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18 再びの屋上

 4月28日火曜日。

 小詠から告白を受け、付き合い始めてもう半年程にもなる。だけど、ここ一ヶ月は一度も顔を合わせていなかった。

 そして今日、下駄箱に手紙が一通入っていた。駅前で一緒になった啄朗は、それを見ても一切驚かなかったので何か知っているのだろう。

 だが、聞いても答えてはくれなかった。


 昼休み。

 いつかのように屋上にやって来るとそこには昼食を摂る生徒で一杯だった。

 だがそんな状態でも小詠を見付けるのは造作もない事だ。腰まで伸びた黒髪とその容姿は特徴的である。

 案の定、すぐに小詠は見付けられた。昼食を摂っていたわけでは無いようで、その腕には一つの紙袋が抱かれていた。

 周りの生徒が気を使ったのか僕達の間に障害物がなくなった。それと共に屋上に静寂が訪れる。

「茂樹」

 小詠のよく通る声は、学校中に響きわたったように感じられた。

 カメラのシャッターが切られた気もしたが、そんな事はどうでもよかった。ただ、小詠にだけ集中していた。

 僕がまばたきをすると、それを待っていたかのように小詠が駆けてきた。

 5メートル、4メートル、3メートル、2メートル、1メートル。

 そして。

 僕は一歩下がった。

 小詠はハッとして僕を見た。

 その顔はどこか寂しそうだったが、僕は何も出来ずにいた。

 沈黙が辺りを支配する。

 1秒、

 2秒、

 3秒、

 4秒、

 5秒。

 と唐突に、僕の背中が押された。

 すると僕と小詠の距離は詰まり、小詠はうつむいた。

「小詠」

 僕は声をかけて話を始めようとしたが、言葉が続かない。

 小詠は顔を上げて、僕を見ていた。

 シャッターを切る音が屋上に響く。

 僕は意を決して口を開いた。

「あ――」

「これ、誕生日プレゼントだよ」

 遮られた事に、そして遮ったその言葉に、僕の動きが止まった。

 腕に紙袋が押し付けられる。

「またね」

 そう言い残して、小詠は屋上を後にした。


 紙袋を持って、教室に戻る。

 そこには待ちかねたように、啄朗と百桃がいた。

「んで、どうだった?」

 いつにも増して真剣な啄朗に聞かれたが、僕は手に持った紙袋を前に掲げるに止めた。

「そうか。まあ、ある程度座って弁当食べるか」

 啄朗の言葉に百桃が突っ込む事はなかった。

 皆が僕の事を心配してくれている事を感じながら、一つ頷いた。

「うん」

 啄朗の対面に並べられた僕の机に掛った鞄から弁当を取り出し、そこに座っていつもより少し豪勢なその弁当を食べ始めた。

 そういえば今日は僕の誕生日だったんだな、と今更ながら思い出していた。


 その日は、それから小詠に会う事もなかった。多分小詠はサプライズとしてこの一ヶ月僕に近付かないで今日久し振りに会ったのだろう。だがそんな小詠にどう対応するべきか迷っていた僕には、これは好都合だった。しかも翌日は祝日だ。

 紙袋の中身も気になるが、この下校時には小詠にどう接するかが一番気にかかっていた。

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