動き
家に着くと「遅い!引っ越しの荷物とかの片づけを手伝いなさいよ!」
とママに帰るなり早々一喝を入れられた私は苦笑いするしかなかった。
ゴメンなさいと言う気持ちもあるが、お小遣い交渉というミッションがあるのでこれ以上ママを怒らせない為にもちゃんとしなくてはと考え私は
「ただいま。遅くなってゴメンなさい。何手伝えばいいかな?」といたって普通のことを言った。
ママは金髪のロングヘアーをわしゃわしゃしながら
「とりあえず、この居間にあるダンボールを全部畳んでまとめてしばっておいてちょうだい。その後は絵莉、自分の部屋の荷物の片づけをしなさい。せっかく広い部屋を与えたんだから。10畳の部屋とか贅沢なんだから綺麗に使いなさいよ!」
と言われ私は黙々と居間にあるダンボールを片づけていった。
「ママー!終わったよー!他にもやることあるなら言ってねー」
と私が言うとママは驚いた顔をしながら、「絵莉って、やればできる子じゃない!ママ嬉しいわ!今日は特別にお小遣いあげちゃう!」と私を抱きしめながら言ってきたので私は「えっ?いいの?ありがどう。大事に使うね」と言いながら片手でガッツポーズを決めた。まさかこんなことがあるとは。
ママは財布から1万円を出して私にくれた。ママは神様だ。いや、そういう時だけこんな考えをするのはよくないよね。明日からはちゃんと家のお手伝いとかするようにしようと私は心に決めた。
「じゃ、後は自分の部屋を片付けなさい。ここはもう大丈夫だから」とママが言うので
「うん。わかった」と私は言いながら、新しい部屋に向かった。ドアを開けると大きい窓があり景色がとてもいい。緑もあるしビルもあるしで。
「さすが、超高級マンションの最上階だなー」と広い部屋で私は呟いた。部屋をぐるりと見回すと、机、でかい本棚兼アクセサリー置き、姿見、そしてダブルベット。
「よくばってダブルベットになんかしなければ良かったかな。でも寝ぞう悪いし、快適に眠れるからいいか」などとひとり言をぶつぶつ呟いていたことに気づいた。
私は制服のまま、ベットにダイブし仰向けになりながら大好きな莉菜のことを考えていた。
「はやく明日にならないかなー。買った香水つけて莉菜の反応みたいし」などとまたぶつぶつ呟いてるうちに私はどうやら寝てしまったらしくママに
「起きなさい!絵莉!学校遅刻よ!お弁当作っておいたから早く準備して行きなさい!」と言われ、私は数秒間ボーっとしながらスマホの時計を見て愕然とした。時計は9時30分を過ぎており、もう授業が始まっている時間であった。
そして何回も誰からか着信があったらしく確認してみるとあーたんからの連絡だった。
私は「マズイ!マズイ!マズイ!」と言いながら勢いよく起きて、シャワーを5分で浴びてカバンに弁当とメイク道具を入れ「ママ行ってきます!」と言いながら私は家のドアを閉めて「2日間連続で遅刻はシャレにならないよー!!」と大声で叫びながら学校に向かった。
学校に着いた時はちょうど担任の花咲先生の授業で、教室に入った時「橘!!今何時だと思っているんだ。遅刻だぞ!早く席に着け!」と言われ私は頭を下げながら席についた。
「絵莉ー。おっはー。何回も連絡したんだけど。何遅刻してんの?」
と顔を膨らませながらあーたんが言ってきた。
私は「本当にゴメン!あの後家に帰って手伝いとかして疲れて爆睡しちゃったみたいでさ」
とコソコソ話をしていたら、花咲先生が困った奴らだと言わんばかりの顔でこちらを見ていたので私たちは話すことを止めて、授業が終わるのを静かに待った。
朝に全力ダッシュをした私は午前中の授業を聞いてるフリをしながら見事爆睡していた。
爆睡していたせいか、いつの間にか昼休みになりあーたんと昼ご飯を食べながら私は莉菜がいないか確認した。
「だって今日はまだ1度も莉菜の顔を見ていないから、確認したくなるじゃん?」と内心で呟きながらクラスをぐるりと見て見るが、莉菜の姿はなかった。
「どこに行ったんだろ」と知らないうちにポツリと言っていたらしくあーたんが
「桜さんのこと?そういえば、知らないうちにいなくなったね。昼ご飯でも買いに行ってるんじゃない?」と言うので
「だね。あ、寝坊しても香水はつけてきているのだよ。いい香りだよね」
とあーたんに聞いてみるとあーたんは
「うん。いい香りだね。それよりも気になることがあるんだけどさ、絵莉メイクはどした?いや、ノーメイクの絵莉も綺麗な顔立ちで私は羨ましいけどメイクをしてない絵莉なんて絵莉じゃないよ?」
と言われ私は自分がノーメイクであることに気づき食べかけのから揚げをコロコロと床に落として言った。
あーたんは私の反応を見ながら「あちゃー。もしかして今まで気づいていなかった?」と言われ私はコクコク頷いた。
「ノーメイクで学校に登校したことなんて今までなかったのに。でも、今日はもういいやー。メイクする体力ないし」と私はため息をつきながらあーたんに言った。
あーたんは「ドンマイ!気にするんじゃないよー」
と言いながら私の頭を撫でてくれて私は「うんうん」と言いながらマッタリしていた時、校内のスピーカーから放送が流れた。
「2年スズラン組の橘絵莉さん。至急風紀委員室に来てください」
私とあーたんは目を合せ二人揃って首をかしげた。
私はあーたんに「今呼ばれたの私?同姓同名とかいたっけ?」
と聞くと「そんな人いないでしょ。絵莉、今度は一体何をしたんだよー」とあーたんに言われ私は「いやいや!!こっちが知りたいよ。とりあえず行ってくる」と言いながら私はあーたんに手を振りながら教室を出た。
歩きながら「私なにやらかした?遅刻したから?服装?あーもー。とりあえず説教だよね」とひとり言を言いながら風紀委員室に着いて、ドアをノックすると「どうぞ」と一言言われ私はドアを開けた。
そこには「やっと来たわね。お寝坊さん。待ちくたびれたわよ」
と言いながら腕組をしソファーに座っている莉菜がいた。
私は「えっ?さっきの放送は莉菜がしたの?私を呼びだす為に?」と莉菜に聞くと
莉菜は「そうよ。あなたは自分の大好きな人の声も分からないのかしら?」と言ってきたその言葉によって私は赤面した。
「とりあえずそんな立っていないでこちらに座りなさい」と言われ、私はトボトボ莉菜の隣りに座った。
「私は何でここに呼びだしされたの?今日はメイクもしてないし、そんなに制服もだらしなくないから、呼びだしされる必要性は感じないのだけれど?」っと莉菜に聞いてみた。
莉菜が何を考えているのかを少しでも知りたいから聞いてみなくてはね。と思いながら私は莉菜の返事を待った。
数秒間、莉菜は考えるように目を閉じていたがいきなりこちらを向いたと思ったら、私はソファーに押し倒されている状況だった。
私は思わず莉菜に「莉菜!どういうことかちゃんと説明してよ」と言いかけた瞬間、私の唇は莉菜の唇で塞がれた。
本当に莉菜が何を考えているか分からない。とにかくこの状況を何とかせねばと思ったので私は名残惜しい気持ちでいっぱいだったが、なんとか莉菜を突き放すことに成功した。
莉菜は私より力はないから、力では私には勝てないからな。と思いながら莉菜を見た。
莉菜の表情は、正直何を考えているか分からない。
「莉菜、どういうことか説明してくれる?」私はその一言だけを莉菜に言った。
莉菜は髪の毛を耳にかけながら「私と同じ香りがするわ。そんなに私のことが大好きなの?」と言ってきたので
私は「そうだよ!莉菜のこと大好きだよ!だけど莉菜が何を考えているのか分からないから困っている。それと香水は本当に偶然見つけたんだよ」と私は莉菜に言った。
莉菜は真顔で「私にも分からないのよ。なんでこんなことをする自分がいるのか。そもそも私は恋愛というのが分からないわ。私があなたのことを恋愛として好きなのかどうかも分からない。クラスメイトという関係なだけだったら、直ぐに答えはでるわよ。でも違うのよ。私はあなたのことを恋愛対象としては見ていないのに、体が勝手にあなたの方へと動いてしまう。だからお願いがあるの。あなたのことを恋愛対象として好きになれるように私に協力してくれないかしら?」
私は頭の中でぽくぽくぽくと意味の分からない音が鳴った。
私はとりあえず状況を整理したかったので莉菜に質問をすることにした。
「今の莉菜は、私を恋愛対象として見ていないけど、私のことを好きになりたい?ってこと?」
莉菜は「そういうことになるんじゃないかしら。だからこれからはなるべくあなたと行動してみるようにもするから、よろしくね」そう言うと莉菜は私の方に来て、力のない腕で私に抱きついてきた。
私は赤面しつつも、とりあえず莉菜のことを抱きしめてあげた。
もしかして莉菜はずっと昔から悩んでいたのかな。私のことを好きになろうとしてくれているのは嬉しいけど、これって素直に喜んでいいのかなーとか考えていたら莉菜が「あなたに抱きつくと安心するわ」と言ってきたので私は無言で頭をなでなでしてあげることにした。