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17 沈黙

 気持ちがどこかにいったまま僕は小詠との旅行を楽しんだ。僕自身としては楽しんだ記憶は無く、いつの間にか七日間が終わってしまったように感じた。

 僕はその間ずっと、一日目の夜にあった小詠からの電話の内容だけを考え続けていた。未来の小詠に僕は次のクリスマスに死ぬって言われたんだ。酔っていたとはいえ、冗談とも思えなかった。

 あれから僕の携帯は電源が切られたままだった。

 未来の小詠の声が聞きたくなかった。

 だけど何でか携帯は手元に常に置いたままだった。


 死ぬと言われた事。それは僕にとって衝撃的であり、致命的であり、また幻想的でもあった。

 小詠がそんな事を言ってくる、そして僕が死ぬという事に衝撃を受け、その内容は実際に命に関わるものであり、更に未来から電話を掛けられている事と同様、信じられない内容でもあった。

 そしてその事を考えているうちに、生きるというやる気は()がれていった。

 重病患者に対してよく使われる“余命”ではない。はっきりと次のクリスマスに死ぬと言われたんだ。しかもそれは事実なのだろうから。

 何をしたとしても結局は次のクリスマスまで。その日を過ぎれば僕は何もできなくなる。あるいはやっていた事が無駄になる。

 無駄になるのだったら、今から何かをやったとしても意味がないだろう、とその時は考えた。だから、やる気が殺がれ、生きる事がいやになっていった。

 それでも自殺をしようとしなかったのは、どこか信じ切れていなかったからなのか、それとも自殺をする勇気すら湧いてこなかったからだろうか。

 まあどちらにしてもこの頃が一番辛かった。そしてまた皆に迷惑をかけたと思っている。


 新学期が始まり、いつの間にか僕の周りは一年前と同じような状況になっていた。

 小詠はなぜか僕の所には来ず、啄朗や百桃に聞いても曖昧な返事をするばかりだった。

 僕はそれをいい事だと捉えた。僕はもう死ぬんだから関わらない方が幸せだろう、と。

 だから小詠の家に行こうともせず、両親や簾迦にその事でいじられても薄い反応しか示せなかった。


 そのまま時間だけが過ぎ、僕はただただ何も考えずに日々を送っていた。

 どうせ死ぬんだからというあきらめと少しの恐怖しかなく、元々部活動に入っていなかった事もあり学校で喋る事が少なくなった。

 啄朗と百桃は心配そうに何度も話し掛け、理由を尋ねてきたりもしたが、自分が死ぬなんていう事を友達に言えるはずがなかった。ましてや家族に言えるはずもない。

 僕は完全に自分の中だけでこの問題を解決させようとしてしまったのだった。


 そして四月も終わりかけたある日、小詠からほぼ一ヶ月ぶりのコンタクトがあった。

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