11 告白
なぜこんな事になったのだろうか。
目の前には一組の男女。しかも告白の真っ最中だった。
僕は手に広げた文庫本を読む振りをしながら、ちらちらと二人を見ていた。
僕が図書室に来て三十分ほど経った頃だ。
中に一人の女子が入ってきた。
彼女はキョロキョロと図書室を見回し、さっきから座っていた男子を見付けるとそこに向かっていった。
それに気付いた彼は、立ち上がると彼女の前に立った。
そしてこう言ったのだ。たった一言。
「好きだ」
と。
そして今に到る。
急に泣き出した彼女の背中を彼が優しく撫でている。
彼の方はどこかで見た顔だなと思っていると、彼女が泣き顔を彼に向けた。
「わたひゃっ、も」
折角の場面でしゃっくりをしてしまった彼女。
だが彼はそんな事を気にする事なく、ただただ彼女を抱き締めていた。
僕はその光景をただ見ていて、二人が去った後もその場にしばらく座っていた。呆けていた。
なぜか。
一つ目の理由は、その告白をしたのが天才三人組の一人、高橋原琉だったから。
彼は青梅と同じく天才と呼ばれている。試験のとき以外は図書室にいるらしい、無口な外国育ちの一年生。天才といわれるのは授業に出ていないのにテストや模試では必ず全教科満点を取るからだ。ちなみに、この年の末に噂された生徒七不思議の内の一人でもある。
そしてもう一つの理由。それは、あの二人を見ていると自分と小詠がかぶって見えたからだ。
この時はまだ、小詠が僕と付き合うなんて思いもしていなかった。
六月に出会ってから多少意識したことはあったが、それでもどこか雲の上の人だった。
ミス☆☆高コンテストの中間発表では小詠は二位だった。これを見てやはり小詠と僕は似合わないと感じた。
そうにも拘らず二人に僕と小詠の姿がかぶった時は、有り得ない、とすぐにその考えを振り払ったのだ。だが、本を読もうとすると僕が小詠に告白している情景が浮かんできてしまい、自分ではどうしようもできなくなっていた。
それだけ自分が小詠のことを気にしているんだと実感できた。
エンディングセレモニー。
文化祭実行委員会長の日高春見が壇上で挨拶をして、次に校長先生が短い挨拶をして。文化祭の各企画賞の授与の後、一喜一憂する生徒たちが落ち着いた頃に合わせて、ミス☆☆高コンテストの最終結果発表が行われた。
推薦・自薦で出場した生徒が壇上に上った。
出席番号順に、一年生の大橋遥燈、仲村小詠。二年生の江崎紗枝、桜岡桜、二瀬音黄。三年生の日高春見、山田七星の七名。
一人ずつ、賞品を取ったらどうするかなどを聞いていく。小詠は、まだ考えていません、って答えた。
そしてついに結果発表。
ドラムロールの後、三位から発表された。
「三位、日高春見」
「二位、仲村小詠」
「一位、桜岡桜」
大歓声の下、三人がそれぞれ文化祭実行委員会副会長の西園寺今日子から賞品を受け取った。




