香り
昼休みが終わり、午後の授業が始まった。周りは真剣に黒板に書かれていることをノートに書いているが私はとても真面目に授業を受けれる気がしなかった。というか、授業なんてまともに聞いたことがあっただろうかというレベルである。
後ろをチラッと見てみると、あーたんは先生にバレないようにスマホゲームで遊んでた。
「はぁ・・・全然分からないな」と内心で呟いていたはずのことがどうやら口にだして言ってしまってたらしく、教師に目をつけられそうになり私は頭を深く下げ真面目モードのフリをした。
そんな状態のなか、初日のスクールライフが終わった。
疲れたからさっさと帰宅して家でゲームでもするかなと考えてたら、あーたんが
「絵莉、学校も終わったし遊びに行こうぜ!」とブイサインをしてくるので私はあーたんと遊んだ方が気は晴れるかなと思ったので
「OK!遊ぼう!どこ行く!?カラオケ?ゲーセン?何でもこいだよ!」とテンションを上げてブイサインをした。
「テンション高いねー。とりあえず私寄りたいとこあるから先にそっち行ってもOK?」
とあーたんは言うので私は無言でブイサインをし、二人で学園を出て大通に向かうことにした。
私は見る景色が新鮮なのでついついスマホで写真を撮りながらあーたんと歩いていた。
あーたんが「着いたよ」と言うので私はどれどれと思いながら店に入ったら、店の中には沢山の香水が売られていて色々な香りがしていた。
店の奥から店員さんが出てきて「いらっしゃい!」と声がして私はその店員を見て驚いた。見た目は身長180センチぐらいの高身長でメチャクチャ美人の女性なのだが声が男性だったのである。
あーたんは私を見ながらケラケラ笑っているので、
「もしかしてこの方を紹介したくてここに連れてきた感じ?」と私はあーたんに聞いた。
あーたんは頷きながら「それもあるけど、新しい香水も欲しかったから来たんだよ」
と言われ私は「じゃ、私も香水買おうかな?」とあーたんと話してたら店の店員が
「あーちゃん、そろそろそこのイケメン女子を紹介してちょうだいよ」
とあーたんの肩に手を回しながら話す店員に、あーたんは分かったから離れろと言わんばかりに肩に回されていた店員の手を振りほどき、一息ついたところで私に
「絵莉、こちら女装が趣味の店員こと店のマスターであるアネさんだよ。スキンシップが激しいけど悪い人じゃないしむしろ相談事にものってくれる素敵な人だから何か困ったり相談事とかあったらアネさんに聞くといいよ」と紹介され私はアネさんに対して
「初めまして。今日転校してきたばかりの絵莉といいます。これからよろしくお願いします」と私的にはかなり丁寧に挨拶をした。
アネさんは「あらあら、そんな丁寧に挨拶されちゃ困るわよ。私のことはアネさんって呼んでちょうだいね」とウィンクされたので私は頷いた。
「さてと、アネさん私新しい香水を買いに来たんだけど何かオススメある?」
とあーたんがアネさんに聞くとアネさんは待ってましたと言わんばかりに、ガラス張りのショーケースの棚の中から液体の色が綺麗な水色の香水を出して持ってきた。
私は思わずその香水に惚れた。「すごく綺麗だ」と一言私が言ったらアネさんが「あら、絵莉ちゃんはこの香水好き?新作なのよ、二人とも手首だして」とアネさんに言われたので私とあーたんは手首をだした。アネさんは私とあーたんの手首にシュッと香水を吹きかけてくれた。
その香りは石鹸に似たような香りがしていて、スッキリした香りであった。
私は「とても素敵な香りですね。でもこの香りどこかで嗅いだことがあるような」と私は言うと
あーたんが「あー。分かる。どこかで嗅いだことのある香りだよね」と言いながらお互い手首をクンクンしているとアネさんが
「そう言えば、あなたたちと同じ制服の子が昨日ここに来て、その香水を買っていったわよ。黒髪の美人さんだったわねぇ。確か桜さんって名前だったはずよ?」とアネさんが言った瞬間私は
「それ、莉菜だ。だからこの香り嗅いだことあるんだ!莉菜、香水なんてつけていたんだ」と言ったらあーたんも納得という表情をしていた。
アネさんが「この香水には好きな人と両思いになれるおまじない付きよ。と話したら即買いして行ったわよ」と言われ
私は「そんなおまじない効果があるんですか!?」と目をキラキラにしながら言うとアネさんは
「そうねぇ、本人の気持ち次第だけど効果はあるんじゃないかしら?まぁ、気休め程度に思った方がいいわよ」
と言われ私は、莉菜と同じ香りを纏いたい。同じ香りがしたら莉菜はどんな反応をしてくれるかなとか色々頭の中で考えた結果「はい!その香水買います!いくらですか!?」と勢いよく私はアネさんに言った。
アネさんは「あら、買うの?1万円になるけど大丈夫かしら?」と言われすかさずあーたんが
「アネさん、私はそんな高い香水買わないわ。私はパッションフルーツの香りがする3千円の香水でお願い」
とあーたんが言ってるのをみて私は財布の中身を確認した。ジャスト1万円。買うしかない。莉菜との距離をさらに縮める為にも買わねばなどと考え
「アネさん!1万円あるので買います!」と言ったらアネさんがなぜか「まいどありぃ!!」とカッコイイ声で言ってきた。
そこだけ男性ですかと思ったが、私はそんなことは気にもせず会計を済ませ、香水を買った。あーたんも香水を買いアネさんに「またきますね」と言いながら店を出た。
私はあーたんに「さて、次はどこに行く!?」とテンション高い状態で聞いてみるとあーたんは冷静に「絵莉、所持金いくらあるの?さっきかなりでかい買い物したけど大丈夫なの?」
と言われ私は「やっちまったー!」と叫んだ。
遊ぶお金全部香水につぎ込んでしまった。
こりゃママにお小遣い交渉をしなきゃいけないなと思いながら「お金、さっき使ってお札ないない状態」と言ったら、あーたんはやれやれという感じで首を振りながら
「じゃ、今日はもう帰ろう。どのみち時間もそんなにないだろうし。アネさんのお店で長居してしまったからね。遊びはまた今度にしよ」と言うので私は「うん。そうだね。今日は楽しかったよ。転校初日にしてはすごく楽しかった!」とあーたんに言うと
あーたんは「私も楽しかったよ。最高の友達もできたしいね。じゃ私帰るからまた明日学校でね!」そう言いながらあーたんは帰って行ったので私も帰ることにした。
明日、学校が楽しみだなぁ。莉菜と同じ香り。私はいつになくニヤニヤしながら自分の家に帰ることにした。




