『また拘束』ですか……
そんなことを考えながら俺は自分の仕事をしていく。
管制圏に入ったこともあるので、俺は無線で直接本部に繋いでもらい、簡単に今回の件と帰還の報告を入れておく。
すると、『了解しました』との返事の後から別人の声で『至急王都に向かってください』と鬼気迫る声が聞こえてきた。
その後『本部長はすでに王都に降りますので』ともあった。
今回の件が王都に伝わっていたようだ。
艦橋から艦長のメーリカ姉さんがわざわざこちらにやってきて話しかけてきた。
「司令……」
「何も言うな。
いずれバレるものだ。
それが早いか遅いかだけの話だ」
「また拘束ですかね」
何故か俺は何度も自国内で拘束されている。
決してやましいことはしていないのだが、何故かそれも何度も拘束されるのだ。
そう、何度もだ。
正直納得はできないが、所詮この国では平民の扱いなんかそんなものなのだろう。
「多分そうなりそうだな。
あの様子からなら……」
俺は先ほどもらった無線の話をメーリカ姉さんにふっていく。
「かなり焦っていたようですしね。
これは、急いだほうが……」
「ああ、そのとおりかな。
牛歩戦術は終わりだ。
久しぶりにかっ飛ばすか」
「了解しました司令」
今までかかっていた時間が嘘のように、あっという間にファーレン宇宙港の管制圏内に入っていった。
当然、無線で管制官と進入の無線を入れるが、それと同時に別回線から緊急無線が入る。
が、普通そこまでやるかな〜。
『おい、聞こえているのなら、すぐに司令を出せ!』
「司令、緊急で無線が入っていますが……正直邪魔なんですので司令が勝手に出てもらえませんか」
通信を担当している通信士は進入に向け管制官と通常業務通信を行っているので、副通信士がこの無線を最初に扱ったが、直後に固まった。
それを横で見ていたカスミが彼女を助けて、俺に言ってきた。
ここまで来ると哨戒士のカスミは暇になる。
管制圏の哨戒業務はその星の管轄になるので、一応哨戒はしているけどそこまで忙しい訳では無いし、こういうイレギュラーなことには経験の浅い副通信士には正直無理だった。
見るに見かねて、本来越権行為になるが、もともとそんなことに緩い昔からの俺の部下たちは、こういうときには融通がきくから助かる。
が、『邪魔だから俺に』ってなんだよ。
それならカスミが適当にあしらえばいいだろうに。
「司令でないと二度手間になりますよ」ってカスミも俺の考えが読めているらしい。
仕方がないので、俺はカスミに、俺のところまで通信を繋いでもらった。
すると、軍のお偉いさんという人がどなっていた。
「依頼により変わりました、司令のナオです」
『貴様が、極悪人のナオ司令か。
着陸たらその場で銃殺にしてやるから逃げるなよ』
「え?」
『あ、いや、銃殺は忘れてくれ。
流石にそこまではすぐにはできそうにないが……身柄だけはこちらで拘束させてもらうからな』
「いや、それもできませんが……それよりも、失礼ですがどなたですか。
いかなる権限を持ってそのようなご無理を……」
『貴様、わしを知らんのか。
わしは……』
『中将閣下、無線では雄姿が見えませんのでいきなりでは誰が聞いてもご判断できません。
ですので』
『おい!なぜ映像通信では無いのだ』
『管制からの通信ですし、しかも緊急回線ですので、それよりも戦隊司令』
なんだか先方はかなりドタバタとしていそうだな。
やはり行きたくないな。
『戦隊司令。
私は軍政本部企画戦略室のソレガシ大佐だ。
軍政本部長のダーソク中将閣下の要請により緊急で通信させてもらった。
着陸後に速やかに面会するので、速やかに我々に同行してもらう』
「ソレガシ大佐殿。
今の要請につきましては、現状無理です」
『貴様〜。宇宙軍中将であるわしの命令に背くのか〜!
わしは王国の伯爵でもあるんだそ、平民が貴族に、しかも上級貴族である伯爵のわしに逆らうとは不敬で銃殺にしても……』
どうもこの人は俺を殺したいようだけど、大丈夫なのかな。
「メーリカ艦長。
この先かなり揉めそうなので、別回線を使って王女殿下もしくは王宮情報部か監査に連絡して帝国の外交官だけでも安全に王宮に連れていけるよう手配願えないかな」
「その件につきましてはすでに事前に王女殿下の方に連絡入れてあり、殿下の方からも第三スポットにて殿下ご自身が出迎えると返事をもらっております」
「なら大丈夫……かな。
最悪、俺は拘束されても帝国と外交問題にはならないか」
「司令、また拘束されることしたのですか」
俺とメーリカ姉さんとの会話に暇なカスミが声をかけてきたけど、『また』ってなんだよ。
俺は一度も拘束されるような違法行為はしていないぞ。
「本当に司令も懲りないですよね」
今度はカスミの嫌味にメーリカ姉さんまでもが同意してくる
『✘●……!!▲○ガヤガヤ』
「あ! 司令、あっち大丈夫ですか。
なんだかかなり怒っていそうですが」
「あ、俺の耳がストライキでも起こしていたようだ。
だが、流石に無視はまずいか」
「ですよね……」
「失礼しました。
ソレガシ大佐、聞こえておりますか」
『ナオ司令。
貴殿は我々を愚弄するのか』
「いえ、あまりに突然の申し出にこちらも規則や法律を確認しておりました。
ですが、事は外交も絡みますので、すぐにそちらへの出頭は無理そうです。
広域刑事警察本部を通しましてご依頼いただくしか私の方からはご返答できませんが、それでよろしいでしょうか」
『そんな訳あるか〜!』
『貴様、どこに停めるのだ、そこまで行ってやるから覚悟しておけよ』
「お調べいただけばすぐに分かるかとは思いますが、第3スポットに駐機します。
ですが、本当にいらっしゃいますか。
そこには出迎えも来ておりますが」
俺は面倒にならないよう一応注意を呼びかけるが、どうも無視されたようで、緊急無線が急に『ブツリ』と向こうから切られた。
大丈夫かな、あの人達。
どこの人だったか……軍政本部とか言っていたけど王国内で軍政を引いている場所ってあったかな。
まあ、皇太子殿下が今度攻め込めば仕事もできるだろうけど、フェノール王国って、この後も継戦していくのかな。
王様いないけど。




