23 相談
ジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷で大騒ぎをしたり、そして最後には観覧車でゆったりとした時間を過ごし、その一日は過ぎていった。
翌日からメビウスの輪を模したキーホルダーを鞄に付けて、小詠と一緒に登校するようになった。
新聞部が発行する新聞の五月号には『小詠&茂樹 復縁か!』などとトップ記事に書かれ、誕生日プレゼントを渡す小詠の写真が載っていたな。
未来の小詠からも電話が頻繁にかかってくるようになり、僕は意外と忙しい日々を送った。
体育祭や生徒会選挙、夏休みを過ぎると文化祭があり、そしてK市への修学旅行も終わってしまうと、僕が生きていられるのはあと一ヶ月程度になった。
「茂樹、どうしたの? 最近悲しそうな顔、するよね。私は大丈夫だから、秘密、話してもいいんだよ」
そう何回か小詠に言われたこともあった。
だけど、たとえ小詠が本当のことを知っていたとしても言えなかった。
心のどこかに、死なないかもしれないんだから間違っていた時に小詠を悲しませてしまわないように、と思っている自分がいた。
新聞部に相談に行った事もあった。
部長で三年生の谷崎潤一、青梅慰夢、そして一年生の蕨紅子の三人で構成されている新聞部は、テストでいい点数を取る方法から、僕が遭遇したような超自然的な現象までも相談にのってくれるのだ。
僕が部室に行くと、すでに来ることを予見していたかのように僕の座る椅子が用意されていた。
「狭山茂樹君、どうぞそこにお座り下さいです」
青梅のその指示に従い座ると、蕨が目の前のテーブルに紅茶を置いた。その脇には砂糖、ミルク、レモンまで用意されていた。
テーブルの端に置かれたノートパソコンの前に青梅が座ったのを確認した部長さんは、僕の向かい側に座った。微妙に斜めの位置に座った気がした。
「新聞部へようこそ。ここに来た、という事は入部希望か☆☆新聞についての意見か、でなければ相談だとは思うけど、君、狭山茂樹君は何のためにここに来たのかな」
部長さんは少し芝居染みた口調とジェスチャーで聞いてきた。
「僕は、えっと」
「仲村小詠さんとの進展状況なんかを教えてくれると、こちらとしては有り難いよ」
「そ、そうじゃなくってですね。えっと」
部長さんは、僕が言い淀みながらも続けようとするのを遮るかの様に口を開いた。
「無理に言う必要は無いよ。僕達新聞部はカウンセラーではないからね、助言しかできない」
「そう、ですよね」
何にがっかりしたのだろうか。
「ただ、一つだけ言える事がある。それは」
そこで部長さんは間を開けた。そしてもう一度言い直す。
「それは…………何だっけ、慰夢ちゃん」
「口が駄目なら紙とペン、です」
「そうだった。口が駄目なら紙とペン。そういう事だ。君はもうこれ以前にヒントをもらっているはずだよ」
「はぁ」
結局僕には、以前にもらったヒントが何なのか分からないまま、こうやって小詠に僕の事を伝えるために文字にしています。




