第2話 掲示板の出会い
……6月8日。
俺の通っている大学「日浦大学」に行くと、いつも通り学生の登校姿が見えた。学生たちは蒸した空気に愚痴をこぼしながら歩いている。
……俺だけか?おかしいのは……。そう思っていると、後ろから知っている声が聞こえてきた。
「おい!大山川」
「おお、相田」
相田龍太、俺の唯一の友人が声をかけてきた。チェックシャツにジーパン、眼鏡に黒髪といかにも"陰キャ"な俺の見た目と相田の見た目はほぼ一致している。そのせいで、一緒に歩いているとヒソヒソと何か言われているのを感じることも多い。
「おい、お前気づいてるか?何かおかしいだろ?」
……あれ、まさか!?こいつは気づいてるのか?
「……お前、気づいてたのか!?やっぱそうだよな!?今日は……」
「今日は6月8日でギリ夏じゃないのに、暑すぎる!よな!?」
「……え?ああ……」
「全く、これも温暖化ってヤツかねぇ」
期待していた答えでは無かった。
……この世界は一体どうなってしまったのか。あるいは、俺は一体どうしてしまったのか。俺の頭の中がだんだんと絶望で塗り固めらていくのを感じる。相田の話す声も遠くに聞こえ始めた。
○○○
結局、その日は1限から5限まで特に変わった様子も無く授業が終わった。変わったところをあげるとするならば、授業内容が既に頭の中に入っていたというところだろうか。何故なら、既に6月8日の授業は受けたはずだからだ。……俺の中では。
少し暗くなった帰り道をトボトボと歩いた。もう、受け入れるしか無いのだろうか、この奇妙な現象を。世界と俺、どちらがおかしいのかと聞いたら100人中100人が俺がおかしいと言うだろう。……だから、もう受け入れるしかないな。
そんなときだった。
「何だこの紙?」
「……宗教じゃね?」
大学の掲示板の前で、学生が2,3人で話しているのが見えた。頭の上の方から雑に画鋲で掲示された紙が見える。
☆☆☆☆☆
この世界はループしている
6月8日から8月8日をループしている
確実にループしている
この事態に気づいた人は白樺公園まで
シルバーバーチ 代表 内澤丸九
☆☆☆☆☆
「これは……!」
やはり、気づいている人はいたんだ!俺は少数派かもしれないが、頭がおかしくなった訳じゃなかったってことか……。というか、この"シルバーバーチ"って何だ?このループ現象に気づいている団体か?
「ねえ?」
後ろから突然声をかけられた。
振り返ると、艷やかな黒い長髪を生やした美少女がそこに立っていた。顔が幼い上に身長がとても低く、この学校の学生には見えない。
「少年、君は気づいている側の人間?」
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