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サーダーさんの秘密兵器




 俺達はそのまま進み、フェノール王国からぶんどった小惑星に作ってある基地のそばを通過していくが、一度俺もその基地によるように命令された。

 なんでも、基地を預かるマキ姉ちゃんが呼んでいるとか。

 こちらも秘密兵器の用意ができたとかで、あのマッドな研究者のおまけまで付いているらしい。


 俺は言われるままに、『シュンミン』をコクーンから出して氷の基地に向かった。

 基地に到着するとすぐにサーダーさんが俺たちを待っており、すぐに彼のおもちゃ……誤りでも無くもないが、一応新兵器となっているものを搭載する準備をさせた。


 どうも、その新兵器というのがやたらと大きく、完全にマリアのノリなのだが、今回ばかりはマリアはこれについては関与していない……らしい。


 俺がどういう物かと聞いても一言「しらない」だけだった。


 搬入している秘密兵器の見た目は……うん、いつもの小型の宇宙艇だが、あれって……「はい、これもポピュラーの『ブソウ』を改良したようですね」と俺と一緒に搬入を見学していたカスミが教えてくれた。


 搬入作業の監督ではなく、ただの見学者だ。

 そんな俺たちを一人の事務官が迎えに来た。

 尤も迎えに来たのは俺だけのようだが、基地指令室で待つマキ本部長がお呼びだとか。


 俺はその人について指令室に向かった。

 ここも最近ほとんど寄ることは無かったが、しばらく見ないうちに完全に整備が済んでおり、このまま十分にこの戦乱を耐え抜ける様にまで準備ができていそうだ。

 流石マキ姉ちゃんだけのことはある。


 俺は案内されるがままに基地指令室に入り、本部長のマキ姉ちゃんに挨拶しようかと思ったのだが、本当にマキ姉ちゃんは忙しそうだ。

 ひっきりなしにかかってくる電話対応に追われている。


 やっと少し片付いたようで、俺に向かって話しかけてきた。


「ナオ君!

 あなたたちはいったい……

 何をどうすればここまで騒動を起こせるのよ」


 いきなりのお小言だ。

 とりあえずマキ姉ちゃんをおちつかせて話を聞くと、王宮あたりから始まった騒動が宇宙軍や、その周辺にまで広がっているらしく、最前線であるこの基地まであわただしくなっていた。


 そこまで基地全体があわただしいのなら、なんでサーダーさんは平常運転中だったのかなとは思ったが、無駄だとすぐに頭を切り替えた。


「どうしたの?」


「どうしたも何もないわよ。

 やっと情報が入ったからいいようなものの、すぐに伝言を頼まれたわ」


「伝言?」


「あなたと一緒にいるの?

 グラファイト帝国の王族が」


「ああ。一緒に来たコクーンの司令だけど」


「その人宛てと、ついでにあなた宛てね」


 俺は自分宛ての伝言を受け取り中を確認すると、グラファイト帝国の別動隊であるコクーンはアミン公国に入り、すぐにフェノール王国に対して詰問の連絡を取っているので、計画通り進めてくれとある。


「これは何のこと。

 また戦争?」


「戦争って、今戦争中でしょ」


「それは……そうだけど、皇太子殿下率いる部隊に動きが無いと少し前に聞いたばかりよ」


「そうなのか、本当にあの王子には……だけど今回ばかりは助けられたかな」


「どういうことなの」


 俺は聞かれたので話せる範囲で答えていた。


「うん、帝国から要請があり、あのコクーンを盗んだ海賊……『菱山一家』であることは判明していたので、これから『菱山一家」に協力したというか、海賊と共謀した連中の身柄を抑えに行くんだ。

 この伝言は、計画通りに進めていいよって」


「共謀したって、海賊ではないのよね。

 貴族もいるの?」


「ああ、今回ばかりはかなりの大物もいるので、わざわざ陛下から令状ももらってあるから……多分大丈夫じゃないかな」


「それにしては、国全体が騒がしくなっているけど、大国が絡むとなると仕方がないのかな。

 これからすぐに行くのよね。

 気を付けてね」


「ああ、気を付けて行ってくるよ」


 俺はそう言って、マキ姉ちゃんと別れた。

 俺との話が終わるか終わらないうちにまた、マキ姉ちゃんに電話がかかってきているので、俺はさっさと退散してコクーンに戻っていく。


 しかし、これから始める作戦は、簡単に言ってしまえばマキ姉ちゃんに先に話した通りだが、まさかフェノール王国の首都にある王宮に殴り込みに行くとは思わないだろうな。

 後で、知ったらまた怒られそうだけど、こればかりは仕方が無いか。

 作戦の詳細を話すわけにもいかないしな。

 もっとも、この段階で作戦がここで漏らされても、たとえこの場にスパイが潜んでいても、どうにもならないだろうとは思うが、そこは俺もいっぱしの軍人だ。

 守秘義務くらいは心得ている。


 現在コクーンがいるポイントは、この基地からはかなり離れてはいる。

 この基地はフェノール王国との最前線にあるので、当然敵側もマークしている筈で、監視はついているから、ここを監視していては絶対に見落としがちな離れた場所からの越境をすることにしてある。


 そこも、以前捜査室長が気にしていた海賊が潜んで居そうな怪しげなポイントのそばになるが、だからこそフェノール王国には見つからないとにらんでの航路設定だ。


 氷の基地を出てから俺は急ぎそこに向かう。


 なぜか、氷の基地で秘密兵器を搬入した時に一緒にサーダーさんまでもがついてきた。

 これから本当に危ない橋を渡るというのに、大丈夫なのかな。

 でも、サーダーさんは秘密兵器の初実戦には私が絶対に必要だと言ってきかなかったので連れてきたけど、それにしても今回はやけに力がこもっていたな。


 マリアたちは俺と一緒にいた関係でサーダーさんと混ざることは無かったので、俺はある意味安心はしてはいるが、それでもあの力の入れようには少し気にはなる。


 搬入した秘密兵器は改良した汎用型の小型宇宙艇なので、それほど危険性は感じてなかったが、サーダーさんが言うには、あれは秘密兵器を効率的に運用するためだけのもので、大したことはないらしい。


 ならその秘密兵器ってなんだよ。

 まだ秘密なんだって……ありえないでしょ。

 作戦は始まっているのに。


 








 



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― 新着の感想 ―
ほんとにありえないなw 司令に秘密ってもう独断専行の疑いが濃厚なんだがw
通信すら碌に届かない暗黒宙域の基地の整備をしていれば、マキ本部長の驚きも致し方ないですね! 作戦自体は通常業務の延長でも、内容は極秘にせざるを得ないものばかりですしw サーダーさんはマリアの同類なので…
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