スパイシーチキン
短編で投稿。
湿度高い、扇風機しませう。
僕、 鳥居 熖太は名前と性格に違いが大きくあります。僕は根暗な方なのです。暑苦しい名前じゃなくて、もっと普通の名前が良かったです。
今日だって、誰かに助けを求められましたが、すごくがっかりされてしまいました。
「ちぇ。鳥居だから強いと思ったのに、これじゃ契約の話はなしだな」
「そ、そんなぁ。待ってくださいよ」
鳥居家の祖先は契約獣と人との間に生まれた方です。そして僕は、世に名高き神獣の母と、人間の父の間に生まれました。僕は母とは違い獣になる能力を持っていません。
しかし、僕は半獣の子でありながら、ランダム召喚のハズレ枠として登録されてしまったのです。人とハーフの場合。 純血の子しか召喚書に名前がのらないはずなのに。
僕は父に電話をして、相談することにしました。迷惑をかけたくない気持ちで、今まで相談しなかったのですが。そろそろ限界です。
「もしもし父さん。僕は今日も呼ばれてしまいました。召喚書からどうにか僕の名前を消してくれませんか?」
「熖太。すまん、今日は忙しいんだ。また後で電話してくれ」
父さんはすぐ電話を消してしまいました。このところ、仕事が忙しくて全然帰ってきていません。倒れなければ良いのですが。
「父さんのことも心配ですが、僕自身のことをどうにかしないと」
僕は最近、学校にも行けていないのです。このままでは出席日数が足りずに、卒業できなくなってしまうでしょう。
「今日僕が召喚された場所は…」
僕は召喚武道館を検索します。このところ、何度も呼び出されている場所です。今日召喚された時に、武道館の看板を撮影しておいたのです。隣町の召喚武道館だったようです。
「隣町の駅から徒歩五分ですね。すぐ近くで助かりました。夏休みが始まる日から、子供でも無料で使えるようですね」
僕は駅まで自転車をこいでいきます。隣町まで時間がかかるので、その間召喚書のことを調べます。僕は半獣の子なので、召喚とは無縁だったのです。
そうこうしている内に時間になりました。電車の中の十分はあっというです。僕は靴の紐を結び直すと、駅のホームに出ます。
「ありました。本当に近くなんですね」
召喚武道館は、駅から見える位置にありました。少し歩けばすぐそこです。夏休みが始まって、楽しそうに笑っている同級生たちの姿も見えます。
「僕には無縁ですね」
「何が無縁なんだ?熖太」
「翔ちゃん!久しぶりです」
僕にもなかのいい子が一人いました。この男の子のような女の子は青空 翔といいます。小さな頃から僕と遊んでくれる、優しい心の持ち主です。
「最近学校に来ていなくて、心配してた。どこに行ってたんだ?」
今もこうし、僕のことを心配してくれています。翔ちゃんみたいな子に、僕は召喚されたいのものです。
「最近体調がすぐれなくて、でも大丈夫ですよ。夏休み明けには学校に行けますから」
僕は翔ちゃんと一緒に武道館に向かいます。学校に来れなかった間の話しを聞いてみたりします。
そうしているうちに、僕たちは武道館につきました。
僕たちは受け付けのお姉さんに、あいさつをして、召喚書を使う許可をとり、中に入っていきます。召喚武道館の中はいろんな人と、いろんな召喚獣たちで溢れていました。
「そういえば。翔ちゃんも武道館に来るの初めて何ですか?翔ちゃんはもう召喚してると思ってました」
「初めてだな。熖太は学校休んでたからわからないか。実は昨日から召喚が解禁されてんだ。先に召喚して熖太をびっくりさせようと思ってたんだ」
えへへと笑う翔ちゃん。僕の幼馴染は今日もかっこいいです。
「みろよ熖太。向こうで召喚が始まったぞ」
翔ちゃんが指差した先には、ページをめくるツインテールの女の子がいました。止まったページを二回ノックすると、召喚獣が中から飛び出します。
「すごい!ベビードラゴンだ!!」
「まじか…」
僕はびっくりして叫びました。周りも騒然としています。僕の隣の翔ちゃんは、驚きのあまり固まっています。女の子は周りから祝福されて、周りに手を振り返しています。
「うかうかしてられない。同級生には負けないぞ」
「同級生?僕は見たことがないけど」
「熖太が休んでる間に転校してきたんだよ。名前は確しか。太刀花 優。勇者の末裔だって噂だ。うわっ!」
翔ちゃんが突然転びました。武道館全体が揺れています。召喚獣による試合でもびくともしない。避難場所にもなっている場所なのに。
「翔ちゃん!」
「私は大丈夫。それより熖太は怪我しなかった?」
翔ちゃんは膝についた砂をはらいます。僕に心配をすぐにするとは、翔ちゃんはやっぱり強い子です。
観客席に下から悲鳴が上がりました。僕と同じくらいの年頃の子や、同級生たちが上空に連れ去られていきます。犯人たちには獣の翼が生えていました。
「翔ちゃん。犯人は鳥の半獣の大人です。僕たちではかないません」
「そうだな。隠れて大人に連絡するぞ」
僕たちは急いで物陰に隠れましたが、見つかるのは時間の問題でした。彼らは鳥の半獣。目がとてもいいのです。一か八か、僕は翔ちゃんにかけてみることにします。
「翔ちゃん。お願いがあります。僕と手を繋ぎながら、召喚書を持っていてください」
昔話で聞いた。半獣王と人間を再現してみるのです。
半獣王は気に入った人間に、召喚してもらいたくて裏技を使ったのです。
それは触れ合いながら、召喚されたい相手の、本の表紙を契約獣がノックすること。半獣の僕ならきっとできます。
「翔ちゃん。これで特定の召喚獣が呼び出せるようになったよ。この召喚書の表紙をノックしてほしい」
「なんかわかんないけど。任せろ」
翔ちゃんが召喚書をノックしました。僕の周囲で炎が静かに巻き上がります。僕の体が風の中分解と再構築をされて、形が変わっていく感覚がしています。
「熖太!今助けるっ」
炎に包まれた僕を助けようと、翔ちゃんが炎を召喚書で叩きました。すぐに普通の炎と違うことに気づいたようです。
「…熱くない」
「ピヨ(僕は翔ちゃんに怪我させないよ)」
僕は炎から飛び出すと、翔ちゃんの手のひらに乗った。おかしいな。翔ちゃんって、こんなに大きかったかな?
「熖太がヒヨコになった」