影、倒れる
きゃゃゃーーー。
周囲が急に騒がしくなっていく。
多数の人の悲鳴、そして私(影)の中から、熱くも冷たくもない何かが流れていく。
まるで、水が流れ落ちている様に感じられた。
そこに突っ伏すもう一人の私(楓)。
そう、彼女をまもる為に産まれた偽の存在、それが私(影)ーーー。
「ーーーっ」
自分と瓜二つの顔が死んでいく。
楓はまるで自分の死を看取っているようなそんな気分に陥った。
まるで木霊するかのように、複十数人分の悲鳴が繰り返された。
パトカーが到着するよりも、少し早く強盗団体は現金を持ち、逃げ出していた。
しばらくの間、事情聴取という名目で、足止めをくらい、その間に影は病院へと運ばれていく。
しかし、私はもうただの分身でしかないのだ。痛みもなければ、更に死ぬこともない。
このまま、ここにいる訳にはいかない。
心電図や、脳波というものが、どの様に動いているのか?そもそも動いているか、どーかさえ、わからないのだ。そこの説明は受けていないのだから。
「ーーーん?」
気を失っていた私が目を冷ますと、そこには楓がいた。
「大丈夫?」
まだ少し意識がぼんやりとする。
「ここは?」
「病院だよ!それよりなんであの時、私を守ったりしたの?」
楓は不思議そうに聞いた。
「私は、、あなたをまもるため、、にーー」
そこまで言うと私「影」は急に眠りに落ちたようだ。
「ねぇ、どーしたの?ねぇ」
楓が影の肩を抑え、揺すっている。
しかし、余程疲れていたのだろう。影はその日一日目覚めなかった。