第1話 ロイド・アンダルシアと5人の姉
自らの姉フェチを詰め込もうと思って筆をとりました。
冒険的に色々書いてみようと思っています。
同時連載中のローファンタジーとの二足のわらじにはなりますが、反響があれば頑張って毎日更新してみようと思いますので、続きが気になりましたら是非【評価】【ブックマーク】をよろしくお願いします!
楽しみにしていただけたら幸いです。
王国に数ある魔法学院の中でも、トップと称されるベルセリア王立魔法学院。
このガルヴァスク王国の王様や、宰相その他大臣はみんなこの学院の卒業生である。
学院に入るには12歳までに王国の厳正なテストを受け、『突出した才能あり』と認められなければならない。
とはいえ、それは一般市民の話で実際はコネ入学などが横行しているのが実情だが。
それはさておき、国民の羨望と興味の眼差しを一身に受けるこのベルセリア王立魔法学院。
学院の行事があるたびに王都ガルヴァスクは都市をあげてのお祭りとなる。
特に王国中から将来有望な魔法使いが集まる入学式は数ある行事の中でも一番の盛り上がりを見せる。
今日はそんなベルセリア王立魔法学院の入学式だ。
◆
ロイド・アンダルシアには5人の姉がいた。
姉達は再婚した義理の母親の連れ子であったため血は繋がっていない。
そのうえロイドは王都の空気に馴染めず、父親が再婚して少しすると田舎に住む祖父の家に預けられたので一緒に生活したのはほんの少しの期間だった。まだ小さかったこともあり、可愛がってくれたのをぼんやりと覚えている程度の記憶しかない。
そんなロイドは数年ぶりに王都ガルヴァスクに戻ってきていた。
この春からベルセリア王立魔法学院の生徒になるからである。
今日はその入学式だ。
「えーっと……この辺のはずだけど……」
王都をぐるっと囲む城壁、その門の一つの近くでロイドはきょろきょろと誰を探している。
姉達の一人が迎えに来てくれる約束になっていた。
「会うのも随分久しぶりだからなあ……ボクのこと、覚えててくれてるかな」
ロイドが姉達と一緒に過ごしていたのはもう4年も前のことである。ロイドは成長して随分背も伸びたし、ロイドもまた、まだ小さかった頃の姉達の姿しか知らなかったのでちゃんと待ち合せられるかなと不安になっていた。
落ち着かない様子で城門の下をうろうろしていると、一人の美少女が現れた。
腰まである赤い髪をはためかせながらロイドに近づいていき、声をかける。
「ロイド。……ロイド・アンダルシア」
「えっ?」
ロイドは驚いた様子で振り返った。どこか懐かしいその声に胸を躍らせながら。
「ハイト姉さん?」
その声の主はローレンハイト・アンダルシア。ベルセリア王立魔法学院の3年生であり、史上最年少で赤組代表に上り詰めたベルセリア王立魔法学院きっての才媛である。
誰が呼んだかついた渾名は爆炎帝ローレンハイト。
「久しぶりねロイド。見ない間に随分大きくなったんじゃない?」
ローレンハイトはロイドを抱き寄せると頭を優しく撫でた。
「わぷっ……! ……ハイト姉さんこそ、ボクの記憶よりずっと大人になっててびっくりした」
記憶よりずっと成長している胸に埋まりながらロイドはつぶやく。ロイドの記憶ではローレンハイトは丁度今のロイドくらいの身長だった。
「ふふ、乙女は日々成長するものだからね」
ローレンハイトはひとしきりロイドを抱きしめると、満足したのか手を取って歩き出す。
「行きましょ。学院へ案内するわ」
ロイドは高鳴る胸の鼓動を必死に抑えながら、ローレンハイトに連れられ久しぶりに王都の土を踏んだのだった。
◆
城門から学園まで続く城下町はお祭り騒ぎの様相を呈していた。
人々は道に飛び出し、飲めや歌えやの大騒ぎ。
学園の行事にかこつけて酒を飲むのが王都に住む民の慣習になっていた。
ローレンハイトとロイドはそんな人々の間をすり抜けるように道を歩く。
そんな時だった。
「おい、爆炎帝が誰か連れてるぞ! 誰だあの男は……!?」
ローレンハイトに気が付いた誰かがそう声を上げる。
それを機に大勢の人々がざわざわとし始める。
「爆炎帝……?」
人々の視線がどうやら自分たちに集まっているということに気が付いたロイドはそうローレンハイトに尋ねる。
ローレンハイトはバツの悪そうな表情を浮かべた。
「私のことよ……なんだか仰々しい渾名つけられちゃってね……私はやめてって言ってるんだけど」
「ハイト姉さん、有名なんだね」
「私だけじゃないけどね。ほら、さっさと行きましょ」
ローレンハイトは強くロイドの手を掴むと歩くスピードを上げた。
何度かそういう場面に出くわしながら、しばらく歩いていると広場に出た。居住区を抜けたのだ。
街の喧騒もここまでは届かない。広場の真ん中に位置する場所で噴水が静かに水をまき上げている。
「ここまでくれば一安心か」
ローレンハイトはロイドの手を離すとそう独りごちた。
有名人の彼女にとっては街に出るだけでも一大事なのだった。
「この広場を抜ければ学院があるわ。ごめんね、何だか騒がしくって」
そういうとローレンハイトは歩き出す。その後ろをロイドはおっかなびっくりついていくのだった。
◆
「おおーロイド! 久しぶりだな!」
アンダルシア姉妹の長女チトセ・アンダルシアはロイドの背中をバンバンと叩く。
チトセは綺麗な金髪を肩口で切り揃えたボーイッシュな美少女で、黄組の代表という立場も併せて学院の女子から絶大な人気を誇っていた。密かに運営されているファンクラブはローレンハイトを抜き学院最大数を誇る。
その雷魔法の攻撃力は学院を飛び越え王国でも有数と言われていて、ついた二つ名は雷霆王子。
「痛い痛い! チトセ姉ちゃんやめてって!」
「ちょっと、ロイド君が痛がってるじゃありませんか、離してください! ……よしよし、もう大丈夫ですからね」
そういってロイドを抱きしめるのは四女オルトリンデ・アンダルシア。学院の2年生で白組の期待のホープである。
類まれなる治癒魔法の才能もさることながら、その慈愛に満ちた性格と聖母のような清純な見た目から、2年生にして最後の聖女の二つ名を与えられている。
「へへ……リンデ……お母さんみたい……」
ぼさぼさの癖っ毛を腰の下まで伸ばすままにしているのは末女ウィッカ・アンダルシアだ。
四女のオルトリンデとは双子である。黒組の寮を闇魔法で半壊させた前科持ちで、既にその破壊力は黒組の代表に勝るとも劣らないといわれている。
真冬の厳しい寒さの中、寮生を野宿させたその罪深さから災厄の魔女の二つ名で呼ばれている。
ここは学院のメインロビー。その片隅にある談話スペースにベルセリア王立魔法学院の顔役とも言える各組の有名人が集結していた。
その集団の名はアンダルシア五姉妹。
長女 4年生【雷霆王子】チトセ・アンダルシア 黄組代表
次女 3年生【爆炎帝】ローレンハイト・アンダルシア 赤組代表
三女 3年生【水君大公】アルメリア・アンダルシア 青組
四女 2年生【最後の聖女】オルトリンデ・アンダルシア 白組
末女 2年生【災厄の魔女】ウィッカ・アンダルシア 黒組
の5人は、今や王都で知らないものはいない超有名人である。そしてロイドの姉達であった。
「メリアはどうした?」
チトセはローレンハイトに尋ねる。
「あの子は入学式の挨拶があるからって大ホールに行ったわよ」
「メリアお姉様は大変ですね。本当はチトセお姉様が挨拶するはずだったのに押し付けられて」
「うるせえ。アタシはそういうの苦手なんだよ。エキシビジョンは受けたんだからそれで充分だろ」
「チトセとハイトの……エキシビジョン……楽しみ……」
「えっと、エキシビジョンって?」
ロイドは状況についていけず姉達にされるがままになっていた。今はオルトリンデに抱えられ、その大きな胸の中にすっぽり収まっている。
姉達の会話が分からず、話に全くついていけていない。
「入学式の後に私とチトセ姉でちょっとしたバトルをするのよ。新入生への歓迎って感じかしら」
「全くハイトも物好きだよなあ。新入生の前で恥をかく役をオーケーするなんてな?」
「あら、私は負ける気は一切無くってよ?」
チトセとローレンハイトは火花をバチバチと散らす。
「えっと……2人とも怪我しないでね……?」
ロイドが2人を心配していると、オルトリンデが時計を見て声をあげた。
「ロイド君、そろそろ教室に行ったほうがいいんじゃないかな? お姉さんが案内してあげるからね」
いつの間にか新入生集合の時間が差し迫っていた。
「おおいつの間に。ロイド、エキシビジョン楽しみにしてろよ?」
チトセはにかっと爽やかな笑顔を浮かべる。この笑顔に堕ちた学園女子は枚挙に暇がない。
「うん。お姉ちゃん達、またね」
ロイドは久しぶりに再会した姉達の変化に内心驚きつつ、オルトリンデに連れられ教室に向かった。
◆
ロビーから教室に向かうまでの道中、ロイドは他生徒の注目を一身に集めていた。
それも当然で白組のホープにして最後の聖女、皆のお母さん、パンドラの箱の最後に残ったもの、その他多数の異名をほしいままにしているオルトリンデに手を引かれているからだ。
(みんな、めちゃくちゃ見てくる……ボク、何かおかしいのかな……?)
ロイドは自分の服装をじろじろ確認するが、特に可笑しいところは見当たらない。
他の皆と同じ、ベルセリア王立魔法学院の制服姿だ。
「ロイド君、どうかしたの?」
オルトリンデはロイドの様子がおかしいことに気付き声をかける。
「なんだか、皆に見られている気がするんだ」
「う~ん、そうかなあ」
オルトリンデはきょろきょろと周りを見渡す。それまでロイドたちを見ていた周りの生徒はバッと目を逸らした。
「うーん、お姉ちゃんには分からないなあ。ロイド君が可愛いから皆見てたんだよ、きっと」
「可愛い……?」
「うん! 昔も可愛かったけど、今はもっと可愛いよ」
オルトリンデはロイドの頭を優しく撫でた。
「く、くすぐったいよリンデお姉ちゃん」
「ふふふ、ロイド君が可愛いのがいけないんだよ?」
オルトリンデは姉妹の中でも特にロイドを甘やかしていた。
昔一緒に暮らしていた時も、主にロイドの面倒を見ていたのはオルトリンデだった。
根っからのお母さんいやお姉さん気質のオルトリンデは、母親の再婚によって突然出来た弟が可愛くて仕方なかったのだ。
お別れの時一番泣いていたのも、再開出来ることを知った時一番喜んでいたのもオルトリンデだった。
久しぶりに再会できた喜びでオルトリンデは少々暴走気味である。
「お姉ちゃん……恥ずかしいよ……」
ロイドはもう12歳である。いくら大好きなお姉ちゃんとはいえ人前、それも見知らぬ生徒たちの前で頭を撫でられ続けるのはいささか気恥ずかしさが勝ってしまう年齢だった。
「ああ……ごめんねロイド君。私ったら嬉しくてつい……」
オルトリンデはなんとか自分を諫めるとロイドの手を引いて教室に歩き出した。
照れているロイド君の顔も可愛いな、と頭の中ではそれで一杯だったが。
◆
しばらく歩いていると教室に辿り着いた。
中まで着いて来ようとするオルトリンデをなんとか断りロイドは自分の席に座って一息つく。
考えるのは、姉達のことだ。
(みんな、昔と全然違ったな……)
また仲良くやっていけるかな、とロイドはそんなことを考えながら始業の合図を待った。
読んで頂きありがとうございます。
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見てくれてるんだ…というのが感じられてとても嬉しい気持ちになります。




