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スライムが現れた。

大観音からの帰り道。

俺はまだあの空間での出来事が夢じゃないかと思えて仕方なかった。


どんなスキルかは試してみないと分からない。

それと、スキル施術体の肉体になったことも、確認してくるといいと服山は言っていた。

それからまたここに来るようにと。


スキル施術体は幻夢生物とやらが見えるらしい。

これも服山が言っていたことだが、幻夢生物も害をもたらすヤツばかりではないらしい。

危険因子はそれなりの対処を施されるが、その他はそのまま放置されているとか。


キツい傾斜の坂を自宅に向け下っている時だった。急に目の前に、スライムが飛び出してきた。

緑色の半透明なドロドロとしたゲル状の体に、つぶらな瞳と口。

ゲームでよく見る姿が本当に存在していた。

こんなにすぐなのか。幻夢生物は実はこんなに身近だったのか。

非現実はすぐ隣にあったようだ。


敵意はないような気がする。どこを見るでもない視線は、虚空の一点を見つめ、ただひたすらにぴょんぴょんを繰り返していた。


いわゆるこいつが無害な幻夢生物なのか。攻撃してこないのにこっちから攻撃を加える訳にはいかない。

いくら幻夢生物だからといって無抵抗な生き物を殺傷するには気が引ける。


しかし、スキルは使用しないと中身が分からない。


そんな葛藤をしていた時、坂の下の方から俺とスライムの方へ近寄る1人のおばあちゃんがいた。


足腰が悪そうで杖を使用しているのだが、少し歩いては腰をのばしを繰り返しながらゆっくり歩いてくる。


しかし困ったことがあった。その進路上にこのスライムがいるのだ。一般人にはこいつは見えないらしい。だからといって接触なく通過する保証がどこにあるだろうか。


「あの! おばあちゃん。たぶん見えてないと思うけど目の前に今スライムっていう化け物がいるからさ。もうちょーっとこっち歩かないと跳ね飛ばされたりしたら大変だと――」


俺はおばあちゃんを必死で説得した。

自分で訳分からないこと言ってると思ってる自覚はある。

だけど、事故が起こってからじゃ遅い。


「はて? シュライム? 孫に煎餅とかりん糖とルマンド買ってやっかと思ってイオンさ行かんなんねから、そがなこと言わっちゃってばばちゃ困ってしまうは」


「え! なにって? もう方言キツいよおばあちゃん。だからーあのね、ぷにゅぷにゅしてて、ゼリーみたいな……って分かんないか。ほら羊羹だよ羊羹だ。羊羹の化け物がそこに居るんだって」


「羊羹だ? おら買いさ行くのは煎餅とかりん糖とルマンドだは。羊羹はこの次にすっぺー。ほれこれ飲め。いきなしすっぺーけど疲れてっときは、効くんだこれ」


ダメだ。日本語が通じない。立ち止まってもらうはずが、何故か【猛烈すっぱレモン汁】という謎のペットボトル飲料水を手に入れてしまった。このおばあちゃんを言葉でなんとかできるものではない。


ならば、やることはひとつ。スライムを討伐する。

おばあちゃんを護るため。

大義名分はできた。


覚悟を決めて俺はおばあちゃんとスライムの間に立ち塞がった。

「スライム! 今すぐそこをどかないと俺のスキルが火を噴くぞ」


スライムになんの反応もない。

おばあちゃん同様日本語が通じない相手だと分かった。


どかすしかない。でもどうやって?

あれ? スキルってどうやって使うの?

教えられてないよね俺?

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