無事帰還
俺達は、謎の無線を無かったこととして。粛々と第三スポットに向け、艦を進めていく。
まあ、慣れた作業だし、何ら問題なく無事に第三スポットに艦を置いた。
「司令、着陸しましたが……」
かなり遠慮がちにメーリカ姉さんから着陸の報告を受ける。
無かったこととしてここまで来たけど、流石に本当に無かったことにならないかな……あの手の人達って本当にしぶといというか、しつこいんだよな。
貴族なんだから気品というかエレガントな身の振り方って……無いんだよ、我が国の貴族って。
「仕方がないので、ハッチを開けて外交官たちを王宮に案内するか。
悪いけど艦長も今日は一緒に来てくれ。
流石に一緒に捕まることは無いだろうから、もしもの時……多分これ決定事項だと思うけど、帝国からのお客様方をよろしく頼むわ」
「はい、王女殿下にも……」
そう言いながら、外務官と法務官の人を連れて艦の外に出ると……面倒な人たちはいないんだよ。
いないことに驚いたけど、そのかわり満面の笑顔を浮かべている王女殿下が俺達を出迎えてくれた。
そうか、王女殿下がいれば流石にあの人達も無理できなかったのか。
「司令!」
メーリカ姉さんが俺に注意を促してきた。
そうだった。
外交問題をまだ抱えたままだ。
「殿下、ただ今帰還しました」
「おつかれさまです」
「で、報告の前にご紹介したい人たちをお連れしましたので、簡単にこの場でご紹介してもよろしいでしょうか」
「ええ、後ろに控えていらっしゃる帝国の方々ですね」
俺は、簡単に今回お連れした人たちの立場と、目的を殿下に紹介して王宮での対応をお願いする。
もともと殿下は俺達を王宮に連れて行って報告を聞くつもりで準備されていたので、ここまで持ってきたあの黒塗の高級車に帝国の官吏をお乗せして王宮まで向かった。
ただ、車に向かう途中で、このスポットに繋がるターミナルビルの外ではちょっとした騒ぎが、しかもその騒ぎは現在進行系でどんどん混乱が広がっているようだ。
遠くから軍警察の一団が近づいてきてもいる。
殿下がその様子について、帝国からのお客様に言い訳を始めた。
「すみません。
何やら騒がしく」
「何があったのですか?」
俺が客に代わり殿下に聞いてみても、大した答えは出なかった。
「いえ、私は知りませんが、私がここに来る時に、ゲート付近で軍人さんたちが揉めていたようなのですよ。
ここに入れろとかなんとか」
あ、ひょっとしたら俺のことか?
後で聞かされたのだが、やっぱり俺を拘束するつもりで、先のソレガシ大佐が、自分の部下に武装させてここに来たようだ。
アホなのか?
アホだろう。
VIPが利用するターミナルに武装集団が許可なく入れるはず無いだろう。
ここは陛下も利用するターミナルなので、ゲートには軍警察の他に皇室の関係者も詰めているのだ。
いくら軍港だとはいえ、ここの長官か、もしくは宇宙軍のトップでもない限り武装集団を入れる許可など出せるはずがない。
確か、軍政局だとか言っていたけど、そもそも軍政局が扱う範囲は占領地など一時的に治安を守るための政治をする部署なので、ここ首都に事務所があっても首都に何ら特別な権力などありようがないのだ。
何考えているかは知らないが、あの人たちは本当にむちゃくちゃしたがるな。
俺達は、殿下の用意した車に乗ってそのまま王宮に向かった。
メーリカ姉さんとは、ここで別れた。
メーリカ姉さんは俺が車に乗るまで一緒にいたけど、ここで俺達を見送り『シュンミン』に戻っていった。
まあ、艦長だし、本来は着陸直後に暇などなかったのだが、俺が拘束される場合に備えてここまで一緒に来てもらっていたのだ。
車は問題なく王宮に入り、俺達は玄関からそのまま殿下の執務室に入る。
そこで、帝国からの官吏は、先の挨拶で説明した内容をより詳しく説明していく。
「私達は、コクーンに所属する事務官になります」
挨拶のはじめに宣言されたのは、国の正式な代表でないことを明確に宣言したわけだ。
そこから説明していた。
彼らが言うには、今回の作戦で拘束した者たちは、作戦前の取り決めによりコクーン強奪に関与した者たちの身柄は全員帝国が引き受けるとあり、簡単な調査で判明したためにフェノール王国の国王と宰相は、実行犯ではないが、主犯であることにかわりがないので、計画当初の取り決めにより帝国が拘束することになることを殿下に説明していく。
しかし、彼らというか、コクーンの司令の周りの側近たちが、係争国の国王の身柄を預かることに、懸念を感じて、今回ダイヤモンド王国に事情説明と状況打開の外交準備のために派遣してきたという。
「ええ、うちの司令も、そちらもそうですが、あまりに状況を楽観視しているようでして、側近一同がとりあえず事情説明のために私どもを派遣したのです」
「ええ、作戦については、私も聞かされておりましたので、ある程度状況は理解しておりますが、確かに現状で国王がいないというのも……」
「ですので、身柄引き渡しなどについて帝国とダイヤモンド王国とで取り決めが早々に必要になると事前説明に参りました。
隣りにいるのが我が国の、コクーンに乗艦する法務官です。
彼が帝国の法律について説明しますので、ご検討をお願いします」
本来、今回のようにフェノール王国の国王が必要なのは帝国よりもダイヤモンド王国の側で、今回のように身柄についての交渉事はうちから帝国側に持ちかけるのが道理である。
しかし、とにかく今回はあまりにあまりだったこともあり、周りが心配して今回のようになった。
そう、今回のことを鑑みると常識人は帝国、コクーンの方がうちのクルーよりも多くいたことになる。
俺は外交など知らないから、どこまでことが大きくなるか知らないが、それでも敵の王様がいないのはどうなるか少し心配になるけど、少なくとも敵からの大きな作戦はできないだろうから時間は稼げる程度の認識だった。




