神の子?
ふと私は。目を開ける。だが、そこには何も無く、ただ、暗闇の中にいる私。その暗闇が私を恐怖に陥れる。自分の体さえも認識できておらず、意思はあるが、状況が把握しきれていない。分かっていることは、私が意志を持っているだけ。ただ、それだけだった。
突然、私は急に恐怖を覚えた。
(お願い!ここから出して!もう、こんな所にいるのは嫌!)
体が思うように動かない。
そして、暗闇の中で突如、ひとつの光が見えた。
(早くあそこに行かないと!こんな所にもう居たくない!)
そして、何かが私を掴んで光の元へ引き摺り込む。だが、掴まれた手には恐怖を覚えなかった。というよりも、とても安堵した。
そして、
「オギャア!オギャア!」
(???)
違和感しかなかった。
「奥様!旦那様!おめでとうございます!元気なお嬢様ですよ!」
「はあ。はあ。・・う、産まれたのね。」
「セリー。ああ!産まれたよ!可愛い可愛い、俺達の娘だよ!」
そこには、母親らしき人と父親らしき人。
(もしかして、私転生しちゃったの!?)
「ほんとに可愛い。この子、髪の毛はあなたにそっくりね。」
「いやいや、顔はセリーと同じでとても美人だよ!」
ドタドタと廊下からなにか来るような音がして、扉をバタン!と開ける音がした。
「とーさま!かーさま!僕の妹が生まれたってほんと?」
「ああ!ホントだよカリス!可愛いだろ?」
「可愛い!さすが!ぼくの妹だね!」
そう言って微笑む兄らしき人。
そして、泣き続けている私。
「オギャア!オギャア!」
ここは何だかとても安心する。母の隣で眠るのは何年ぶりだろうか。いや、新しい生を受けてきたから初めてなのか?まあ、とりあえず私は新しい家族と認識され、私も3人を私の家族と認識したのである。
ここは、ティグリーナ王国の端っこである、エリアル領。私はそこの領主である、オベイル・アンネ・エリアル公爵の娘、ラフィエル・アンネ・エリアル。この国の5大公爵家の1つであるが、その中でも特に影が薄い。逆に嬉しい限りだ。そして、ここ、エリアル領は農作物が豊富でこの国1番の食料庫である。そのため、他国との貿易が盛んだ。
「とーさまー!かーさまー!」
現在、私が産まれてからあれから5年経ち、とてもゆっくりと過している。
「ラフィー!おいで!」
父が私を思いっきり抱きしめる。
そして、その様子を眺める母。
「こらこら、あなた。ラフィーが死んでしまうわよ。」
「んんーんん!んんんんー!(おとーさま!離してー!)」
「ごめんよ!ラフィー。」
ふうと息をつき、ようやく呼吸ができることに安堵した。それと同時に、父への苛立ちが激しさを増した。
「もう!とーさま!軽いハグだけでいいじゃないですか!!なんでいつもいつも思いっきり抱き締めるんですか!殺す気ですか!!」
「ご、ごめんよ。ラフィー。ほんとに悪かった。でも、こんなに可愛いラフィーがとーさまのとこに全力で走ってくる姿を見て、可愛くないと思える奴がいるか!」
逆ギレしないでよとーさま。元はと言えばとーさまが悪いのですよ。
「あれ?にーさまは?」
「もう少しで来るよ。」
すると、誰かが私の背中をガバッと覆った。
「にーさま!」
「やあ!我が愛しのラフィー。今日も相変わらず可愛いね。」
「そお?でも、にーさまもカッコイイですよ!」
きゅ〜うんとした顔をして、兄はこちらを見つめた。そして、父と同じく私を抱きしめた。だが、兄は私を大切に思っているのか、父よりは優しく抱きしめられた。
「ほんっと可愛い!もう、我が家の家宝だよ!ね、父様!」
「いや、国宝級だろ?この可愛さ。」
「いいえ。神の子です!わたくしたちの子は!」
(同意!)
そして父と母と兄は親指を立ててグッドの合図をした。その光景を見ていた私は大きな溜息を心の中でしたが、それが少し漏れたのか、現実では私は少し溜息を着いた。我が家族ながら、シスコン親バカを拗らせてしまったのである。
「私を勝手に神の子など言わないでください!そんなに壮大にしなくても、私はちゃんとみなさまの家族ですよ?!」
「「「反論してるのも、可愛い!!!」」」
ハモった。もう、この家族は。
周りのメイドからは微笑ましいという声も聞こえれば、表情も柔らかくなっている。いつもの事だとため息をついているものもいれば、安心している人も見受けられる。
でも、嬉しい気持ちもある。溜息をつきつつ、私は幸せを感じているのである。そして私は祈った。この世界で、この家族と共に幸せに暮らしたいと。私たちの未来が悲しみで溢れないようにと。ただ、祈った。
ラフィーの兄である、カリスことカリュシード・アンネ・エリアルはラフィーの3つ上である。僕の顔立ちは父そっくりでよく、父と間違えられる。そんな僕とラフィーは庭でピクニックもどきを堪能していた。
「お?ラフィー、何をしているんだい?」
「見て見て!にーさま!お花の冠!」
(可愛いよラフィー!天使か!)
ラフィーはそれを僕の頭の上に乗せる。
「えへへ!お花の王子様の出来上がり!」
ラフィーは天使のような笑顔で僕の方を見る。
(!!!前言撤回。女神だ。)
「ラフィー。ありがとう。」
下手をすれば、ラフィーに殺されてしまうかもしれない。でも、それもありだと思ってしまった。
(そろそろ昼時か。)
「ラフィー!食事にしよう!」
「はーい」
今日のランチはサンドイッチ。ラフィーはピクニックをする時は、これが食べたいと言う。だが、初めて外で過ごした時にはこのサンドイッチはとてもよく合うのだなと驚いた。
「にーさまー!」
ラフィーがお花を持って、走ってこちらに向かってくる。
「転ぶと危ないよー!」
そして、ラフィーが足を踏み外した。
「うわっ!」
「ラフィー!!」
ラフィーは転んだ。と思っていた。
「大丈夫か?ラフィー?!!!」
だが、そこに立っていたのは、
転んだはずのラフィーだった。
だが、怪我も見当たらなければ、花も潰れていない。何事も無かったようにラフィーは言った。
「にーさま?どーしたのです?」
「い、いや!なんでもないよ。いこうか。」
「はい!」
そして何事も無かったようにラフィーは振る舞う。その様子に不自然さは感じられなかったのだが、とその時はそう思うだけであった。
(気の所為か。)
『間一髪だったね。』
『うん。そうみたい。』




