緊急会議
夜。警察署館内。
一本の電話が入った。
「先日の強盗事件の犯人について犯人を知っている」のだと言う。
その事件の担当部署に電話を渡す。
相手の声は女のもののようだ。
しかし、名前は名乗りたくないという匿名の電話だった。
「犯人は誰なんだ?」
「犯人は五人いる。そのうちの一人は、山崎佳苗、36才、花邑楓、17才、中村修司45才。清水健一36才、そして、山崎学39才の五人だ」
「それは本当の事なのか?」
刑事は聞いた。
受話器を持つ手に汗が滴るのを感じた。
手に力が入りすぎていたようだ。
「それは、あんたらが調べる事だ」
冷たくそう言い切って、電話は切れた。
今の電話は一体誰がかけたものなのだろうか?
刑事はみんな真剣そのものだ。
その電話を受け、ミーティングが開かれる事になった。
「ーー今の電話だが、どー思う?」
腰の低い刑事部長が聞いた。
「ガセの可能性は大ですね」
刑事の一人が言った。
「しかし、、ウソとも限らないので、半分は信じ、半分は信じないで捜査を進めるべきかと思いますが」
先程の刑事とは別の刑事が言った。
「山根と、島崎、田中の三人はあの電話が本当であるという前提で調べてくれ。そして、西島、川崎、田辺はあの電話が嘘であるという前提で捜査をしてくれーー何か分かればすぐに連絡を」
「ーーーはい」
一斉にそう答えて、刑事たちはそれぞれに調べを始める。
「うむ、そーだな」
顎に手を添えて、考えてる風に見える刑事部長がため息を一つついてから言った。
警察署館内は突然、ほぼ全員が出払い静かになった。
まずは、匿名の電話を信じる三人。
山根、島崎、田中。
まずは容疑者と疑われる人物の身近な人たちから、人物像を聞き出していく。
しかし、一人の人物の周りからともなると、調べるのはいつもながら困難になる。
ーーー山崎佳苗36才。彼女は勤務態度もよく、とても悪事を働くよーな人物ではない。と周辺人物はみな口を揃えて言った。
ーーー花邑楓。17才。
近所の話によると明るい高校生だと言う。
誰にでも挨拶するし、そんな事をする人には見えない。
周囲の人間が口にする人物像からは、この事件の犯人とは似ても煮つかないタイプの人だろう。彼女はやはりこの事件とは無関係な気がした。
中村修司45才。彼は頭脳明晰で、どんな問題もたちまち解決してしまう。そんな頭のい
い子だった。
こんな事件を起こすとは到底思えない。
清水健一36才に関しては家庭があり、愛妻家で休日には子供と遊んでいる姿をよく見かけると言う。
山崎学39才。
彼は未だに独身を貫き、恋人もいない。
仕事三昧の生活ではあるが、職場の中では明るく、勤務態度とてもまじめだったと言う話だった。
五人の事を調べるほどに、思い描いてる犯人像とはかけ離れていく。
ーーーやはり、あれはデマだったのだろうか?
刑事たちは、そう思い始めていた。
そんな時だった。
警察署館内に来客があったのはーーー。