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15 スイートルーム

 エレベーターに表示されている階数は止まることなくどんどん増加している。

 このまま本当に最上階に行ってもいいものかと無駄に悩んでいると、いつの間にか三十二階に着いたようで扉が音もなく開かれた。


 扉の向こうに現れた部屋は、田奈浜姉妹と青梅慰夢以外の全員を唖然とさせた。

 床一面に敷き詰められた赤いカーペット。今見えている部屋はリビングのようで、テーブルや椅子や棚はやや古さを感じさせるが、充分使い込まれたためか部屋の雰囲気を厳かなものにしていた。それでいて随所に刻まれた装飾や天井のライト、そして窓から見える景色は気持ちを落ち着かせてくれる。

 エレベーターの扉が閉まりかけた所で、部屋に入らなければと急いで移動した。

 扉は閉まり、何かカチリと音がしてからエレベーターが下りて行った。

 それからしばらくの時間は、部屋の探検の時間にあてられた。

 中央はリビングとなっており、エレベーターは中央よりも外れた所にある。そこからリビングを見たとき、正面から左前方までは外の風景が見えるように壁のない空間になっている。そこには薄型の大型液晶テレビが置かれ、オーディオシステムやプロジェクターもある。右手側には部屋が八つ並び、それぞれが四人ほどの寝泊まりできる部屋になっている。左側にはバーがあり、奥の棚に幾つもの瓶が並べられ、さらにはキッチンもある。左の手前にはバスルームがあり、その先には露店風呂も備わっている。

 一泊するだけでも何十万と掛かりそうな部屋に六泊もするのだ。それも格安で。確かホテルの食事も込めた宿泊代は合わせて一万円強だったと記憶している。田奈浜姉妹には本当に感謝している。

 部屋にはエレベーターに近い方から、田奈浜姉妹、僕と小詠、僕の家族三人、小詠みの両親、百桃と新庄、麻木と元村と青梅、啄朗と紺野と横下の七部屋に分かれて泊まることになり、一番奥の一部屋が余った。


 昼食を摂った後、全員で有名所の卍城に向かった。

 卍城はその昔、ここO県がまだ日本国になかったころ、ここを統治していた王様が住んでいた城である。

 造りは石と木と瓦を基本として、多くの門を通り抜けた先にある広々とした広場を廻るように主要な建物が配置されている。

 更に奥には、まだ発掘途中なのか土が剥き出しになった場所があった。

 建物の内部は一見日本古来の様式に見えたが、細部を観察すると大陸寄りの様式である事が分かった。

 いつの間にか小詠しか側にいなかったが、特にそれを気にする事なく建物を巡り、途中の茶屋でアイスクリームを買い近くの木の下でそれを食べた。


 それからしばらく小詠と話していると、啄朗たち10人がやってきた。

「あれ、親父たちは?」

 僕が聞くと、百桃が答えてくれた。

「疲れたから先にバスに戻ってるって」

 そう、と僕は言った。

 木陰で休むことしばし、夕刻になり始めたのでバスに戻り、そしてホテルに戻った。

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