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16 宣告

 ホテルに戻った。

 夕食を部屋まで持ってきてもらい、リビングで全員揃って食べた。

 いつの間にか、エレベーターから一番離れた所にある部屋が消えていた。代わりにノートパソコンが一台置かれ、淡い色で統一された小さなリラクゼーションスペースになっている。

 僕の部屋にはしっかりと僕と小詠の荷物があったので、階を違えた訳ではなさそうだった。


 夕食の後、広大なお風呂や星満天の夜空の下で露天風呂に入った。

 そしてスイートルームに戻ってきた。まだエレベーターで32と書かれたボタンを押すのに多少の抵抗があったが。

 ここのセキュリティは基本的に専任の警備員によって守られている。その人が目視で人を判別して鍵を開けるのだ。

 部屋にはまだ誰も帰ってきていないようで、照明が僕に反応して点灯する。

 たった一人でここにいると、さっきまでの賑やかさが恋しくなる。

 ソファーに座りこの広い部屋を眺めていた時だった。

 電子的な音が微かに聞こえた。

 僕は立ち上がる。僕と小詠の部屋に入ると、その音ははっきりと聞こえてきた。

 そこでようやく自分の携帯が鳴っているのだと気付き、急いで駆け寄る。

 ベッドの上に無造作に置かれた鞄から携帯を取り出して、通話ボタンを押した。

「もしもし」

「もひもひ〜、うふふふ」

 誰の声か分からなかった。相手を事前に確認するんだった。

「茂樹〜? げんき〜?」

「小詠?」

「そだよ〜。最近電話しなくてごめーん」

「いいよ、それは。でも小詠、酔ってる?」

「無論だよー茂樹。だいがきのともだひのミサだよー」

 大学の友達、と言ったのだろうか。

 見えない友達を紹介されても。と一人心の中だけで愚痴った。それと、小詠は悪酔いをするとも。

「でさー、茂樹におくるだーいじにゃお知らせよー」

「何?」

「茂樹って、もういないのんよね〜」

 何気なく発せられた言葉を理解するのには、しばらく時間がかかった。

 その間も、小詠は笑い続け、話し続ける。

「にゃんだよねー、ミサ。次のクリスマスで、茂樹、死んじゃ・・・うっ、ぐす」

 小詠みが泣いている。

 泣いている。

 慰めないと。

 だけど、言葉が出てこない。

 携帯の向こうから小詠でない声で、『大丈夫?』とか『ほらほら泣かないで』とか聞こえていたはずだが、僕は気にすることができなかった。


 いつの間にか携帯の電源が切れていて、僕は一人で部屋にいた。

 長いこと動かなかったせいか薄暗くなっていた部屋はどことなく涼しく感じる。

 扉の向こうから小詠たちの話声が聞こえてきたが、僕にはそこに向かう勇気は無かった。

 携帯を鞄にしまうと、僕の動きを感知したのか照明が点灯する。照明はそのままにして、誰にも気付かれることなくベットに入って横になった。

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