表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
再生  作者: みゆたろ
19/26

クレーム

場所が変わり、警察署内。


「ーー責任者を出せ!!」

今にも殴りかかりそうなほど、すごい剣幕で、そう女は繰り返している。


カツカツカツ。


遠くからヒールのような足音が聞こえてくる。


「ーーお客様、すみません。どのようなご用件ですか?」


やり手感を出しているその婦人警官は言った。しかし、警察署で「お客様」と呼ばれる事には少し抵抗があった。


「だから、責任者を出せ!って言ってるのがわからないのか?」


女は凄まじく感情的な顔で、大声を張り上げる。


「お話を私が聞きますので」


若そうに見えるが40過ぎくらいだろうか?

貫禄のある婦人警官が言った。


ーーもーこの際、誰でもいい。


影はおとなしく婦人警官についていく。


向かった先は、取調室のようだ。


「私は中村と言います。あなたは?」

「花邑楓と言います」

(ほんとは影の方なんだけど、影は存在しないから、楓と言っておこう)

影はそう思った。


先程までの剣幕がなくなり、普通に自己紹介を始めた。


「今日はどのようなご用件ですか?」

中村と言う刑事に聞かれ、ケータイでインターネットのページを開いた。

「これを見てください」

楓と名前を偽っている影は、問題のページを見せた。

「あなた方が不確かな情報で、私を容疑者扱いするから、私はネットで晒され、無言電話や、嫌がらせなどを受け続けています。この責任を一体どのようにとるおつもりですか?」

「それは申し訳なく思います。しかし、匿名の電話があり、事実確認をしたまでですのでーー」

「そちらには責任はないとおっしゃる訳ですね?」

「そうですね」

中村という刑事は、キッパリとそう言った。

「わかりました。それでは、、」



たまたま警察署の前を、楓が歩いていた時だった。


警察官から追い出されるようにして、影が警察署から出てきた。


「ーー影?」


影はその声のする方を見る。


「ーー楓、何してんだよ?こんなところで?」

影はどうやらご機嫌ななめの様で、口調が荒い。


「影こそ何してんのよ?警察署から出てくるなんてーー」


「ちょっと文句を言いに来たんだ。あいつら警察がちゃんと調べてないから、楓は被害被ってるんだろ?」


無言電話に、ピンポンダッシュ。

そんな嫌がらせは、受けなくて良かったはずなんだ。なのに話も聞かないなんてーー。


感極まったのか?影はそう言ったところで、涙を流した。


そんな姿を見ながら、影の肩にそっと手を置くと楓は言った。

蚊の鳴くような小さな声で。


「ーー影、ありがとう」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ