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陸戦隊の反乱?

 

 一安心しながら、一度、小型艇に戻り、第二陣の突入の準備に入る。


「後部ハッチを開き、合図を送れ」


 最後まで残っている部下たちは手順に従い、後部ハッチを全開させ、後ろから続く小型艇に合図を送る。

 小型艇からも合図が返り、無事に2艘の小型艇は繋がる。

 繋がると同時に中から軍警察の小隊がこちらに乗り込んでくるので、俺は小隊長に、奥に行くよう指示を出して、次の小隊の受け入れの準備に入る。


 無事に俺たち機動隊の他、軍警察の2個小隊までもが敵目標艦の中に入ることに成功した。


 一艘の小型艇を返して、突入作戦の成功をカリン艦長に知らせた。



 また、視線を『シュンミン』に戻してからのお話。


 (ナオ)が自室で準備をしていると、慌てた様子で、1人の兵士が駆け込んできた。

「司令、大変です」

 まだ幼いその兵士は、俺たちも使っている就学隊員の一人だ。

 経験が無いからちょっとしたことでも慌てることがあるが、最近では、それも無くなったと思っていたが、珍しいこともある物だ。


 久しぶりの大作戦で、就学隊員たちも緊張しているのだろうと思って、優しくその就学隊員に尋ねてみた。


「慌てなくても良いから、まず落ち着こう。

 ……

 それで、何が有ったんだ。

 報告をしてくれ」


 その就学隊員はまだ、焦った様子ではあるが、どうにか話はできそうになるまでには落ち着いている。


「はい、後部格納庫内で、軍の兵士たちがもめております。

 私は格納庫の班長より大至急司令を御連れしろと命じられました」


 兵士がやっとのことで、重要な話を終えた時に、艦橋からメーリカ姉さんがただ事でない様子で、俺の部屋にやってきた。


「司令。

 どうもあの連中、暴れだしそうです。

 この様子なら、敵さんに当たる前に陸戦隊の制圧からはじめないとまずそうですね」


 あれ、ひょっとして非常事態でない?


「今、そこの兵士から格納庫に来てほしいと話を聞いたところだ。

 悪いが艦長も付き合ってくれ」


 俺がメーリカ姉さんに頼むと、彼女はすぐにケイトに命じてあった一隊を連れて一緒に格納庫に向かう。


 先ほどの作戦開始の命令で、既に俺から宇宙軍陸戦隊に対して、突入の準備を整えて、チューブを使い『バクミン』に移るように命じてある。


 『シュンミン』の格納庫はこの艦のクラスとしては決して小さな訳では無いが、全通格納庫を持つ『バクミン』と比べると遥かに小さい。

 それに何より、今回の作戦に使う小型艇も『バクミン』に用意してある。


 宇宙軍陸戦隊は『シュンミン』の内火艇のような艇でのピストン輸送では無く、『バクミン』に用意してある小型艇数艘を使って一挙に送る計画だった。


 そのために、作戦開始に伴い、宇宙軍には小型艇が用意してある『バクミン』に移るように指示を出したのだが、どうも、その指示通りには動いていないようだ。


 そればかりでなく、待機場所として使っていた『シュンミン』の後部格納庫内で何やらもめごとまで起こしているとの報告だ。


 この一番大切な時に、何をやっているんだ。

 作戦に参加したくないのなら、何でこの艦に乗り込んだのか俺には分からない。


「軍の連中は、今回の手柄を独り占めしたく、この艦を乗っ取ろうとでもしているのでしょうかね」


「オイオイ、いくら何でもそれは無いだろう」


 俺はとにかく格納庫に急いだ。


 すると一個中隊が整列して待つ状態のところで、数人の士官たちが言い争っている。

 聞いていると、どうも中隊長が俺の発した命令に対して面白くないようで、『軍でもないやつの命令なんか聞けるか』って感じのようだ。


 正確には中隊長と1人の小隊長が、残り3人の小隊長たちと言い争っている。


 流石に、大事な作戦の最中だ。

 俺は、言い争いの中に入り、中隊長に向け話を始めた。


「貴殿には既に、『バクミン』への移乗命令が出ているはずだが、ここで何をしているか、説明願いたい」


「何が貴殿だ。

 もういい加減、お前のような若造に使われるのが嫌になった。

 それに、なぜ俺たち栄えある宇宙軍が貴様のような新参の若造の指示に従わないといけないのだ。

 宇宙軍にはそれなりの権限がある筈だ。

 俺はその権限をここで使わせてもらう」


「中隊長。

 何を言っているのですか。

 既に今の発言では反乱と取られても言い訳ができません。

 私の小隊は、反乱には参加しないことを宣言します」


「貴様、たかが一小隊長の分際で、中隊長である俺に逆らうのか。

 だから嫌だったんだよ、士官学校も出ていないような連中が士官になると云うのは。

 貴様は知らないようだが上官に対して命令不服従なら、俺に貴様の身柄を拘束できる権限があるのだぞ。

 貴様こそ反乱容疑で、職権をこの場ではく奪する」


「それはできません。

 あなた方に対する指揮命令権を現在私が持っております。

 貴方には、いかなる権限を持って…」


「若造が、何を言う。

 俺は、貴族だぞ。

 子爵家の三男で、辺境伯の覚えも確かな、宇宙軍大尉だ。

 その俺が命じる。

 貴様の様な……」


「大尉。

 そこまでです」


 そう声を掛けて来たのは、前に会った宇宙軍警察のシャー少尉だ。


 彼が数名の部下とともに、マークに連れられてこの場まで来てくれた。


 ……

 あれ、確か宇宙軍警察って、既に目標艦に乗り込んでいたような。


 俺の疑問に、マークが答えてくれた。


「司令。

 『シュンミン』からの要請により参りました。

 遅れましたことお詫びします」


 マークはよそよそしく俺にそう言ってくる。

 流石に、この場面で『もう少し砕けた口調で話そうよ』なんて、言えなかったが、ちょっと不満。


 どうも、格納庫での様子を艦橋でモニタリングしていたカスミから、『バクミン』のカリン艦長に応援の要請を入れていたらしい。


 艦橋には、艦長が不在だ。

 艦長であるメーリカ姉さんもここに居るので、艦橋の先任であるカスミの判断での応援依頼はこの緊急時においては、何ら問題は無い。

 むしろ機転を利かせての判断を評価しなければいけない案件だ。


 その、カスミからの応援依頼を受けたカリン艦長が、軍が絡む案件であることから、急遽軍警察の士官を1人呼び寄せていたのだ。


 そこでやって来たのが、あのシャー少尉という訳だ。


 ここからはシャー少尉の独断場と言っててもいいだろう。

 とても気持の良い位に現場を収束させていく。


「大尉の権限を、軍警察の職務によりはく奪します。

 艦長。

 すみませんが数人お借りできませんか」


 シャー少尉はメーリカ姉さんに応援の依頼を出した。


「ああ、構わない。

 ケイト、シャー少尉の指示に従え」


「了解しました。

 少尉、私何を」


「大尉と、そこの少尉の身柄を私の権限で拘束します。

 少なくとも、指揮権を持つ人に対して、命令不服従の現行犯として。

 その後の捜査では、反乱及び、反乱ほう助の容疑も加わることをこの場で宣言します。

 すみませんが、そこの2人を拘束願えますか」


「な、な、貴様は何を。

 何の権限を持って、俺に対して」


「ですから、軍警察としての職務です。

 貴方には言い訳できるとこは何もありませんよ」


「俺は栄えある宇宙軍の大尉だぞ。

 そんな俺が……」


「ええ、存じております。

 ですが、軍においては職位の上位者からの命令は絶対のはず。

 戦隊司令は少佐の階級をお持ちですよ」


「そんなの知るか。

 宇宙軍の大尉に対して命令権など……」


「大尉は存じて居らないかもしれませんが、戦隊司令は宇宙軍にも席が残っております。

 しかも、階級はあなたと同じ大尉」


「え!

 そんな筈は……」


「階級が同じでも、いや、軍において、階級が同じ場合において、指揮命令権のある方が上位に、また、仮にその命令権を持たない場合においては先任が上位に来ることくらいはご存じですよね。

 貴方の昇進は第二艦隊事件の時ですよね。

 あの時に駆り出されましたから私は日時までしっかりと覚えておりますが、戦隊司令の大尉昇進は広域刑事警察機構軍発足より前になりますから、先任の順でもあなたに上位になる権限は発生しません。

 そんなあなたが抗命すれば、命令不服従になるのは誰が弁護しようとも弁明のしようがありません。

 そうですよね、監察官殿」


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― 新着の感想 ―
[一言] 大尉さん、この場で銃殺されてもおかしくない行動を取ってるんだよなぁ……でも今後の事を考えると今ここで銃殺されたほうが幸せだったかもしれませんね。
[一言] ……ついでに言うと、この“若造”さんの地位や昇進って王族肝いりなんだよなぁ。 「王族>貴族」なのは当然で、まして子爵家の三男という貴族社会全体からすれば木っ端にもほどがある立ち位置で「貴族…
[一言] 鉄火場に入る直前に命令拒否って頭大丈夫? 作戦の成否に関わらず戦後問題になりますよ。 軍上層部は頭痛と胃痛待ったなし。
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