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ここはどこ、私は誰

これより第二章が始まります。

前章で倒れたナオはどうなっていくか第二章でお楽しみください。


 ここはどこだ。

 どうやら寝かされていたらしい。


 少しずつ意識が戻り、目を開けた。

 見たことのない部屋に寝かされていたらしい。


 あ、ここで言うのだな。

 『見たことのない天井だな』

 キァ、言ってしまった。

 このセリフ一度は言ってみたいセリフだったんだ。

 思い起こせばあれほど悩んでいたことが、こんな身近にヒントがあったなんて。

 そう思い、かなり読みふけったファンタジーノベル。

 その中から決めセリフを色々ともらったが、まさかこのセリフまで言える日がこようとは思わなかった。


 俺は、部下をかばって殉職するつもりだったんで、生き残ることで言えるセリフは全てあのセリフ集には入れてなかったけど、やはり定番なので覚えていた。

 こんなセリフもファンタジーノベルに沢山あって、俺自身何時かは言ってみたいセリフとしてあこがれていた。

 ま、まさか言えるなんて、このセリフが言える日が来るなんて思いもしなかった。


 しかし、本当にここはどこなんだろう。

 真っ白な部屋じゃないから神様の前じゃなさそうだ。

 となるといきなり転生か。

 す、するともう一つのセリフが言えちゃう、ここで言っちゃうか。

 よ~し、今度は十分に気持ちを込めて言うぞ。

 『ここはどこ、私は誰』

 言っちゃった、言っちゃった。

 もう思い残すことはない。


 ここまでくるともはや手遅れ、かなり進行した中二病だ。

 孤児院で育ったせいで、幼い頃には流行っていたであろうファンタジーノベルには縁がなかったために免疫のない状態で、士官学校に通うようになって初めて接した。

 その年になるまで免疫が無かったので強烈に中二病に罹患してしまった。


 おたふく風邪やはしかと同じようにこういうものは幼少時に罹っていないと大人に成って罹るととんでもなくなる。


 今のナオはまさにこの状態だ。


 今彼は、自分が何故軍の士官になったかも忘れて、幸福に浸っている。

 それでも一通りのセリフを堪能したのか、少しずつまともに戻っていく。


 ナオは今ベッドで、自分の体の確認を始めた。

 手足も動かすことができる。

 どうやら体は何ともないようだ。


 自分の体の状況を一通り確認すると、ナオは起き上がった。

 起き上がり、部屋を見渡す。

 船の中のようだが、少なくとも自分に与えられた士官用個室じゃない。

 それよりもかなりいい造りだ。

 いったいどこだ。


 「だ、だいぢょう~~~」

 え?

 なに?

 何やら白い物体が俺に飛び込んでくる。

 飛び込んできた謎の物体は泣きながら俺に抱きついてきた。

 今の俺は着ていたパワースーツを脱がされて寝かせられていたので、今は軍支給のアンダーウエアのみの格好だ。

 そんな俺に対してパワースーツを着込んだ相手が俺をめがけて飛んでくる。


 これは、ちょっとまずい。

 確実に死亡案件だ。


 俺は、謎の物体に飛び込まれたと同時に俺は絞殺された。

 いや、訂正、正確には今まさに絞殺されそうになっている。


 誰か助けて~~。


 次の瞬間に、部屋の扉が開き、謎の物体と同じようにパワースーツを着た二人の兵士が、今まさに俺を絞め殺そうとしている物を引きはがす。


 あ、ケイト。

 お前、また俺を殺そうとしたな。

 どういう了見だ。


 「どうにか間に合いましたね、隊長」

 パワースーツを着た兵士が暴れていたケイトを床に押さえつけながら俺に話しかけてきた。

 押さえつけられているケイトは泣きながら何か言っていた。


 「だいぢょう~~、いぎでいだのね~」


 俺はケイトを無視してホッとする……間もなく、メーリカ姉さんが部屋の中に走りこんできた。

 どうやら部屋の異変を聞きつけ助けに来たようだ。

 中に入り、部屋の様子を見た彼女は一瞬で状況を悟った。


 「このおバカ。

 バカケイト。

 隊長をまた殺したのね」


 いや、メーリカ姉さん、俺はまだ生きているよ。


 「何度隊長を殺せば気が済むのよ。 

 さっき殺したのを もう忘れたの、このおバカが」


 だからメーリカ姉さん、俺まだ一度も死んでないよ。


 「二度目なのよ、二度目。

 あなたが隊長を殺したのは。

 いい加減にしなさい」


 だから俺は一度も死んでないって。

 よっぽどメーリカ姉さんは俺を殺したいらしい。

 ひょっとして、あんたが黒幕か。


 まだメーリカ姉さんはケイトのお叱りを辞めていない。

 俺は、いい加減この漫才に飽きたので、ひとまずメーリカ姉さんを止める。

 「メーリカ准尉。

 ケイトのことはもういいから。 

 さすがにケイトもこれ以上俺を殺そうとはしないだろう。

 そうだろう、ケイト」


 「はい、二度としません、グスン。

 それよりも、良くご無事で。」

 お前が言うか。


 「私は、心配で心配で……グスン」

 ケイトはまだ泣いている


 「ああ、分かったから、もう良いよ。

 少なくとも俺は無事だ」

 さっきまではだが。

 ケイトのタックルで、あばらが1~2本ヒビでも入っていなければいいが。


 「それより、メーリカ准尉。

 状況を教えて欲しい。

 ここはどこだ」


 「ここは私たちが突入した航宙駆逐艦の艦長室です。

 いま、この船の制圧を行っております」


 「制圧中だと。

 まだほかに海賊がいるのか」


 「分かりません。

 すぐに艦橋を制圧できましたので、センサーで確認したところでは倒した海賊以外にはおりませんでした。

 今、ラーニに二人ほどつけて各ブロックを確認させております。

 まずは制圧できたかと。

 確認がまだですが」


 「そうか、倒した海賊はどうなった」


 「はい、総勢103名居りましたが、65名は死亡を確認しております。

 残り38名につきましては、パワースーツを脱がせて、保管庫に突っ込んであります。

 ほとんど怪我をしておりましたから、この船の備品から応急セットだけを一緒に放り込んでおきました。

 怪我が元で死なれても、あとで本部から責任をどうとか言われたくはありませんでしたからね」


 「ああ、ありがとう。

 それで構わない。

 ところで、死亡したのは外にでも捨てたかな」


 「いえ、一応証拠品ですので、冷凍保管庫にこれもスーツを脱がせてほうりこんでおきました。

 その作業がさっき終わったばかりでして、船内の確認まで手が回らずに、ラーニだけに任せているので、船内の確認作業が終わっておりません」


 「そうか、それより、俺が倒れてからどれくらいの時間がたったんだ」


 「そうですね、1時間は経っていませんね。

 40~50分と言ったところですか」

 え、40~50分でここまで仕事するなんて早すぎませんか。

 実はあまりに優秀なもんで嫉妬から要らない子にされたとか。

 でも、すごいな。

 俺ってこの職場に要らなくない?

 完全に俺はお飾りだね。

 俺も嫉妬しそうだ。


 俺が落ち込むよりも早くに叫び声が聞こえた。


 「メーリカ姉さん、大変、大変だよ」

 奥にある艦橋でマリアが騒ぎ出した。


 「くそ~、どこでも騒ぎばかりおこして。

 マリア~、今度はお前が何をしたんだ」

 と言いながらメーリカ今入ってきたドアから艦橋に戻っていった。


 「何があったんだろう。

 俺も行こう」


 先ほどまでみんなから押さえつけられ、かなり落ち込んでいたケイトが心配そうに聞いてきた。

 「隊長、大丈夫?」

 おまえがつっこんで来なけりゃ~な。


 「ああ、大丈夫だ。 

 それより艦橋が心配だ」

 そう言うと俺は寝かされていたベッドから起きだした。

 

 あらいやだ、服を脱がされていたわ。


 俺は着ていたパワースーツを脱がされて、寝かされていたのだ。

 きわどい下着姿ではないが、まあこれも軍の支給された下着のようなパワースーツの下に着る服だけだった。


 「悪いが俺のパワースーツを取ってくれないか」


 「あ、隊長。

 隊長のパワースーツは壊れています」


 「へ??」


 「首のところに亀裂が入っておりました」

 それはあんたがやったんだろう。


 「使えないのか」


 「宇宙などの真空では無理ですね」


 「分かった、でも下半身部分は使えるだろう」

 コーストガードのパワースーツは上下セパレートになっており、下半身部分はブーツと繋がっている。

 靴が無い以上、下半身だけでもパワースーツを着用しないといけない。


 「それなら大丈夫です。

 これをどうぞ」


 俺はうら若き女性の前でズボンを履くという羞恥プレイを楽しみながら……いや楽しんではいないぞ。

 

 ズボンを履いてすぐにケイトと一緒に艦橋に向かった。



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[一言] >ここまでくるともはや手遅れ、かなり進行した中二病だ。 作者さん、中二病の定義をちゃんと調べた方がいい
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