貧窮
腹が減った。そして寒い。
東北の4月はまだ肌身に染みる。
フィギュア造形師を目指すべく、俺は実家を出てとある専門学校に入学した。家賃3万円の激安アパートを借り、晴れて初めての一人暮らしを始めてもうすぐ1ヶ月。
そうだ。まだ1ヶ月も経っていない。
なのに俺は家賃滞納の危機に瀕していた。
理由は簡単だ。お金が無いからに決まっている。
親元を離れた時は、とても気持ちの良い別れ方では無かった。
高校時代にフィギュア造形師に憧れ、とりあえずの専門学校入学費と前期学費合わせて100万を死ぬ気でアルバイトをして貯めた。
しかし、そこで力尽きた。
俺ではない。お金がだ。
実家は自営でラーメン屋をしている。
父親と母親で二人三脚で切り盛りしているのだが、これが不味い。
夕食は必ず売れ残ったラーメンが出るのが定番な訳だが、無理矢理お腹を満たしているに過ぎない。
そんなラーメンが流行る訳もなく、しかし潰れるわけでもなく。
そんな中、俺を進学させるだけの経済力はなかっという訳だ。
両親は俺に跡を継いで欲しかったようだが、俺は毎日食べさせられる口に合わないラーメンのせいで、ラーメン自体が大嫌いになってしまっていた。口に出して言ったことはないが、俺がここのラーメンを作ることはないだろう。
まあ、なにを言いたいかと言うと仕送りは期待できないということ。
そして、生活費にあてる貯金もなく、俺は初月にして家賃滞納の危機に瀕しているという訳だ。