心
「莉菜、そろそろ教室に戻らないとあーたんが怪しむんじゃないかな?」
私に頭をなでなでされている莉菜に私は言った。
この時間が続けばいいのにとは思うけど、あーたんに何を言われるか分からないしなー。
と思いながら莉菜の返事を待っていると莉菜が顔を上げて
「別に気にしなくてもいいんじゃないかしら?何か困ることでもあるの?」
と言われ私は一瞬返事に困ることになりそうになった。
「いや、別に困るとかはないけどなんとなく?みたいな」と私は答えると莉菜は
「そう。ならいいじゃない。でも時間も時間だしそろそろ教室に戻りましょう」
と言いつつ莉菜は私から離れた。
私は頷きながら莉菜の隣りを歩きながら、先ほど莉菜に言われた言葉を考えていた。
莉菜は堂々としているけど、私はなぜか堂々とすることができない。
「何で?これから莉菜と一緒にいる時間が増えて楽しくなるはずなのに、この不安は何なの?莉菜のことは大好き。恋愛として恋人になって欲しいし、莉菜もそれを望んでいるから最高なのに…」
私は心の中でそんなことを呟いていた。
教室に戻るとあーたんがスマホをいじりながら待っていた。私はあーたんの顔を見た時に、何が不安なのか分かった気がした。
「私最低な人間かもしれないわ」と言いながら私は自分の席に座った。
幸いにも、今の言葉はあーたんに聞こえていなかったらしくあーたんは
「おかー!どうしたの?何か元気なくない?桜さんと何かあった?」
と言われ私は
「んー。嬉しいこともあったりー。もう何が何だか分からないわー」
と私が言うとあーたんが考え込むようにしたあと
「絵莉、学校終わったらアネさんのとこにお茶しに行かない?私アネさんに連絡入れておくから」
私は「えっ?アネさんと連絡先交換してるの?お茶かぁー。うん。いいよー」
と言うとあーたんが「了解しやした」と言うので私は「よろしくー」と言いながら次の授業準備をした。
授業中は自分自身の気持ちについて考えていた。私は周りの目を気にしている。今までそんなこと気にもしてなかったのに急に。本当に私って最低な人間だなぁ。この気持ちのまま莉菜と過ごすのは無理だよな。今の私にそんな資格はない。
とノートに書いていた。
授業はあっという間に終わりあーたんが「よーし!アネさんのとこにお茶しに行こう!」と言いながら教室を出ようとしたので私も急いでカバンを取り「あーたんちょい待ってよー」とあーたんと教室を出ることに。
教室を出る瞬間「絵莉、また明日ね」と一言莉菜から声をかけてきて私は若干目をそらしながら「うん。また明日ね」と言いながら教室をでた。
隣りのあーたんは珍獣を見つけたかのような驚きの顔をしていたが、直ぐに元のあーたんの顔に戻っていたので変にツッコムことはしないでおこうと考えながら私とあーたんはアネさんのお店に向かった。
お店に着くとお店はクローズ表示になっていた。
私はあーたんに「お店クローズになっているよ?」と聞くとあーたんはなぜか誇らしげに
「私がお茶しましょーと連絡するときは私だけがお店に入れるシステムなのだ」と言ってきたので
「へー。そうなんだー。すごいねー」と完全棒読み状態で答えた。
あーたんは何か言いたげな目をしていたが何も言わずコンコンとお店のドアをノックし
「アネさーん、お邪魔しまーす」と言いながら入っていったので私も
「お邪魔しまーす」と言いながら入った。
お店の奥から「あら~。いらっしゃい。待ってたわよ~」と言いながらアネさんがでてきた。
アネさんを見るのは二回目だが、なぜだろうすごく安心する。
などと思っていたらアネさんが窓際の丸テーブルが設置されてる方でお茶を淹れながら「二人とも、こっちにいらっしゃい」と手招きするので、あーたんと私はアネさんのとこへ行き椅子に座った。
椅子はふかふかのソファーで眠くなりそうだなと思った。
アネさんが「で、今日はどうしたのかしら?絵莉ちゃんのお悩み相談と連絡がきたから、私心配よ?」と言うので私はあーたんの顔をみた。
あーたんが「いや、絵莉の様子がいつもと違うし元気ないしで心配になってさ」と言いながらアネさんが淹れてくれたレモンティーを一口飲みながら言った。
私は既に泣きそうになった。私のことこんなに心配してくれる友達がいるのに、それなのに私は…
私は泣くことを我慢しながらアネさんとあーたんに聞いてみることにした。
「アネさんとあーたんはさ、女の子同士の恋愛とかどう思う?」私は二人の顔を交互に見た。
二人とも静かに目を閉じたあと、ゆっくり目を開けた。
「絵莉ちゃん、悩みって恋愛のことだったのね。そうねぇ、私個人の意見としては全然良いんじゃないかしら?私自身がそうだしねぇ。でも世の中、それを受け入れてくれる人もいれば受け入れてくれない人もいる。だから気持ち次第じゃないかしら?」と言いながらレモンティーを一気飲みした。
私は「あーたんは?」と聞いてみると
「そんなのお互い好きになったら仕方ないじゃん?と言うより恋愛は男女じゃなきゃいけないってことじたいおかしいと私は思うけど?偏見?差別?そんなこと知ったことかって感じに私はなるよ」と言いながらレモンティーのおともであるクッキーをもぐもぐ食べていた。
私は二人の言葉を聞いた瞬間、悩んでいた自分がバカらしくなっていった。
なので二人にはちゃんと伝えようよ思い私は
「そっか。そうだよね。好きならいいじゃんね。周りがどう言おうが関係ない。二人ともありがとう。二人のおかげで私、もう不安になったりとかしない。二人にはちゃんと話すね。私、莉菜が大好きなの。恋愛として!!」
私は二人の顔を見てみた。二人とも笑みを浮かべながら
「そっか」と言いながら私の頭をなでなでしてきて私は今まで我慢していたであろう涙を沢山流した。