団に俺は向かう。悲しい声を聞きながら俺は布団にうずくまり。全ての音を遮断する。早く夜があけてくれと思いながら、眠りについた。今日いろいろあったせいか、すぐに眠れた。
朝日が眩しい。いつも俺を起こす声とアラームはない。いつもなら、鬱陶しく感じるが、今は少し寂しい気がする。しかし、施設は結構快適だ。綺麗な布団と朝ごはんも用意されている。味噌汁にご飯と目玉焼き。いかにも朝ごはんというメニューだ。普通に美味しかった。
施設の中は特に娯楽もなく暇だった。少し離れているが暇すぎるので街に行こう。初めてくる街だしなー。ケータイを忘れずに持ち、身支度を整えて
街へ向かう。