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4 妹

 冬休みが明け、学校生活が再び始まった。

 いつも通りの生活の中に、小詠と過ごす時間が今までよりも更に多くなった。


 一月十二日、月曜日。小詠は弓道部に所属していて、火木土曜と練習がある。

 僕は部活に入っていないので、こうやって二人で帰宅できるのは週に三回あるかないかだった。

 もちろん僕はできるだけ小詠の事を待っていようとしたのだが、小詠から無理はしなくていいと言われてしまっていた。

「ねえ茂樹、今日は茂樹の家に行ってもいい」

「もちろんだよ」

 付き合い始めてから分かった事だが、僕と小詠の家は自転車で十分程の距離しかない。

 そのため、学校帰りによく互いの家に行っていた。

 学校最寄りの×駅で電車に乗って三つ先の◎◎◎駅で降りると、僕の家まで歩いて五分である。

 僕の家はよくある二階建ての一軒家だ。そこに四人で暮らしていた。

 ○×運輸に勤める親父は長距離トラック運転手のためよく家を開けているが、たまに帰ってきてはどこかのお土産を置いて、まだ三十代前半の母とどこかに行ってしまう。多分デートだろう。

 そんな二人から産まれた僕と妹の簾迦(れんか)は、二人だけでも自立した生活を送れるようになっていた。

 そして今日も簾迦しか家にいないのだろう。

「ただいま」

「お邪魔します」

 そう言って中に入ると、予想通り簾迦が出迎えてくれた。

 中学二年生の簾迦は、母親譲りの茶髪を短く切り、父親譲りの威勢の良さを全面に出していた。

「おっ帰り〜、お兄ちゃん、お姉ちゃん」

 簾迦は小詠の事をお姉ちゃんと呼ぶ。

「親父たちは?」

「うんと、またデートみたい。そんな事よりさ、早く上がって。ケーキがあるの」

 そう言って簾迦はリビングに向かった。

 僕と小詠もそれに続く。

 リビングのテーブルの上には、カットされたフルーツケーキが三切れ置かれていた。

 いかにも手作り感溢れたそのケーキを前に、僕はもしやと思い簾迦に聞く。

「あのさ簾迦、これって、もしかして」

 キッチンで飲み物の準備をしていた簾迦は振り向かずに答える。

「もちろん、私が作ったに決まってるでしょ。お兄ちゃんもお姉ちゃんも座ってていいからね。ジュース持ってくから」

 僕と小詠はとにかく椅子に座った。

 そして目の前のケーキを前に、唾を飲み込む。

 さっき、二人だけでも自立した生活ができると書いたが、これは二人揃って生活ができるという事である。

 つまり僕にも簾迦にも苦手分野があるのだ。

 そして簾迦の場合、それは料理である。

 以前、小詠も一緒に三人で夕食を食べた事があった。

 その時はいつも以上に簾迦の自信があったので僕も警戒を怠ってしまい、そのミートソーススパゲティをなんの躊躇いもなく口にしてしまった。

 その結果、小詠は倒れてしまい、なんとか耐えた僕が背負って家まで送ったのだ。

 さすがにケーキは大丈夫だろうとは思うのだが、茹でただけのスパゲティでああなったのだ。今回も油断はできなかった。

 僕は少しだけスプーンで掬い取り、恐る恐る口に運んだ。

「どう?」

 小詠が心配そうに声をかけてきた。

「さすがに、ケーキは大丈夫、だよね?」

 飲み物を持ってきた簾迦も不安そうに聞いてきた。

 僅かなケーキを噛み締めながら、味に異常が無い事を確認して頷いた。

「大丈夫。これは食べられる」

「良かった〜」

 僕の言葉を聞いて、二人は食べ始めた。

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