衝撃
昼休みの鐘がなり、廊下はワイワイと生徒たちの声で賑やかだった。
そんな中私は、冷や汗をたらしながら莉菜の歩いている廊下を無言でついて行く。莉菜の後ろ姿はとても綺麗だけれど今だけはとても恐ろしく感じる。絶対に機嫌も悪いだろうし、私はどう対応すればいいのやらなどと考えていたら、風紀委員室と書かれた木造の部屋の前に辿り着いた。
なぜここだけこんな古い教室みたいな感じなんだろうと思っていたら、「着いたわよ。入りなさい」と莉菜から言われたので私は「お邪魔します」と言って部屋の中に足を踏み入れた。部屋の中はフローリングになっていて、木製の長テーブルに黒色の長ソファーそしてでかい鏡があった。
私はグルリと見回してから莉菜を見た。「何をボーっとしているの?こちらにきて座りなさい」と言われトボトボと莉菜の隣りに座った。隣りの莉菜を見ると、莉菜も私のことを見ていてお互いに見つめ合う感じになっている状態に気づき、私は顔が火照るのが直ぐに分かった。ヤバイ。この状況はヤバイ。大好きな莉菜の隣りに座ってお互いを見つめているこの状況は。
とりあえず何か話題を切り出さねばダメだよなと思ったので、「ねぇ、何で私のことを知っているのに知らないフリをするの?私は莉菜のことを知っているんだよ?」
と私は一瞬自分の言った発言に攻めすぎたか?と思ったがこうでもしないと莉菜は話してくれる気がしないのでこのまま攻めていこうと思いつつ、莉菜の顔をそーっと見ると莉菜は私の方を向きいきなり私のネクタイを掴み自分のとこに引き寄せて「私はあなたのことを知っているわ。だからあなたを呼んだのよ。ついでにそのダラシナイ制服を直させる為にもね」莉菜はそう言いながら私の首に両手を回してきて、まるでそのままキスをするかのように私の顔に近づいてくるので私は思わずそのまま莉菜を抱き寄せキスをした。
莉菜の唇はとても柔らかくて甘い味がする。たまに莉菜から発せられる声が、ますます私を興奮させる。もっと絡んでもいいんだよねと思いながらそっと莉菜の口に舌を入れかけた瞬間莉菜が私を突き飛ばした。
「いい加減にしなさい!私はあなたのことを知っているけど、私はあなたのことは恋愛対象としては見ていないわよ。勘違いしないで」と顔を真っ赤にしながら莉菜は言ってきた。
私は莉菜の言っていることを理解するまで数秒間かかった。
私は思っていることを言ってみようと思い莉菜に「じゃ何でさっき私の首に両手を回してきたの?何で私からのキスを受け入れたの?莉菜が何を考えているのか私には分からないよ」と莉菜に向かって攻めるように言った。
「だって本当に理解できないんだもん」などと内心で考えつつ莉菜の目を覗くように見ると莉菜は真顔で「私にも理解ができないわ。学校内でキスしてくる人がいるなんてね。そしてそれを受け入れた私自身に対しても理解ができない。あなたと一緒にいると私はおかしくなるみたいね」と言いながら息をフーっとつく。
私は「えっ?何それ。ますます理解ができなくなってきた」と考えてたら、莉菜が「とりあえず今日はそのネクタイだけでもきちんと直しなさい」
と言うので私は「分かった」と言いながら渋々ネクタイをきちんと直した。直したとこをチェックした莉菜は「そろそろ教室に戻るわよ。昼休みが無くなってしまうわよ」と言いながらドアを開けて教室に向かって行ってしまった。
私は一人トボトボと教室に戻る道中、莉菜の行動と莉菜の言っていた言葉を考えていた。「いったいどういうことなんだ」私は頭をかきむしりながらぶつぶつ言いながら教室に戻ると、あーたんが「よっ!昼ご飯食べよーぜ!」っとニコッと笑いながら言ってきたので私は「食べよう!食べよう!」と言いながら自分の席に戻った。
教室を見回して莉菜の方を見てみたが莉菜は何事もなかったかのようにご飯を食べながら何かの資料を見ていた。とりあえず今は考えることをやめにしよう。むしろもしかしたらチャンスが残っているかもしれないしなどと考えながらご飯を食べ、残り少ない昼休みを私はあーたんと過ごした。