プロローグ
毎年なぜか春先になると新しい物語を妄想するようで、今年も新たな妄想が……
処女作をなろうで発表してからノクターンでの作品を含め今作で4作品目になりますが我慢できずに発表させて頂きます。
短編が一つありますので、それを入れると5作品目になりますが、短編を除きますとまだすべてが連載中です。
今のところ三作品は毎週更新していおりますが、これ以上負担を強いると……
自滅しか見えないことは重々理解しておりますので、この作品では新たな手法を取り入れました。
先に章単位で作品を完成させ、毎日更新していきます。
ですので、今回の1章17話分は連続で更新しますが、次の章ができるまでは間が空きます。
それでもよろしければお楽しみください。
人間というものは業の深い生き物だ。
いつの世になっても人は争うことをやめない。
ある歴史学者に言わせれば、歴史とは人の争いを綴っただけの物だと言い切る。
手に石や木の棒きれをもって振り回していた時代から、武器だけはどんどん進化を止めることはなかった。
また、争う場所も陸の上から海の上そして海中、空へと、どんどんとその領域を広げていき、ついには人の住む星すら飛び出し、広い宇宙へと争う場所を移していった。
途中幾たびか争いをやめようとする動きもあり、また凄惨な争いをできうる限り、凄惨にならないようなルールも作ってきたが、所詮は焼け石に水だった。
そして現在もまた……
人が生まれた星を離れて早2000年が経とうとしている今でも、その争いを止めようとはしていない。
そんな人類の歴史の中で信じられないことだが、ほんの200年前には、歴史の奇跡ともいえる、平安な時代もあった。
大帝国が広い宇宙を一つにおさめ、ほんのひと時だが、国同士の戦争のない時代が。
しかし、無理やりまとめて国を作れば、その歪がかえって後の争いの元となる。
人はいつしか元のように、いやより凄惨に争うようになった。
今の時代を後の人々は宇宙戦乱の時代とでも呼べばよいのだろうか。
そして、今も休むことなくどこかしらで人々は殺し合いをやめようとはしない。
今ここに、一人の青年がいる。
彼もその時代の運命には逆らえず、争いの渦中にいる。
そしてその彼は、今まさに絶体絶命の危機的状況を迎えているのだ。
今、彼のいる場所は宇宙空間に浮かぶ航宙駆逐艦の内火艇を格納する倉庫内である。
『やはり待ち伏せされていたか』
その青年は独り言をつぶやいた後に、自身の置かれている状況を冷静に分析している。
青年の名はナオ・ブルース。
ほんの2週間前に首都星ダイヤモンドにあるエリート士官養成校を卒業したばかりの生きていれば明日21歳になる予定の人間だ。
今彼のおかれた立場は、この国の人々からコーストガードと呼ばれている首都宙域警備隊の小隊長だ。
ほんの今しがた彼の上官である航宙フリゲート艦『アッケシ』の艦長ダスティー少佐より宇宙海賊制圧の命を受けたばかりだ。
この宙域にいるコーストガードの上層部は彼ら自身がおかれている不利的状況を打開すべくそれこそ光速を超えるくらいの早さで後方に退く判断をくだした。
そのために、旗下の艦艇である航宙フリゲート艦『アッケシ』に艦隊の安全のための殿を命じ、さっさと自分らは全力で後方に退いてしまった。
航宙フリゲート艦『アッケシ』の艦長もそんな無責任な上司のために捨て石にされるつもりはさらさら無く、自身の身の安全のために、つい先日配属されたばかりのナオに以下の命令を発した。
「内火艇で敵艦艇に乗り込み、海賊を制圧しろ」と。
誰が考えても無理筋も良い処だが、まったく悩むことなくナオは彼の部下30名ばかりを引き連れて彼の指揮する内火艇を操り、敵である宇宙海賊の最後尾に位置する駆逐艦に乗り込んで行った。
当然、対する海賊たちもナオたちを迎え撃つべく駆逐艦の格納庫前で待ち構えている。
ナオが今相手にするのは、この辺りでは大戦力を有することで有名な海賊『菱山一家』に連なる、カーポネ率いる海賊団だった。
『菱山一家』の総戦力は一国が持つ正規艦隊の半分、半個艦隊はある。
この時代、普通以上の国力の有る国でも持てる艦隊数は、せいぜい2個が限界だ。
大国と言われる国ではもう少し持つこともあるが、それ以下しか持てない国も多い。
この王国ですら、軍としては正規艦隊が二つ、2個艦隊しかない。
そのことから考えてみれば、海賊『菱山一家』が持つ戦力がいかに大きい事かがわかるだろう。
正確に統計資料が無いので分からないが、多分全宇宙で見ても『菱山一家』は海賊として最大の規模を誇ると言われている。
菱山一家の全戦力相手では、もはやコーストガードの全戦力をもってしても歯が立たず、正規宇宙軍の一個艦隊でも向けなければならない規模だが、今回はその一部なので、コーストガードも海賊取り締まりに出張ってきたのだ。
しかし、いざ海賊に対面してみると、カーポネだけでも侮れない戦力で、現場指揮官は自身の不利と見るや否や、さっさと逃げることを選択したために起こった悲劇だ。
しかし、相手は海賊だ。
そもそも彼ら海賊にとって公的戦力とは、絶対に戦わなければならないものではない。
海賊という職業は、危険がいっぱいなので、とにかく臆病だ。
少しでも不利と見たら躊躇せずに逃げる。
場合によっては味方の海賊すら囮にして逃げるくらい平気な連中だ。
今回も同程度の戦力相手とみるや、海賊の方も逃げることを選択したのだ。
海賊の戦法は、一言でいえば卑怯の言葉しかない。
老朽著しい一艦を生贄にしてさっさと逃げる作戦をとったようだ。
そこに向かってナオはのこのこと乗り込んで行った。
このコーストガードの対応を見た海賊は、少しでも安全を考え、確実に逃げるためにナオたちを相手にすることを決め、艦内で待ち構えることにした。
何故、この宙域で武装艦艇であるはずの艦艇同士がその武器、例えばレーザー砲などを使って戦わないかと云うと、ここの宙域が特殊な状況に置かれているためだ。
詳しくは後程説明していくが、ここでは一切のレーダーの類が役に立たない。
また、レーザー兵器の類も使用できない。
これはこの宙域だけでなくこの宙域内にある艦艇内も同様である。
割とこの様なケースはあちこちであるので、いくら時代が進んだとはいえ、昔に戻ったような戦法が有効となり、今回の場合も、その戦闘は艦艇に乗り込んでの白兵戦となる。
なにせ、個人の携帯武器でもあるレーザーガンも使用できないから、斧を使っての力と力の戦いになる。
海賊たちの武装はパワースーツにバトルアックスと云った大航海時代以前をほうふつとさせる完全武装だ。
これはこの時代では標準的な武装であり、その装備でナオたちを迎え撃つ。
そんな荒くれたちが100人は待ち構えている場所にナオたちは飛び込んでいったのだ。
まさに絶体絶命。
ナオの率いる兵士はおよそ30名、しかも全員が女性ばかりの部隊だ。
これには色々とコーストガードの思惑の絡んだ人事であったが、ナオは彼女たちの命を預かる隊長だ。
普通なら絶望する場面であるのだが、ナオにとっては、これぞ待ちに待った瞬間なのだ。
「俺にかまわず、逃げろ。
ここは俺が支える。
お前たちは生きて帰らなければならない。
これは俺の命令だ。
さあ、行け!」
ナオはすぐに部下たちにこの場を離れるように命じた。
ナオの中の相当に拗らせた『中二病』が彼に囁く。
フ、決まったな。
まさに最高の瞬間だ。
これぞまさにヒーローだ。
命を張って部下を守る。
これぞ男として生まれたものにとって最高の死にざまだな。
フフフ……
先のセリフは1年も前から考えていたセリフ集の中の一つだ。
彼は過去に心に負った大きな傷のために常に死を望んでいた。
軍に志願したのも彼自身が自殺できずに、その代わりにと戦死を望んだものに他ならない。
しかし、現実は彼の思い描いた通りにはいかなかった。
彼は、紆余曲折の末にコーストガードにほんの2週間前に配属されたばかりだ。
配属当初は失望を感じ相当に落ち込んだのだが、今彼がおかれている状況は、これまた彼の予測を大きく外れて、相当早く彼の思惑を達成させるチャンスが訪れたのだった。
コーストガードに配属が決まった時にはかなり落ち込んではいたが、結果的には良かったのだろう。
ほぼ彼の希望通りの展開だ。
不謹慎ではあったが、今彼は相当喜んでいた。
ここまで拙い私の作品をお読みいただきありがとうございます。
今回は今までよりも十分に確認しての上稿しておりますが、誤字等ございましたがご連絡いただければ幸いです。
また、作品の感想など、モチベーションに直結しますので、頂けましたら非常な喜びとなります。
素人策人ですが、評価などお待ちしております。
なお、この作品は既に17話までは書き終わっておりますので、ストーリーなどについては修正が難しくなります。
感想にそのような内容がもしありましたら、できうる限り作品中に反映していきたいとは思いますが。どうしてもその反映には時間がかかります。
次章以降での反映になりますので、ご了承ください。
なお、この作品以外にも作品を現在進行形でなろうにて発表しておりますので、もしよろしければそちらも楽しんで頂けたら幸いです。
一応、他の作品とはジャンルが異なり、転生歴史ものや転生軍記物(近現代?)それと少々お色気風の現代経済もの??をノクターンでも発表しております。
一度覗いて頂けたら幸いです。