表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

【夏のホラー2019】けもの子たちとの廃病院での肝試し

作者: しっぽと羽

夏のホラー2019用に記載。

「ねえ。合宿の話なんだけど…夕方から夜にかけて肝試ししない?」

 ネコミミの美夜子がウサミミの冨美夜に聞く。

「いいわね…智美は?」

「あたしは…そうね賛成…」キツネミミの智美はキツネしっぽをふりまわしながら言う。

 ネコミミの女の子。ウサミミの女の子。キツネミミの女の子がそれぞれ話している。


「なんの話?」僕は女子3人が話しているところに近づく。


「合宿。行くでしょ。文芸部のネタとして肝試しも予定に入れるから…

どこかない?」美夜子がネコのしっぽをこっちに向けて聞いてくる。


「どうだろ…なあ。美佐のおばさん田舎に住んでいて、民宿やっているんだよな」 

 僕は幼馴染の美佐(普通の女の子)に聞いた。


「うん。あたしのおばさん。民宿をやっていて…それと…ちょうどその町に廃病院があるよ…」

 美佐はおとなしい女の子。他の女の子とは違い普通の人間。


「いいわね。行きましょ。ところで激混みとかで泊まれないとかはない?」

 美夜子がネコのしっぽを美佐のほうへと向ける。


「たぶん大丈夫。宿泊料金50%オフで交渉しておく…」

 美佐が手配してくれることになった。


 僕と普通の女の子の美佐。それとけもののような耳がついている女の子3人はみんな文芸部。

 学校内のできごとを調べてそれに関連した連載小説を書いている。学校内で発行している新聞部へ原稿を持ち込み、のせてもらっている。


 それ以外では、読んでためになる小説や面白い本などを学校の図書館から借りて来て、図書館の壁に壁新聞という形で紹介の文面も書いているし…そこに文芸部で考えた小説ものせている。


 女の子ばっかりで女子率が高いが…


☆☆☆


 夏休み。


 合宿の当日。


 美佐は手伝いのため2日前からおばさんの民宿のところへと手伝いへ行っている。


 ウサミミの冨美夜は隣近所に住んでいる。一緒に待ち合わせ場所の駅へと行くことにする。


「何もってきたの?」冨美夜は聞いてくる。


「ん? ビデオカメラとメモ用の小さい入力マシン」

 僕はカバンの中をみせる。


「あ。買ったんだ…」

 小さいPCみたいな入力機器。キーボードがついていて、折りたたむことができる。

 小さい液晶画面がついている。


「冨美夜は?」僕は冨美夜のバックを覗き込む。


「デジカメ」


 昨日の夜、美佐から電話があり、スマホとか携帯電話は持ち込み禁止と言われた。

 なんでと僕が聞くと…おばさんが嫌いなんだって。と美佐はいっていた。それにその町の携帯電話の電波状況が悪くて使えないよとも言っていた。この電話も民宿の黒電話からかけているんだよ。と。


 このとき…僕は疑問に思わなかったのが不思議だ。


 それぞれ、駅にネコミミとキツネミミの子をみかけ、声をかける。


 最初にキツネミミの智美の耳がこっちのほうを向き、それから智美がこっちを見る。

「あ。来た来た…」


 ネコミミの美夜子のネコのしっぽもくねくねと動いている。


☆☆☆


 列車で1時間30分ほど離れた町へと行く。


 さびれた町。

 

 駅前もさみしい。ほとんど人はいない。

 海も近くには無く… 名物といえば、有名な神社と、その神社から続く山の山頂から見える景色ぐらいか…


 近くに廃病院がある。


 シャッターが閉まった商店街。その中で1つだけ開けている店舗。


 そこでお菓子とかを買う。


 民宿までは駅から25分ぐらいの距離にある。


 神社の近くに民宿があった。


 だれもいない田舎道。


 田舎道の横には田んぼがあり、深い溝が道路の横にある。


「助けて…」

 かすかに女の子の声が聞こえたように感じて横や後ろをみる。


 けれども…まわりの女子たちはそれぞれ隣の子と会話しているみたい。


 気のせいか…


 僕はビデオカメラを片手に、前を歩く女子の後ろ姿を撮影しながら、まわりの田舎の景色を撮影しながら歩く。


 キツネミミの子はでっかいしっぽを左右にふりふりしながら歩く。


 ちょっと暑いが…僕はキツネミミの子の真後ろを歩いているので、智美のでっかいしっぽが動くたびに、しっぽの動きによる風が僕にあたり、少し心地良い。


 ウサミミの冨美夜は片耳を隣に歩いている美夜子に向け、逆の耳を前方とか真横に向けている。

 たまに違う方向に動く。


 だれもすれ違わない田舎道。幼馴染の美佐に聞くと、夜はここは通らないようにしているとのこと。

 明かりもないし…めったに車も通らないが、危ないし。


☆☆☆


「暑かったでしょう…どうぞ…こちらが民宿をやっているおばさん」

 幼馴染の美佐が紹介してくれる。


「こんにちは…僕たちは文芸部で美佐の友達です」

「こんにちは」

「こんにちは」


 お辞儀をする。ウサミミの冨美夜の耳が前に垂れる。


☆☆☆


 日が明るい間。そばの神社へみんなと出かける。


 夕方までそれぞれ時間をつぶし… 廃病院へ出かける準備をする。


 美佐が先頭に立って歩き、廃病院までの道へとみなそろって歩く。


 途中の道。幼馴染の美佐が後ろを振り返って言う。

「ねえ。空き缶。道に落ちている。危ないから気を付けて…踏まないようにね…」


「あ。ほんとだ。大丈夫。大丈夫」僕は美佐に言う。


「ほんと危ないから…」美佐はいったん僕の目を見てからまた前を向いて歩き出す。


 みんなで歩く。10分から15分ほど歩く。


「ついたよ…ここが病院。たまに遠くから来た若者とかが心霊スポットとして使っているの」


 美佐は壊れてしまった金属の柵の鍵を開けて中に入る。


 僕はビデオカメラをまわす。


 ウサミミの冨美夜は資料のため、デジカメをバッグから取り出す。


 かしゃり。冨美夜は一番後ろから僕たちの姿を写真へと収める。


 プレビューから撮影した画像を確認する冨美夜。


「とれた?」僕は冨美夜の撮影した画像を見る。


 一番先頭に幼馴染の美佐。その後にネコミミの美夜子。

 僕たちの前にキツネミミの智美が移っている。


 僕は智美のそばへとそっと背後から近づき…

「わっ」智美のキツネミミのそばで言う。

 美夜子のネコのしっぽもピンとまっすぐになる。

「ぎゃー」智美がびっくりして飛び上がり、しっぽが太くなる。


「なによ…」


「そういうことはやめること…わかった?」幼馴染の美佐が注意する。


「はい…」


 病院の中に入る。


 待合室。


 外は夕方でもうすぐで暗くなる。


 荒れている待合室。


 破片とかが床に落ちていて、椅子もボロボロになっている。


 ウサミミの冨美夜が椅子に座ってみる。 

「あ。まだ大丈夫ね…」冨美夜がちょっと上下に体を動かす。

 ばきっ。と言って椅子が壊れ、椅子の底がぬける。


「何やっているんだよ…」手を伸ばす冨美夜。

 一番近くには幼馴染の美佐がいたが、冨美夜には手を伸ばさない。

 僕はそれを見て、冨美夜の手をもってひっぱりあげる。


「ありがと…」ウサミミの冨美夜はお尻についた破片を手ではらう。


「先に行きましょ…もうすぐで暗くなるから…明かりは準備してきた?」

 幼馴染の美佐がみんなに聞く。


「うん」


☆☆☆


 あっというまに辺りは暗くなっていった。


 この町には廃坑になった炭鉱もあったみたい。昔はそれなりに人がいて、にぎわっていたみたい。


 廃病院はそのころに建てられたもの。この町には似合わないほど大きい病院。手術室もあったみたい。


 ここは1F。


「霊安室はないの?」ネコミミの美夜子が幼馴染の美佐に聞く。


「たしかあったはず…こっち」美佐はみんなのほうをいったん見る。


 病院の階段。地下へと続く…


「さすがに暗くなってくると怖いわね…」かしゃっとカメラで撮影しながら進むウサミミの冨美夜。


 僕はビデオカメラをまわしっぱなし。


 足音が病院の中にひびく。


 1つ階を下り、廊下を見る。

 なぜか、非常口の明かりだけついている。


 非常用の電源は太陽電池をもとにした電源からとられており、ずっとついている。

 緑色の明かり。不気味だ。


 ぎー。幼馴染の美佐が霊安室と書いてある扉を開ける。

 文字もかすれて読み取れないぐらい薄れているが…


 部屋の中は何もない。からっぽ。


 みんなそれぞれ部屋の中に入る。


 ばたん。霊安室のドアが閉まる。


「何か聞こえない?」ウサミミの冨美夜の耳が動く。


 僕は「何も聞こえないけど…怖いこといわないで…」


「ん。あたしもさっき何か聞こえた気がしたんだけど…」キツネミミの智美も言う。


 真っ暗な部屋。


「ぎゃー」ウサミミの冨美夜が壁を見て言う。


 壁には人型の影。


「おい。懐中電灯で影になった僕の姿だから…」冨美夜に言う。


「あーびっくりした」


 僕は寒さを覚えて体をさすった。

 寒い季節でもない。


「でましょ…」幼馴染の美佐は言う。


 霊安室のドアに手をかける。


 ドアを開けると遠くで鳴っている音。


 じりりりり。じりりりり。じりん。


 電話の呼び出し音みたいだった。


「ねえ。今鳴っていなかった?」ウサミミの冨美夜の耳が立ち、階段のほうを向く。


「たしかに…でも電気は来ていないんだよな…」


「昔の電話って電気がなくても電話回線から電気をとって動くそうよ…」

 ネコミミの美夜子が言う。


「上の待合室から?」僕は聞く。


「行きましょ。置いて行くわよ…」キツネミミの智美が僕たちに言う。

 

 一番後ろは僕だった。みんな前にいる。


「見つけてあげて…」僕の後ろから声がする。


 僕は後ろを振り返る。


 けれども後ろには廊下だけ。霊安室がある。


 こええ。


 前を歩いているウサミミの冨美夜の手をにぎる。


「へ?。何? 急に…さては怖いのね…ぐふふ…お子ちゃま…」

「いいだろ。さっき僕の後ろから声が聞こえたんだけど…聞こえなかった?」

 僕はこの中では一番耳がいい、ウサミミの冨美夜に聞く。


「聞こえなかったわよ…さっきの電話の音以外は…」


 一番後ろ。怖い。


☆☆☆


 待合室。


 廊下に非常に古い電話がある。指でまわすやつだ。


「ねえ。これ…線がぬけているわよ…」

 電話の後ろをみてネコミミの美夜子が言う。

 ぬけていた線を手にもち、みんなの方を見てふりかえる。

 僕は電話をみる。たしかに線はつながっていない。これだと音は出ない。


 ネコミミの美夜子の後ろにはキツネミミの智美がいて、智美の前にネコのしっぽがある。

 智美はネコのしっぽの付け根から先端にかけて握ってさわり…そっとしごく。


「ぎゃあ」急にしっぽを触られて悲鳴をあげる美夜子。


「何するのよ…」ネコミミの美夜子はしっぽを自分の体にまきつける。


「そういうの禁止。だめって言ったよね…悪霊が来るわよ…」幼馴染の美佐。


「ごめん」キツネミミの智美が言う。


「ほらあそこ…」幼馴染の美佐が廊下を指さす。誰もいない廊下。

 僕は懐中電灯を廊下へと向ける。

 もちろん誰もいない。誰かがいたらみんな脱兎のごとく逃げ出すはず。


「なんだよ…」僕は美佐に聞く。


「地縛霊があそこに2体…」幼馴染の美佐がみなに言う。


「はいはい…そういうの禁止って自分で言っていたじゃない…

さてと次はどうする? 上の階へと行く?」


「ねえ。はやいとこ。終わらせて民宿へ帰ろう…」僕は怖くなって言った。


「何。まだ始まったばかりじゃない… 何もない部屋から声が聞こえるとか、誰もいない部屋で物がかってに落ちるとか…鏡に知らない人影が写るとかないじゃない…」

 ウサミミの冨美夜がカメラをかまえて言う。


「怖くないの?」


「まあ。ちょっと怖いけど…でもなんか寒くない?」

 ネコミミの美夜子が言い、それに続けてキツネミミの智美が「あたしもなんか寒い…」


「そんなふかふかのしっぽあるのに?」僕は言う。


幼馴染の美佐がかまわず「行きましょ。2階に手術室があるから…

懐中電灯で前を照らしてくれる?」

 美佐がネコミミの美夜子に言う。


「うん」ネコミミの美夜子と幼馴染の美佐が歩き出す。


智美が「あ。まって…」

 置いていかれるのはいやだ。


☆☆☆


 手術室の前。


 ドアは半開きになっていた。

 美夜子がドアをさらに開けて中に入る。


 誰もいないはずの手術室。

 オペ用の明かりが頭上に不気味に目にうつる。

 電気はきていないので、ガラスの明かり部分が海中電灯の光に反射する。


 懐中電灯の明かりでオペ用の明かりを照らしていたキツネミミの智美が「ぎゃー」と悲鳴をあげる。


「何よ…びっくりするわね…」ウサミミの冨美夜がミミをピンと立てて智美を見る。


「あそこに…あっ」ステンレス製の戸棚。戸棚に映っている自分たちの姿。

 そしてステンレスの戸棚に反射して映っている智美の太いしっぽ。


 にやにやして「なーに。あんた。あのステンレスに映った自分の太いしっぽ見てびっくりしたのぉ?

ねえ」とネコミミの美夜子が智美の肩をゆさぶる。

「なにそれ…じぶんのしっぽにびっくりするなんて…」ウサミミの冨美夜もキツネミミの智美にうりうりする。

 僕もキツネミミの智美のしっぽにさわる。


 幼馴染の美佐だけ、ちょっと離れたところからあきれ顔でみている。


 僕たちは手術室のもっと奥のほうまで見ていくことにした。


 奥には戸棚や台があり、台の上には瓶が置いてあり、中身は変色した液体が入っていた。


 僕の後ろを歩いているネコミミの美夜子。くるりと振り返る。


 がちゃん。

「ぎゃー」その音にびっくりしてネコミミの美夜子が悲鳴をあげる。


「なんだ?」僕は懐中電灯で美夜子を照らし、床に落ちた瓶をみる。


「さわっていないのに急に瓶が落ちたのよ」美夜子が言う。


「お前の後ろに誰かいるぞ…」僕は後ろを照らしながら言う。


「ぎゃー」ネコミミの美夜子が悲鳴をあげて、僕に抱きついてくる。


「ねえ。あんたのしっぽ。しっぽで台の上の瓶を落としたんじゃない?」

 キツネミミの智美が言う。


「へ?」ネコミミの美夜子が後ろを見る。


「お前も…智美とおんなじだな…自分のしっぽぐらい自分で管理しろよ…」


「びっくりしただけだもん…」

 ネコミミの美夜子は僕から離れる。


☆☆☆


 みんな。手術室から出る。


「さらに上の階に病室があるから…」幼馴染の美佐は隣にネコミミの美夜子が来るのを待ち、階段へと進む。


 まっくらな病院内。

 非常灯だけが緑色で廊下を照らしている。


 足音。


 静かな病院内を歩く。


 病室。

 くちはてているが…病室だとわかる。


 ベッドはある。


 マットレスもくちはてているが、ちゃんとある。


 ウサミミの冨美夜はくちはてたベッドにこしかけてみる。


 ぎしぎし言う。


 僕はキツネミミの智美の方を見る。

「ねえ。あそこだけカーテンで仕切られているけど…中にだれかいたりして…」

 指さす智美。


「いたらこわいよ…」

 僕はキツネミミの智美と一緒に奥まですすみ、カーテンに手をかける。


 どん。

「ぎゃー」後ろからいきなり大きい音がしてびっくりする智美。

 智美のキツネしっぽがびっくりして太くなっている。


「ごめん。ベッド壊しちゃった」ウサミミの冨美夜が腰かけていたベッドが壊れ、フレームが折れていた。


「何やっているのよ…もう…」

 後ろを振り返っていた智美。


 奥の一角だけ仕切られているカーテンに手をかけたままだ。


 そしてキツネミミの智美はカーテンをあけた。


 ベッドの上。誰かいた。

「ぎゃー」キツネミミの智美が悲鳴をあげる。

「うぎゃー」僕もいるはずのない人影を見て悲鳴をあげる。


 でもよくみると…

 ネコミミの美夜子がベッドの上に寝ていた。


「てへっ。びっくりした? 後ろを見ているうちにこっそり下から仕切りのカーテンの中にもぐりこんだの。開けてくれないとどうしようと思ってた」


「なんだよ…」

 僕とキツネミミの智美は安堵した。


「こら。ふざけていると悪霊が来て連れていかれるわよ…」幼馴染の美佐がいう。


「ごめん」

 みんな何かしらふざけているが、幼馴染の美佐だけ真面目にしている。


「でましょ。何部屋かの病室をまわってから調理室へ行って。それから病院を出ましょ」


☆☆☆


 別の病室へと行く。


「ねえ。あそこのベッド。あそこだけ布団がかけられているわよ…そして膨らんでない?」


 懐中電灯で照らしたベッド。真ん中がふくらんでいる。


「ほんとだ。誰かいたりして…」


 ウサミミの冨美夜が「あんた開けてみて…この中で唯一の男でしょ」

 と言う。


「えー」僕が言うが…ふとんに手をかける。


 そして僕は目を閉じて布団をあけた。

「ぎゃー」

「ぎゃー」

「ぎゃー」

 3人の悲鳴が聞こえる。僕は目をあける。

「ぎゃー」悲鳴をあげる。


 そこには見たことがない人。老人がいた。


 で。「何だよ…お前たち4人で肝試しか?」

 ベッドの上にいた人が言う。


「へ?」僕はよくみる。


「あ。あなたは幽霊ではないの?」


「はっはっは。わしは廃墟マニアだ。写真撮影をしている… 今日はこの部屋に泊まろうと思ってな…夜中に写真を撮るのだよ… 夜1時ぐらいに…」


「なっなあんだ…」

 僕はほっとする。


「ね。ねえ怖くないの?」


廃墟マニアのおじさんが言う「はっはっは。もう慣れっこだ…ほらあそこに…うっすらと人が立ってるぞ…」

 後ろを指さすおじさん。


 幼馴染の美佐のほうを指さす。


 みんな後ろを見る。

「なあんだ。誰もいないじゃない」

「ほんと…」


「ところでお前たちはどこに泊まっているんだ?」


「あ。民宿です」


「そうか… もう帰ったほうがいいぞ…外は暗いし…それになんだか寒くなってきたな…

寒くなる季節ではないのに…」

 廃墟マニアのおじさんが言う。


「わかりました。おじゃましました」

 僕は廃墟マニアのおじさんに言い、病院を後にすることにした。


 階段を下りる。


 そして病院からでる。


「何もなかったわね。幽霊を見たりとか」


「ねえ。心霊しゃしんとかは?」

 キツネミミの智美がウサミミの冨美夜に聞く。


「どうだろうね。民宿へ帰ってから調べる?それとも明日の朝調べる?」


「夜だからこわいわね。ところで…冨美夜と智美、美佐は同じ部屋で寝るんだけど…あんただけ隣の部屋で1人だけね」ネコミミの美夜子が言う。


「えー」男は1人だけ。


「怖い夜過ごすのね…夜中あたし達の部屋へと忍び込んだらだめよ…

言いふらすから…」


「えー」


 みんな会話しながら民宿へと帰る。


 次の日。


 朝。


 僕は怖くてなかなか寝付けなかった。


 朝日を見てほっとした。


 僕は隣の部屋から声が聞こえてきているのを聞いてノックして入る。


「起きたか? 怖かったぞ… ところで美佐は?」

 僕はネコミミっ子、ウサミミっ子、キツネミミっ子に聞く。


「書置きがあって、手伝いで山へ山菜とりにいくと言ってた」


「そう… おばさんも一緒だから宿泊代はレジの前に置いていってと、書いてあった。

それと朝食は出来ていて調理場の冷蔵庫の中にあるって…」


「そうか…」


☆☆☆


 民宿の戸締りはと聞くと、ネコミミの美夜子が「いいんじゃない? 誰も来ないし…」と言った。


 幼馴染の美佐はまだ手伝いがあるから、一緒には帰らない。


 駅へと向かう道。途中でおじさんと会った。病院の廃墟の中であった廃墟マニア。

「こんにちは」

「こんにちは」

「こんにちは」


「おお。君たちか」おじさんはバックとカメラを肩からかけていた。


「僕たちで朝。病院の中で会ったおじさんが幽霊だったんじゃないかと話していたところでした」

 みんなおじさんを白昼の外で見てほっとする。


「はっはっは。そうかそうか…ところでお前さんたちは駅から列車で帰るのか?」


「そうです」


「私は駅の駐車場に車を停めているんだ。途中まで一緒に行こう」


 僕と一緒に歩く。


 途中。道路のわきに人の服のようなものがちらっと見えた気がした。


 気のせいか。


 僕は気にせず進む。


☆☆☆


 そして…

 帰宅してから次の日。青ざめた顔のウサミミの冨美夜が家を訪ねてきた。


「なんだ。どうした?幽霊を見たような顔をして…」


「写真。幼馴染の美佐の足がうっすらと透けているの…これも…これも…」

 ウサミミの冨美夜が撮影していた写真。

 どれもそうだった。


 そして…電話がなった。

 母が出て…電話を終えてこういった。


 幼馴染の美佐ちゃん。亡くなったんだって。と。

「え?」僕は母を見た。


「ほら。えーとあんたたちが民宿へ行った日。その前に美佐ちゃんが先に田舎へと行ったわよね。

その民宿へ行く途中に、田んぼのあぜ道で空き缶に足をとられて足を踏み外したらしくて、道と田んぼの間の溝に落ちてしまったみたいなの…運悪く…倒れたところ…頭に大きな石があたってそのまま亡くなってしまったみたいなの…それから今日まで見つからなくて…田んぼの所有者が溝の中に倒れている美佐ちゃんを見つけてね…」


 と…

 変だ。


 田舎で民宿についてから幼馴染の美佐と一緒にすごしていた。

 美佐ちゃんは僕たちより前に田舎へ行ったから…僕たちと過ごしていた美佐は何と思った。


 そして…

「ね。ねえ。あたし達。何かと手を握ったりしっぽに触ったりしてたでしょ。思い出したの…

あたし達だれとも幼馴染の美佐ちゃんの体に触れていないって…」


「そういえば…たしかに…」

 懐中電灯も持ってなかった。

 ネコミミの美夜子に前を照らしてもらってた。


 僕はビデオカメラの映像を再生した。

 幼馴染の美佐だけ映像がぼんやりしているところや足がすけているように見えているものばかり。


 それに…ビデオカメラには映像だけではなく音も入っているはずだった。幼馴染の美佐の声だけ入っていなかった。


 それに廃病院の中。廃墟マニアのおじさんが4人と言ったり、美佐のほうを指さして『うっすらと人が立ってる』と言っていたのを思い出した。


 きっと美佐は僕たちと民宿で一緒に時を過ごしたかったんだろうと思った。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ