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配属先

 ここでもう少し、このコーストガードの説明をしておこう。


 コーストガードの現有戦力は先に話した通り全てが軍からのおさがりで、3つの機動艦隊と3つの巡回戦隊からなり、コーストガード中での花形部署は機動艦隊の旗艦だ。

 そのうちでも最も栄誉あるのが第一機動艦隊で、ここを含む3つの機動艦隊が現在の処海賊取り締まりにおいて最も成果を上げている。

 


 ちなみに機動艦隊の構成としては以下の通りである

 第一機動艦隊のみ、首都宙域警備隊全体の旗艦を務める航宙巡洋艦が旗艦を務めるので以下のようになる。


 第一機動艦隊

  旗艦;航宙巡洋艦 

  随行艦;航宙イージス艦 1隻

  航宙フリゲート艦 2隻


 第二機動艦隊及び第三機動艦隊

  旗艦;航宙イージス艦  

  随行艦;航宙フリゲート艦 2隻


 からなり、主な仕事は海賊の討伐である。


 ナオの配属先を含む巡回戦隊は航宙フリゲート艦2隻からなる戦隊で、主な仕事が宙域内のパトロールになる。 

 その際に発見された不審船などの臨検を行う部署にナオが配属された。


 ナオの乗艦する航宙フリゲート艦『アッケシ』は、先にも話が出たが、いわゆる要らない子を集めた船だ。

 その船には1つの臨検小隊が所属する内火艇を搭載している。

 

 他の第一及び第二巡回戦隊の構成も同じではある。

 尤も、人員という面では、数字が少ない方から評価が下がる。

 お察しの通り、第三巡回艦隊のしかも旗艦でない船は、コーストガードと云う組織において掃きだめ部署だ。


 ナオの配属先はそのような大人の理由により一番組織として影響のない部署に決まった。


 当のナオは、卒業式の翌日に同期とは一日遅れて、首都にある宇宙軍本部のとある会議室に呼ばれた。


 さすがに宇宙軍としても外聞が良くない措置のための呼び出しだった。

 ここなら部外者には漏れないためナオ一人を呼び出し、本部の人事担当者から辞令を渡たされた。


 「辞令。

 ナオ・ブルース。

 本日付けを持って、首都宙域警備隊に出向を命じる」


 「謹んでお受けします」

 は~~、やはりあの成績では前線は無理か。

 しかしそうなると、俺の思い描いた夢はどうなる。


 ナオは辞令を貰いながら、相当にがっかりしている。

 その様子は、あまりにもあからさまなので、心にやましい気持ち一杯の人事担当者から慰められた。


 「気を落とすことないよ、ナオ君。

 出向で不本意とはいえ、出向者の身分は一階級上がるのだ。

 あっちでは少尉として同期の誰よりも早く実戦に出ることになる。

 あっちで十分に経験を積んだらすぐにでも呼び戻すから。

 今の軍には君のような優秀な士官をいつまでも遊ばせておく余裕はないよ」

 と言われながら肩を叩かれた。


 しかし当のナオは、彼の言葉に実戦と云うのを見つけ、少なからずこれからの職場に期待を持った。


 「ありがとうございます。

 ご心配をおかけしましたが、もう大丈夫です。

 早速これからあっちに出頭します」

 「ああ、頑張ってくれたまえ」


 そう言うとナオは宇宙軍本部を出た。

 同じ首都に本部を構える首都宙域警備隊の本部は、宇宙軍本部建屋から500mも離れていない。


 ここは、首都星ダイヤモンドの治安を守る首都警察隊本部との合同庁舎にある。

 ちなみにここダイヤモンド王国での国民からの人気やステータスの順番ではやはり一番はキャリア官僚で、次に宇宙軍のエリート士官、その次がなんとここにある首都警察で、次に各星系の主星にある警察本部、そして最後が、やはりここにある首都宙域警備隊となる。


 一般国民からの人気という面では軍のエリート以下はほぼ同列なのだが、いかんせん軍の掃きだめ部署という不名誉な職場のためにステータス的に最下位になってしまう。


 中央官庁街のきれいに整備された道をナオは今渡された書類を持って首都宙域警備隊本部に向かった。


 歩きながらもナオの心はわだかまりを抱えている。

 いくら現場に同期の誰よりも早く出られるとは聞いたが、実際にまだどこに配属されるか分かっていない。

 下手をするとこの本部での書類仕事という現場もあり得る。

 最前線からは一番遠い現場だ。

 それだけは絶対に避けたいが、学校を卒業したばかりのペーペーにそんな我儘が許されないことくらいはナオでもわかる。

 いまだに神を恨んではいるが、ここは神に祈りたい気持ちだった。


 コーストガードの本部受付で、きれいな受付嬢に訪問の趣旨を伝え、指示を待つ。


 受付嬢は、電話で連絡を取った後に俺に向かって、丁寧に行き先を告げてくれた。


 「ブルース少尉、お待ちしておりました。

 11階のC会議室で担当の者がお待ちしておりますので、そちらに向かってください。

 そこのゲートから入り、奥にエレベーターがありますので、それをご利用ください。

 会議室はエレベーターを降りましたらお向かいになります」


 「丁寧にありがとう、ミス……」

 「サーシャと申します、ブルース少尉」


 「サーシャさん、ありがとう」


 俺は受付のサーシャさんに言われた通りエレベータで11階にあるC会議室に向かった。

 会議室の扉をノックすると中から返事があったので、そのまま中に入った。

 「本日付けでこちらに配属になります、ナオ・ブルースと言います。

 階級は准尉です」

 あ、そういえば先ほども受付のサーシャさんが俺のことを少尉と呼んでいたが、まだ辞令を貰っていないし、挨拶はこれで良いんだよな。

 どこに配属されるのかな。


 この時には既にナオの配属先は事務方の苦労と、上層部の事なかれ主義のため散々苦労はしたが決まっていたので、対応している担当者も、これでこの件から離れられると安堵の表情を浮かべていた。


 「ナオ・ブルース宇宙軍准尉の首都宙域警備隊への出向を認め、首都宙域警備隊内に置いて少尉への任官を命じる。

 また、本日ただいまをもって、ナオ・ブルース首都宙域警備隊少尉は、第三巡回戦隊所属、航宙フリゲート艦『アッケシ』への乗艦を命じ、『アッケシ』内の第2臨検小隊の小隊長を命じる」

 担当者はそう言うと俺に辞令を渡してきた。

 それを謹んで受け取り、その場で敬礼をした。


 すると会議室の扉が開いて、女性事務員が台車で大きめのカバンを持ってきた。


 「少尉。

 これから備品を渡す。

 制服と、携帯武器、それに身分証になる。

 確認後受け取りのサインをしておいてくれ」


 先ほど女性事務員が持ってきたのは俺の装備一式のようだ。

 当然だが、宇宙軍と首都宙域警備隊とでは制服が異なる。

 今の俺は学校で支給されている宇宙軍准尉の第2種礼装を着ている。

 しかし、これからは首都宙域警備隊でお世話になるので、辞令とともに既に制服など一式が用意されていた。

 俺はそれを確認して、事務員の持っていた書類にサインをして手続きを終えた。

 給与等のこまごました手続きは既に勝手に事務方の方で済まされているようで、装備品以外の面倒はないとの説明まで丁寧に受けたのだ。


 「制服を受け取ったのなら、8階にある更衣室で着替え、2時間後に出発するルチラリアに向けての定期便に乗り込んでくれ。

 惑星ルチラリアに第三巡回戦隊の母港がある。

 あちらについたら事務所に出頭してくれ。

 あとは向こうの指示に従えばよい。

 こちらからは以上だ。

 何か質問はあるかね」


 「いえ、ありません」


 「では、行き給え。

 これからの貴殿の活躍を祈っている。

 以上だ」


 なんだかよく分からないがここでの俺の仕事は終わったらしい。

 制服を着替えて、定期便に乗り込めばいいだけだ。

 俺は指示された通りにエレベーターで8階に降りて、更衣室で制服を変えた。

 サイズがぴったりなのは驚いたが、そういえば体のサイズもデータが管理されているので、俺の出向が決まった時点で用意されたのだろう。


 何より配属先が事務部門では無いので一安心だ。

 しかしいきなり小隊長とは恐れ入る。

 臨検小隊って、あの臨検を専門にする小隊だよな。

 となると、もしかして海賊相手に……ムフフ、これは思ったより早く希望が叶うかも。


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