国王確保(拘束)
大広間まで来ると、明らかに国の要職に就く者と思われる者たちが伸びており、その周りを機動隊員が囲んでいた。
「司令……」
機動隊員の一人が俺に気が付き敬礼をしようとしたのを俺は止めた。
「そのまま仕事を続けてくれ。それよりも……」
「はい、拘束予定の者と思われますが私どもでは判断ができずに、後続の捜査員を待っておりました」
「わからなければ、そのまま拘束しておけ。いちいち吟味などしてる余裕は我々にはない」
「わかりました。ではこの者たちを拘束して『ダミン』に」
「いや、王宮の外に出すだけで大丈夫だとは思う。王宮前には俺たちの車まで出しているしな。そいつらに運ばせればいいだろう」
「わかりました。作業にかかります」
「あ、その前に隊長はどうした?」
「アイス隊長でしたら、我々に彼らを任せ、どんどん奥に」
「はい、まだ全部……」
「おい、それは黙っておけ」
機動隊員は俺の質問に素直に答えてくれたが、『まだ全部』と言った言葉をマリアは見逃してはいなかった。
「あ~、今回の作戦にかこつけて、ラフレシアを使い切ろうとしてますね」
「ほら見ろ。一番やばい人に見破られたぞ」
おいおい、いくら俺たちが作戦通りに、いや作戦以上に成果を出しているからと言って、ここはまだ現場だ。
ちょっと気を抜きすぎではないでしょうかね。
俺が気が抜けた会話をしていると奥の方から『ぎゃ~!』という悲鳴が……そういえばここに来る時にも聞こえていたが、あれって。
「はい、司令。
アイス隊長かと……」
俺の疑問にすぐに申し訳なさそうに答えてくれたのが、先ほど素直に俺に対応してくれた機動隊員の一人だ。
「そういうことか。
確かに武器の使用制限はかかってはいないから、法令に違反しているわけでもないし……だが、過剰な攻撃はどうかな。
まあ、俺たちには過剰防衛で取り締まるようなことなど聞いたことはないけど、まあ、それに使っているのはスタングレネードだろう。
一応、非殺傷兵器だしな、これって今の段階ではセーフ判定しかないけど、たぶんすぐに規制は入るかな」
「はい、是非規制してください」
俺の所感にすぐにそれも飛びつくように機動隊員たちは反応してきた。
あれほど成果を上げている兵器を自分らで封印したがるなんて……そりゃそうか。うん、俺にもわかるよ、君らの気持ちが。
どちらにしても、この作戦終了時にすぐに機動隊員たち全員に精神洗浄を命じておこう。
「司令!」
ケイトが奥に行きたいようで、俺に指示を促してきた。
「ああ、俺らは先に進もう」
俺らが奥に進もうとしていると、俺らの後からも兵士が入ってきて、先の機動隊員の指示により、ここで伸びている高官たちを外に運び出した。
兵士はそれからもどんどん入ってきて、しまいには担架まで運び込んできた兵士の一団まで現れ、その後は作業効率がどんどん上がっていく。
「司令、置いていかれますよ」
その様子に感心していたら、マリアに置いていかれると注意される。
俺は遅れまいと、急ぎ奥の部屋に続く廊下に向かう。
廊下を奥に進んでいくと、奥の方から大声でアイス隊長の声が直接聞こえてきた。
「とったぞ~!」
その後、機動隊員の一人から無線で王たちの確保に成功した旨が伝えられる。
先の『とったぞ~』って、武将の首でも取ったような気にでもなったのかな。
まあ、アイス隊長以下機動隊員たちの仕事は王の確保である訳なので、速やかに後方に下げよう。
「ケイト、無線で機動隊員たちを下げさせてくれ。
後は捜査員たちの仕事だ」
「はい、すぐに」
ケイトも機動隊員たちの様子に、何か思うところでもあったのだろう。
俺の指示に素直に従い、連絡を取り合っている。
「隊長、捜査員たちも無事に政府庁舎の中に入りました」
「よし、今から3時間をめどに引き上げることを徹底させてくれ」
俺が廊下で指示を出しながら進んでいくと、アイス隊長たちが数人の気を失っている人を担いで運んでいるのと出くわした。
「司令、王の確保ができました。
確認しますか」
アイス隊長は部下が担いでいる男性を俺の方に向けてきた。
「いや、確認は良い。
それよりも王たちを速やかに後方に」
「了解しました」
俺との会話を終えたアイス隊長は部下たちを率いて後方に下がっていく。
「司令、この後は……」
「ケイトか。
念のためだ、確認に行こうか」
俺は、アイス隊長たちの最後の作戦の現場に急ぐ。
どうも嫌な予感がぬぐえない。
奥に進むと王たちのプライベート空間に使っているのか、居間があり、先の作戦のでたらめさがそこかしこに見られた。
「悪い、ケイト、それにマリア。
女性兵士だけで中の確認と、措置を頼む。
俺は他の男性たちと外で、この部屋を封鎖しておくから」
俺の嫌な予感は見事に当たり、そこには多分王妃と思われる女性とその娘の王女だろうか、お年頃の女性の他に王妃たちの付き人になるメイドや、秘書など女性たちがそのままの状態で放置されていた。
さすがに着ている服がドレスのようなものだったこともあり、あまり外観上には目立つことはないが、床にありありとその証は残っているのだ。
ケイト達に床掃除までは命じないけど、メイドたちは見る人が見ればすぐにわかるレベルだった。
なので、俺はとりあえずここは女性部屋として封鎖した。
俺の後からの兵士たちが、捜査員を連れてやってきたが、状況を説明して今でも部屋の中にいるケイトたちを待っていた。
それからすぐにケイトとマリアは部下たちを連れて出てきたことで、この部屋の捜査を終えた。
部屋の扉にはメモ書きで、『王女殿下の要請により閉鎖中』と書いておいた。
「司令……」
「いいんだよ。王女殿下がしなくとも、あの状態ならば少なくとも男性には会いたくはないだろうし、それくらいは許されるだろう。俺からの親切だ」
「なら、私も」
マリアがそう言うと、そのメモ書きの下に『ダイヤモンド王国 広域刑事警察機構軍
協力』と追加して書き足していた。
「でへへへ、一応責任の所在をはっきりとしませんとね」
「マリアの口から責任という言葉が出るのを聞くことになるとは驚いたが、少なくとも、今回の作戦の成果の一つかな」
「なんです、司令。それって酷くないですかね」
「マリアの成長の証だ。
成果だろう」
俺の返事にもさらに嚙みついてきたけど、捜査員もこの場にいることだし、すぐに次の現場に移動する。




