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無能な中隊長とたたき上げの小隊長

 

「監察官……」


 この時になって、件の大尉は事の重大性に気が付いた。


 ここ暗黒宙域においては本国との連絡が取れない。

 そこで、自由に振舞っても、それを贖う(あがなう)くらいの功績を出せば問題ない位に考えていたようだ。


 本国から司法関係者がこなければ軍権を持つ俺に怖いものは無いとまで考えていたようだが、肝心の部下たちが付いてこない。


 彼は上位者の命令は絶対だということしか頭に無かったようだ。

 自分が上位者である戦隊司令に逆らっていたのに。

 お粗末な話だが。

 でも、彼に付いた小隊長が一人いたことも問題だ。


 後に、捜査の末判明したことだが、前の第二艦隊反逆未遂事件と艦隊内では言われている事件のせいで、第二艦隊の持つ権限は大幅に縮小されていた。


 権限だけでなく、人事面でも相当数の士官たちが予備役に回されるなど、かなり大幅な人事異動があった際に、有力貴族に繋がりの有った件の大尉が、中尉から無理やり昇進して戦隊所属の陸戦隊中隊長に出世したとのことだ。


 彼は、それ以前まで宇宙軍に所属していたが、基地などの警備に当たる地上部隊の小隊長を務めていた。


 この地上勤務って奴は、宇宙軍内においては窓際扱いされかねないくらいに権威において弱い。


 元々貴族出身でもあった彼は、そんな自分の境遇に相当不満を持っており、機会があればと常々考えていた時の大きな人事変更で、自分の持つコネを最大限使っての昇進だった。


 その経歴が示す通り、こと能力においてははっきり言って、そういう扱いのされかたから見ても明らかで、あの事件で同じように昇進した他の小隊長たちからは相手にされていなかった。


 というのも、この中隊というのが、少なくとも士官や下士官は総入れ替え状態のいわば新設中隊で、一人を除く他の三人の小隊長は下士官からのたたき上げであったり、経験こそ少ないがそれなりに優秀と評価されている者たちばかりだ。

 それに何より、面と向かって中隊長と対峙していたのは下士官からのたたき上げで、はっきり言って年齢的にも経験的にも件の大尉よりも上だ。


 そんな者だから、常日頃から中隊長の命令には従うが、あまりいい感情を持っていない。


 何より、小隊長のうち、件の大尉と口論していたのは、あのマークを教育していたベテランの下士官で、シシリーファミリー拠点制圧でマークと一緒に命を懸けて功績を挙げた、猛者と言える人だった。


 そんな彼は、最初から俺のことをよく知っており、中隊長の暴走が明らかに無謀であると必死に止めていたのだ。


 残り二人の小隊長も、大義の無い行動には元から参加する気が無かった。


 それだけに、件の大尉は面白くなく、どんどん無謀な挑戦を始めて行った。


 今回、軍警察や監察官が居なくとも、始めから、彼の計画は成功できなかったであろうが、本当にこの国の貴族連中は害悪しかいないのかと思えるような事件だった。


 彼が唯一のよりどころとしていた宇宙軍大尉という階級って、それほど偉いのかと思うのだが、これは自分のあまりに早い出世の他に、あのエリート士官を養成する士官学校を卒業したことによる意識のずれでもあるようだった。


 たとえ貴族であっても、士官学校を卒業していないと、なかなか出世は難しいらしい。


 実力があれば、それこそ他の小隊長の様にたたき上げでも出世することはあっても、無能がコネだけで出世することは無い。


 せいぜい退官間際でコーストガード出向により少佐になるくらいが関の山だ。


 彼の年令で大尉まで成れたことは、最近宇宙軍での大幅な人事の変更による奇跡があって成し得たことだ。


 だが、それだけに彼は自分が持つ中隊長という役職、しかも上官である戦隊司令からも離れた環境で自由に振舞えるとあって、完全にのぼせあがった甚だ迷惑な事件だった。


 尤も、ここまで分かったのも、海賊拠点という大作戦を無事に終えて以降の話で、話をまた元の時間に戻して、その後の処理にかかる。


「戦隊司令。

 中隊長の職務を停止させましたから、司令より中隊指揮官を新たに命じてもらわないといけなくなりました。

 宇宙軍の仕出かしましたこと、ことが済みましたら、改めてお詫びしますが、それよりも作戦の継続中です。

 速やかにお願いします」


 軍警察官からそう言われなくとも、俺はここで判断を求められている。

 作戦を中止して、撤退するか、継続するかをだ。


「拘束中の小隊長の指揮する小隊から下士官を集めてくれ。

 まず、あの小隊から片付けよう」


 俺はそう言って、直ぐに下士官を集めさせて先任の軍曹に小隊の指揮を任せて、次に残りの小隊長から先任者に中隊と、自分の小隊の指揮を任せるつもりだったが、たたき上げの小隊長の他は経験面では劣ることを自身も理解しており、揃ってたたき上げの少尉に指揮を任せるよう俺に願ってきた。

 俺としても、それでまとまるのならばと、その場ですぐに考えを改めて、異常ではあるが、先任順で一番遅い少尉に中隊の指揮を任せた。


 その後速やかに、宇宙軍を『バクミン』に移乗させて、作戦の継続させた。


「やれやれ。

 ひとまずは片が付いた」


「ええ、相変わらず軍はやらかしてくれますね」

 メーリカ姉さんの一言を俺の横で聞いていたシャー少尉や監察官はきまりの悪そうな顔をしながら苦笑いを浮かべていた。


「それよりも、作戦の継続が大切だ。

 せっかくここまで来たのだから、ここでやめる訳にはいかないぞ」


 俺はそう言うと、『シュンミン』の内火艇に向かった。

 既にバクミンからは次々に宇宙軍陸戦隊を乗せた小型艇が目標に向け次々に飛び立っている。


 せっかく築いた橋頭堡が逆占領される前にこちらから軍を送ることができて良かった。


 でも、向こうの状態が心配だ。

 貴重な時間をあいつのせいで相当無駄にした。

 だが考えようによっては、拘束した二人以外はある意味一番欲しい人材だけが残ったようなものだから、これからのことを考えると、無能を排除できたことは喜ばしい事では無いか。

 俺はそう考え直した。


 俺を乗せた内火艇は先に目標にとりついている衝角付き小型艇の傍まで来たが、まだ、軍陸戦隊の突入作業中で、俺の入り込む隙間が無い。


 暫く内火艇を、横に付けて中が空くのを待つ。

 流石にきちんと訓練を積んでいる陸戦隊の兵士たちだ。

 上がアマチュアのポンコツであっても、兵士一人一人はそんなポンコツなど一人もいない。

 慣れていない筈の突入劇だが、一人も混乱なく、中に入っていく。


 一通り、突入が終わったようで、小型艇の中から機動隊員の一人が俺を呼びに来た。


 俺が中に入ると、すぐさまアイス隊長が状況の報告に来た。


 先ほど事件で、俺たちの邪魔をするような連中が排除できたことを無邪気に喜んでいたが、そのツケはしっかり払わされる羽目になった。


 橋頭堡を確保した後、速やかに後続の軍陸戦隊を突入させて、目標の制圧に掛かる計画だったが、そのしょっぱなからつまずいた格好だ。


 ツケが出ない筈がない。


 敵さんの海賊たちもバカばかりでは無いだろうに、俺たちの侵入に気が付けばそれなりの対応を取って来る。

 まあ、敵からすれば反乱程度に思われたのかもしれないが、それでも制圧部隊を派遣されるのが普通だ。


 当然、俺たちが築いた橋頭堡にもその制圧部隊はやってきており、現在機動隊と一進一退の攻防をしている。


 そんな会話をしているさなか、アイス隊長の元に伝令がやってきた。


「隊長。

 反対側からも近づく一隊を確認しました。

 現在軍警察の小隊が当たっておりますが、足りそうにありません」


 あ~あ、やっぱり計画の最初から躓いたよ。

「司令。

 私見てこようか」

 俺の横で、おおよそ修羅場とは思えない気の抜けた声でマリアが言ってくる。


「あ、それなら私も行くよ」

 当然、マリアが言い出せばケイトも我儘を言い始める。


「お前ら俺の御守だろう」

 自分で言っていて情けなくなるが、俺の護衛として来ているのに早速好きに暴れたいとののたまう。


「ええ、だって、ピンチなんでしょ。

 あれ試そうよ。

 あれなら直ぐだよ」


「あれ使うつもりか」


「うん!

 だって、メーリカ姉さんから許可取っているし、実際戦闘で試したいでしょ」


「それもそうだけど……

 あれ使うのなら私ここに居るよ。

 スーツに臭いが付くしね」


「臭いならどこにいても同じだよ」


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― 新着の感想 ―
[一言] 秘密にしておきたい秘密兵器、最終兵器がくる・・・
[一言] そもそも、末席?とはいえ、王族が上司から指揮権を預かっている時点で、勝ち目なんてない気が・・・・・
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