こんなはずじゃなかった!
(あらすじ参照)
「異世界転生して苦節30年、高価な材料や、もう手に入らない貴重な材料を惜しげもなく使用して、ついに完成した……!」
暗い実験室。青く濁った液体の入ったガラスコップを流しの前で掲げ、下から光を当てて透明感を演出しつつ怪しく笑う白衣の女性……、
くくく、もしこの光景を見ている人がいたら、絵になると絶賛したであろう! なんなら馬マスクでも被っていれば更に絵になったかもしれないが、そんなもの、この世界にはないからな!
なんて、そんな解説口調をしたくなるのも仕方ない。白衣の女性こと私は、そう言いたくなるくらい素晴らしいモノを作り出したのだ!
そう、ついに人類を猫耳ロリ化する薬を作りきったのだ!
人体実験も繰り返し、安全性もばっちり! ただのロリ化じゃなくて、本人の特徴はそのままのロリ化! 男の人は1滴で、女の子はコップ1杯で変化しちゃう!
まあ、おじさんに使ったときはいくら増やしても猫耳が生えただけだったけど、猫耳おじさんとか気持ち悪いし、私が使うのは女の子だから問題ない!
そして実験の結果、ついに完成した薬が、このガラスコップに入った1杯!
材料がなくなっちゃったからもう作れないけれど、あとはこの薬を私の親愛なるメイドに飲ませて、猫耳ロリメイドといちゃいちゃ百合百合するだけ……
「マリーさま~ 入りますよ~!」
そう、ケモ耳幼女といちゃいちゃするためだけに、ここまでがんばってきたんだ!
それをいつもお世話になっていて、私を心酔してくれているメイドさんに飲んでもらうことで、人見知りの私でもいちゃいちゃを楽しめる! もちろんメイドさんの小さい頃の写真を見せてもらって、かわいかったことを確認済み! そこに猫耳とか絶対かわいい! うぇへへ……
「マリーさま?」
「うわっ!?」
くんずほぐれつな妄想をしていると、後ろから声をかけられ、驚いてコップを落としてしまった。
カシャーン!
絶望的な音。
「ああっ!?」
慌てて手で流れるのを防ごうとするも、奮闘むなしく流れていく液体。それどころか、割れた破片で指先を切って、血が出てきてしまった。
「私の努力の結晶が……」
割れたガラス片と流れていった液体を呆然と眺めていると、後ろからひょいと出てきた手が、ガラス片をさっさと取り除いていった。
「またマリーさま、失敗したんですか?」
「失敗じゃないよ! ついに完成したところだったんだよ!」
叫んで振り返ったら、そこには見慣れたメイドさん…… ではなく、猫耳幼女メイド!?
「ナンデ? ドウシテ!?」
「マリーさまが猫耳幼女猫耳幼女ってうるさかったので、冒険者さまにロリ化するポーションを譲ってもらったんです。それでうまくいったのでご覧に入れようと来たのです。さすがに猫耳化するポーションは聞いたことがないとのことで作り物の猫耳ですけど……」
そういってはにかみながら自分の猫耳を触っているメイドさん。かわいいなおい!
「ってマリーさま! 指から血が!」
慌てて手を取って、血の出ている人差し指を口にくわえる猫耳ロリメイド。
なにここ天国? それとも幻覚なの!? でも、これだけ幸せなら幻覚でもいいや……
あまりの幸せっぷりに脳が考えるのを拒否したのか、その後の記憶はない。
「あれ、ここは……」
私はいつの間にか自分のベッドで寝ていた。
なんだ、さっきのは夢だったのか。完成した夢を見るなんてせっかちだなあ。
まあでも、もうそろそろ完成しそうなのは確かだし、今日もがんばって研究するかぁ。
そんなことを考えつつゆっくり起き上がると、「あっ、やっと起きてくださいました」と声をかけてくれる幼女の声。
あわててそちらを見ると、夢に見ていた猫耳ロリメイドさん。
あわててほっぺたをつねる。
痛い。
つまりこれは。
「夢じゃなかった!」
「夢…… というのはわかりませんけれど、無事なようで何よりです。いきなり倒れたときは驚いたんですよ?」
そうやってほほえんでくれたメイドさんに、私は抱きついた。
「く、苦しいです!」と腰をばんばんたたいてきたメイドさんを謝りつつ解放し話を聞いてみたところ、この世界のダンジョン内には、弱体化の罠や弱体化ポーションといったものがあり、それを譲ってもらってロリ化したとのこと。
「そんなモノがあったなんて……」
「マリーさまはずっと研究室にこもりっきりで、そういう話を聞かれる機会がありませんでしたから……」
落ち込む私を慰めてくれる猫耳ロリメイドさん。見た目年下なのに、この包容力。バブみ最高か!?
顔をプニプニのお腹に押しつけハスハスしつつ、メイドさんから「今日、街ではお祭りをしているんですよ」とか、「そういえば街の井戸の水を飲んだ人なんですけれど、外見に異変があったらしいですよ。体調に問題はないみたいですけど」なんて外の話を聞く。
「お祭りなんてあったのかぁ」なんてつぶやきつつハスハスしていると、くすぐったいですよ、なんていいつつ「マリーさまは何十年も住んでいるのに、ずっと屋敷の書庫か実験室に篭もっていて、外に出かけたことないですからね」なんて苦笑される。
でもダンジョンにそんな薬があったなら無理に薬を作ることはなかったなぁ。
「この世界の常識ってモノを知らないし、たまには外に出かけるのもいいかもなぁ」
ぽつりとつぶやくと、
「そうと決まったら早速出かけましょう!」
メイドさんに初めて見る服に着せ替えられ、あれよあれよという間に外へ連れ出された。
「こんな服、初めて見た」
「いつも白衣しか着てないですからね。さあ、出発進行です!」
そうやって出かけた街で待ち受けていたのは、たくさんの人。そして。
かわいらしい猫耳を頭につけた、
筋肉ムキムキのおっさん達だった。
「おっさんの猫耳パラダイスとかヤダー! こんなはずじゃなかった!」