レコーディング・ダイエット
これは私がダイエットに挑戦しようとした時の話です。
私は今まで何度もダイエットに挑戦しましたが、いつも途中で挫折していました。
そのことをダイエットに詳しい友人に相談してみると「だったら良いサイトがあるよ」と言って、見た事のないサイトを紹介してくれました。
紹介されたのはSNS系のサイトで、登録した人たちが自分の食べたモノを写真に撮って、メッセージと一緒に投稿していました。
いわゆるレコーディング・ダイエットと呼ばれるものを応援しているサイトです。
友人からの勧めだったし、料金もかからないようなので、私は半信半疑ながらもそのサイトで食事の写真を投稿し始めました。
結果はすぐにあらわれました。
ただ写真を撮るだけなのに、人に見られることを意識して、食事の量や内容を自然と考えるようになりました。
投稿した写真に書き込まれた他の人からのメッセージは好意的なものばかりで、それも励みになりました。
結果が体重計の数字だけでなく見た目にも現れ始めるころには、すっかりこのサイトにハマっていました。
最初は気が向いた時にだけ投稿していたものが、毎食必ず投稿するようになっていました。
そんなある日、サイトで明らかに食べ物でない写真を投稿している人たちがいることに気が付きました。
髪の毛、切った爪、ティッシュペーパー……。
しかもただ写真に撮ってるのではなく、まるで今からそれを食べるみたいにお皿の上にのせて撮っていました。
最初は誰かのイタズラかなと思いましたが、こういったおかしな写真を投稿しているのは一人だけではありませんでした。
なぜか長く続けている人がある日をさかいに、まるで人が変わってしまったようにおかしな写真を投稿するようになっているんです。
恐る恐る投稿されている写真のメッセージを読むと
『レコーディングダイエット1年達成!
みるみる痩せていくので、すっかりハマってしまいました。
記録しているだけなのに自然と太らない食べ物を選ぶようになるなんて最高!』と書かれていました。
気味が悪い。
そう感じた私はこの事を友人に話しました。
しかし友人は私の話に、「変な写真なんて見た事ない」と言って、いまいちピンと来ていないようでした。
私がサイトからその写真を見せると、友人は私の方をじっと見て、
「それ私の写真だよ」
と言いました。
それ以来、私はそのサイトに投稿するのをやめました。
続けていれば私も同じような写真を投稿するようになっていたのでしょうか。
友人とは今でも仲良くしています。