灰色の空からの光
空の色が夕焼けから星空に変わりかけてるが、私の瞳には色のない灰色にしか映ってない。
空を眺めていたらアネさんは一瞬誰か分からないくらい別人の状態でバイクを倉庫から出してきて私を呼んでいる。
私は急いでアネさんのとこに行く。
「アネさん、めちゃくちゃイケメンだね。モテモテになっちゃうね」
私がそんなことを言うとアネさんは私にヘルメットを渡しながら
「絵莉ちゃん、気をしっかりもつんだよ。ほら私の腰にしっかり掴まるのよ」
私は頷きながらアネさんの腰にしっかりと掴まりながら総合病院に向かった。
アネさんのバイクは大型バイクの綺麗な青色のバイクのせいかすれ違う人々に沢山注目される。
注目の原因はそれだけではないと言うのは分かっている。
だって、私ショートパンツだし・・・・・・
そんなことを考えていたらあっという間に病院に着いた。
私は不安でいっぱいの気持ちを抱えながらアネさんと走って受付窓口に行く。
受付のお姉さんはアネさんのイケメン顔に魅了されそうになっていたが、直ぐに莉菜の病室を教えてくれた。
病室は最上階にあるらしく私は直ぐさまダッシュで階段を使って走ることに。
アネさんも体力には自信があるらしく私と同じく階段をダッシュする。
人間は本当に必死になった時は体力が無限に続くんだなと思いながら最後の階段を上り終えた
階段を上り終えた先にはあーたんと花咲先生が手でこっちだと呼んでいる。
私とアネさんはラストダッシュで2人のとこに向かった。
「莉菜、アネさん!2人とも階段できたの!?」
「そうだよ。で、莉菜は!?無事なんだよね!?」
私が必死な形相であーたんに問い詰めるとあーたんは手で落ち着けと私から一歩距離をとる。
「大丈夫だよ。全身に擦り傷とかあって右足を骨折しちゃったけど、完治まで一カ月だって。だから明日から松葉杖生活になるから私たちでしっかりサポートしなきゃね」
あーたんはそこまで言うと一息つく。
私は話を聞いて力なくその場でヘナヘナと座りこんだ。
「おい、花咲大丈夫か!?」
「あ、ちょっと全身に力が入らなくて。莉菜が無事だったから安心したせいかな」
私は床に座っていた状態からゆっくり立ち上がり、今度は今まで私の視界にいなかった人間の方に向かう。
そう、莉菜に怪我を負わせたドライバーに。
私はブチギレ寸前の状態を維持しながらドライバーのとこに向かいながらキレようとした瞬間、私よりもアネさんがドライバーに平手打ちをかました。
私は目をぱちぱちする。
あれ、私がしようと思っていたのにアネさんが先に平手打ちしちゃったよ。
「アンタ、自分が何をしたか分かっているんでしょうね?私の大切な子に怪我を負わせてタダで済むと思うんじゃないよ!」
アネさんは今回の事故を起こしたドライバーにめちゃくちゃ説教をしていた。
「おい、ここはアネさんとやらに任せてお前は莉菜の傍にいてやれ。莉菜は寝てるから静かにするんだぞ」そう言いながら花咲先生までもがアネさんの隣りに行きドライバーに何かを言いはじめた。
あーたんは私の腕をひっぱりながら莉菜の病室に私を入れる。
病室は個室で広い。
窓からは街の明かりがキラキラとしていた。
そんな部屋の中央のベットには傷だらけの莉菜が寝ている。
私は静かに寝ている莉菜の傍に座り、莉菜の手を優しく握った。
「莉菜、ゴメンネ。私があの時莉菜が帰るとこを引き止めていればこんなことにはならなかったのに」
私は泣きながら静かに寝ている莉菜に今の自分の気持ちを言うことにした。
「私ね、臆病で怖がっていたんだ。でもアネさんに色々言われて過去の自分とバイバイしたよ。だから莉菜の怪我が完治したら絶対に告白する。だって私は幼いころから莉菜のことが大好きだから。莉菜のいない世界なんて私は考えられないよ」
私はそこまで言って後ろにいるあーたんに笑った。
「絵莉、やっと前に進める感じになったみたいだね。安心したよ。でも私はちょいと花咲先生が可哀そうかなー」
「うん。花咲先生??どういうこと?」
「絵莉、鈍感にも程があるよ。まぁ、気にしなくて大丈夫だよ。私自販機で飲み物買ってくるから待ってて」
あーたんはそう言いながら病室を出て行く。
私はあーたんが病室から出て行くのを見送ってから莉菜の方に向き直る。
莉菜。綺麗な顔に傷がついてる。ドライバー絶対許さない。そもそもどうして事故が起こったわけ?
色々気になるけどそれは後でアネさんから聞けばいいか。
莉菜の顔の傷とかちゃんと綺麗に治るといいんだけど。莉菜の寝顔は本当に綺麗だな。
「莉菜、完治したら2人でどこか旅行に行こうか。そんな遠くには行けないかもだけど。温泉とかさ。
莉菜大好きだよ」
私はそう言いながら最後に莉菜のおでこにキスをした。
莉菜が寝ているからこういう風に素直に行動できるのかなと思ったりしていたら、莉菜がそっと目を開ける。
「莉菜!私だよ!絵莉だよ!私のこと分かる??」
私は不安な顔で莉菜を見る。
「うるさいわね。ちなみにだいぶ前から私は目覚めてはいたわよ。だから旅行楽しみにしてるわよ?」
莉菜は何事もなかったかのような顔でそんなことを言ってくる。
私は自然と涙がポロポロとでてきた。
「何それ。目覚めていたなら起きてよね。と言うか私の話してること全部聞いてたんだね」
「絵莉のひとり言が気になって目を開けれなかったわ。でも嬉しかった。ありがとう」
莉菜はそう言いながら私の顔を見ながら微笑んでくる。
「絵莉、もーちょっと私の顔の近くにきなさい」
莉菜にそう言われ私は言われた通りに莉菜の顔に近づく。
「絵莉、ありがとう。これはさっきしてくれたお礼よ」
莉菜はそう言いながら私の唇にキスをしてきた。
私は顔が赤くなるのを感じながら莉菜の手を握る。
「体の痛みはどう?これからの生活大変だよね。私とあーたんがサポートするからね」
私は莉菜の顔を見ながら莉菜の様子をうかがう。
莉菜は強がることが多いからこういう時だけは素直になって欲しい。
そんな私の思いとは逆に、莉菜は素直に言ってきた。
「そうね、全身が痛むわ。最悪よね。学校のこともあるし今回は素直に頼らせてもらうわね」
莉菜はそんなことを言いながら自分の体の具合を確かめている。
「明日からは、ほぼつきっきりで莉菜のお世話をするね。あーたんもするって言ってたし」
そんなことを話していたらドアが開きあーたんが缶ジュースを3本持って入ってきた。
「お待たせーって、莉菜ちゃん目覚めたんだね。よかったー」
あーたんはそう言いながら私に炭酸ジュースを渡してくる。
私はカコンっと缶ジュースを開けて一気に飲む。
炭酸なのに一気に飲める私はきっとおかしい。
普段ならこんな飲めないもん。
「フーっ!潤ったー。そして一気飲みはつらい!」
私がそう言うとあーたんは笑っていたが莉菜は不思議そうな顔をして私を見ている。
気になったので私は莉菜にどーしたの?って感じで首をかしげてみた。
「絵莉、どれだけ全力でここまできたの?炭酸の一気飲みなんてあなたできないでしょ」
莉菜は不思議そうに言ってくる。
「莉菜、アネさんと階段上ってここまできたんだよ」
あーたんがそう言うと絵莉は若干呆れたような顔で私を見る。
「絵莉の体力はお化けね。アネさんも来てくれているのね。心配かけちゃったわね」
莉菜がそんなことを言ってるとドアがノックされアネさんが入ってきた。
莉菜は目を丸くしている。もしかして莉菜も男バージョンのアネさんを見たことがないのかと思いながら莉菜の様子を見る。
予想は的中した。
「あの、どちらさまでしょうか?」
莉菜は一言そう言いながら私とあーたんを見る。
「ちょっと莉菜ちゃん!私よ!女装していないけど私よ!」
アネさんは必死に莉菜に自分のことをアピール。
「もしかしてアネさんですか?ゴメンなさい!いつも綺麗な女性としか見ていなかったので男性バージョンだと全然分かりませんでした。今回はご心配をおかけしてすみませんでした」
「ちょっと、莉菜ちゃんは何も悪くないわよ!!あのくそドライバーが悪いんだから!でも無事で良かったわ。今日はゆっくり休んでね。私、明日にまたくるから」
アネさんはそう言いながら病室から出て行った。
「じゃ、私も明日また来るから。絵莉、莉菜ちゃんのこと頼んだわよ!」
そう言いながらあーたんも病室を出て行く。
何か嵐が過ぎ去ったような感じだなと思いながら私は莉菜を見た。
「私、今日ここに泊まるね。莉菜のこと心配だし。それに莉菜から離れたくないから」
莉菜は少し顔を赤くしながら頷く。
「じゃ、私ママに電話してくるからちょっと待っててね。すぐ戻るから」
私は病室を後にしてママに電話するべく電話が使えるスペースに移動しようと思い、廊下の椅子に座っている花咲先生に気づいた。
「花咲先生!莉菜が目を覚ましましたよ。会わないんですか?」
「明日、会いに行くよ。それよりも伝えておきたいことがあるんだ。ちょっといいか?」
花咲先生はどこか落ち着きのないような感じで言ってくる。
どうしたんだろ?花咲先生の様子が変だ。
私は頷き花咲先生の後をついて行く。
何か嫌な予感がするけど気のせいだよね。
はやく莉菜のとこに戻りたいなと思いながら私は後を追う。




