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第六章:記憶之鍵


…今日は日曜日、

  美紗との約束の日…


拓斗

「確か映画を観に行く約束だったっけ…」


僕は眠たげな顔をしながら布団から起き上がり、洗面所へ向かった。


現在時刻は午前8時34分…


いつも休みの日は部活がなければ昼まで寝ているのだが、今日は前日から早く寝て睡眠時間をずらしたのでなんとかこの時間に起きることが出来た。


…まあ本当は美紗が用意周到過ぎてこの時間に起きなければならなくなったのだけれど…




洗面所に着くと、兄が顔を洗っていた。

兄は比較的早起きで、休みの日もこのくらいの時間には起きている。


「おー拓斗、今日は早起きだなー」


拓斗

「うん。兄さんも今起きたの?」


「ああ、ついさっきな。…にしても拓斗、何で今日はこんなに早起きなんだ?部活か?」


拓斗

『ビクッ!』


急に今日の事を聞かれ、思わず身体が反応してしまった…

本人は気づいていないようだが、僕が何か隠し事をしている時に限って兄はさりげなく鋭い所を突いてくる。


『もしかして、本当は全部知ってるとか…』


そんな筈はない……いや、あって欲しくない…


『…まさか、また顔に心の感情が…!?』


…いや、もし僕の顔に何かしらの感情が出ていたとしても、そこは兄弟だ…兄も僕と同じで顔に心の感情が出る。

もし兄が今の僕の感情を読んでああ言ったのなら、同時に兄の顔にも何らかの感情がでる筈だ。

けど、僕が見る限り兄の顔からはそんな感情は読み取れない…

だいいち感情が読めたところで僕が何をするかなんて判る筈ないし……たぶん…


『…大丈夫、きっと大丈夫…』


そう自分自身に言い聞かせ、兄に答える…


ひきつった笑顔を見せ僕は言った。


拓斗

「えっと…うん、部活。」


「そっか、まあ頑張って来いよ!」


拓斗

「あ…うん…」


意外とあっけなく話は終わり、兄は居間へと去って行った…

僕はホッとした反面、さっきまでのあれはなんだったんだろうと思いながら顔を洗った。


顔を洗い終わり、朝食を摂り、出掛ける準備に取りかかった…






2階にある自分の部屋へ行き、着替えを済ませ、財布など今日持っていく物を確認する…


拓斗

「あ…」


ふと部活の予定表が視界に入る…


拓斗

「…証拠隠滅しておくか…」


万が一の事を考え、今月の部活の予定を携帯に記録しておき、予定表は捨てる事にした…


準備が整い1階の玄関へ向かう…






階段を降りると丁度よく兄と出くわした。

兄はじーっと僕を見詰めている…


僕は

「いってきます。」

と言って家を出ようとした…



「ちょっと待て、何で部活に行くのにそんなにカジュアルな服を着てるんだ?」


拓斗

『ギクリ!』


さすがにそこまでは考えていなかった…

身近な物の証拠隠滅よりこの家を誰にも悟られずに出る事を考えるべきだったと、今更ながら後悔した…


『とにかく何か言い訳しないと!』


そう思い、僕は必死に言い訳を考え、言った。


拓斗

「あ…あぁこれ?今日ミーティングの日でさ、先生が私服で来てもいいって言ってたから着てこうと思って……あ…あと、今日部活のあとそのまま皆で遊ぶ事になってるから、母さんにはそう伝えておいて。」


「あ…あぁそうなんだ、随分早くからやるもんなんだな、ミーティングも。」


拓斗

「う…うん、まあね。…じゃあ僕はもう行くから…いってきます。」


「おう、いってらっしゃい。」


僕は兄をなんとかごまかし、家を出た。


『…しかし、今の言い訳(嘘)は、自分でも完璧だと思ってしまうほど完成度高かったな…』


ついそんな事を考えてしまった…



時計を見ると時刻は既に9時37分になっていた…



拓斗

「もうこんな時間!?」


僕は急いで待ち合わせ場所へと向かった…






待ち合わせ場所には既に美紗が待っていた。


美紗

「あ…拓斗!」


美紗もこっちに気づいたようだ…手を振っている。


拓斗

「おーい、美紗!」


僕は駆け足で美紗の所へ向かった…


拓斗

「ごめん、待たせた?」


美紗

「ううん、私も今来たとこ。…拓斗こそ、もっと遅く来ると思ってたのに、意外と早く来たね。」


拓斗

「…あれだけ言われればね…」


…そう、これは映画の約束をしてから今日までの話…

朝の登校時は言われないものの、学校生活の中でこの一週間

『日曜日、映画を観に行く約束、わすれないでよー』

と言われた回数は数知れず…


おまけに前日前夜はメールで伝えるという用意周到さ…



…僕は必然的に遅れることを許されなくなり、時間はギリギリながらもこうしてこの待ち合わせ場所に来ているわけだ。


美紗

「どうしたの?」


拓斗

「え…あ、いやなんでも…」


僕はまた感情を読まれてしまわないように、話題を変えようとした…


拓斗

「そういえばさ、今日は何の映画観に行くの?」


美紗

「えへへー今日観に行くのはねー」


美紗は少しもったいぶって話し出した…


美紗

「こわーいホラー映画だよ〜」


美紗は僕を怖がらせるかのような口調で言った。


そして最悪な事に、僕はそうゆうホラー系が物凄く苦手で、話を聞いただけで背筋が凍るような思いだった…


拓斗

「…僕…帰ります…」


僕は今来た道を戻ろうとしたが…すぐに腕を掴まれ逃げられなくなった。


美紗

「だめだよ、逃げちゃ…ほら、行こ!」


僕は美紗に腕を掴まれたまま、映画館へ向かった…






映画館に着き、中に入ると大きな看板があった。


美紗

「これが今日観る映画だよ。」


そう言って美紗はその大きな看板を指差した…


『樹鏡―樹海の果て―』


…いかにも怖そうな題名だ。題名だけで怖さがひしひしと伝わってくる。

それに、看板自体とても怖い印象をうける。

暗い樹海に一人、少女が立っている絵…

少女の来ている服が真っ白なので、それがより雰囲気をかもし出している…


拓斗

「ねぇ、ホントにこれ観るの?」


僕は確認のため、もう一度聞いてみた。


美紗

「うん。」


やはりそうだった…


拓斗

「美紗はこうゆうの怖くないの?」


美紗

「え…こ…怖くないよ別に……もう時間だから行こ!」


また腕を掴まれ、僕は美紗に連れられて、受付を済ませ、中へ入っていった…



そしてこれから『僕達』はこれまでにない恐怖を体験する……







約2時間後……


僕達は映画が終わると同時に映画館を飛び出した…


拓斗

「はぁ…はぁ… 死ぬかと思った…」


正直これほどの怖さだとは思わなかった…

恐らく映画を観て死ぬと思ったのはこれが初めてだと思う…


そして美紗は…


美紗

「うっ…うっ……グスッ…」


あまりの怖さに泣いてしまっている…


映画を観ている途中、怖いシーンの時も、どちらかといえば僕より美紗の方が怖がっていたような気がしないでもない…

どちらも大声を出して怖がっていたので、あまりよくは判らないが…


拓斗

「…大丈夫?」


僕は泣いている美紗に声をかけた…


美紗

「グスッ…」


拓斗

「ま…まあとりあえずお昼食べに行こ…ね?」


美紗

「…うん。」


僕達は近くのレストランで昼食を摂る事にした…


店員

「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ。」


お昼時というのもあって、店の中は丁度混み始めたところだった。

店の中はとても明るい感じで、席に着くと美紗も少し落ち着いたようだ…


拓斗

「…どう?少しは気分良くなった?」


美紗

「…うん、良くなった。…ありがと。」


面と向かってありがとうと言われると、少し恥ずかしかった…


拓斗

「とりあえず、何か食べよっか。うーん…どれにしようかな…」


美紗

「うーん…じゃあ私はこれにしようかなー」


美紗はハンバーグ定食と書かれている所を指差した。


拓斗

「ハンバーグ定食か…じゃあ僕はこれで。」


僕は本日の定食と書かれている所を指差した。


拓斗

「…よし、決まり。美紗もいい?」


美紗

「うん、いいよ。」


注文する物が決まったので店員を呼び注文をした。




食事をしている間も2人で色々な事を話した…

いつもの生活の中で起こった出来事や、部活での出来事、それとあんまり喋り過ぎると思い出してしまうのであまりしてはいないが、さっきの映画の事も…


もしかすると2人だけでこんなにも長々と話をするのは久しぶりかもしれない…

とにかく、美紗と話している時間がとても楽しかった…




昼食を食べ終わり、僕達はレストランを出た。


まだ帰るには少し早いくらいだったので、街をぶらぶらと歩く事にした…

今日の記念にゲームセンターでプリクラを撮ったり、クレーンゲームをやったり…


そして…


立ち寄ったデパートでふと目に入ったアクセサリー店で…


美紗

「あ、これ可愛いーイルカさんだー!」


そう言って美紗はイルカのキーホルダーを手に取った。


美紗

「ねぇ見て、拓斗!これ、可愛くない?」


拓斗

「ん、何?」


美紗が手に持ったキーホルダーを見せてきた…



その瞬間……



拓斗

「うっ…」


キーホルダーを見た瞬間、何かが頭の中をよぎったような気がした…


…とても…とても大切ななにかが…



…そして、自分の中に一つの疑問が生まれた…



『…僕は、何かとても大切な事を忘れているのではないか…』


今の事もそうだし、夢の事も、頭のモヤモヤの事も…

全てが共通する事は僕が知っているようで知らない光景…


そして、あのキーホルダーも…


美紗

「どうかした?」


拓斗

「…何でもない。」


僕は混乱しながらも冷静に答えた。


美紗

「そう…ならいいんだけどさー」


拓斗

「…僕もこれ欲しいな。」


このキーホルダーを持っていれば何か判るかもしれない…そう思った。


美紗

「じゃあさ、一輝や啓介くん達にも買って、5人でお揃いにしない?」


僕も2人でのお揃いは恥ずかしいので、賛成した。


拓斗

「うん、そうだね。いいと思うよ。」


僕達は、イルカのキーホルダーを自分達の分を含めて5つ買った…



デパートを出ると、空はもう紅く染まっていた…


時刻は5時51分……


拓斗

「そろそろ帰ろっか。」


美紗

「うん。」


僕達は家路についた…




美紗とは待ち合わせ場所で別れた。


美紗

「じゃあ、私はここで。今日はすっごく楽しかったよ!」


拓斗

「うん、僕も楽しかった!」


美紗

「また一緒に映画観に行こうね!…バイバイ!」


拓斗

「うん、また明日。」


お互いに挨拶をし、僕達はそれぞれの家へ向かった…






後の話だが翌日、3人にキーホルダーを渡すと、思った以上に評判がよく、皆携帯などに付けてくれた…


そして僕は、このキーホルダーが自分自身の謎を解き明かす一つの『鍵』だと信じて、このキーホルダーを携帯に付けた…



今回は主に休日、映画を観に行くというお話を書きました。

この話でようやく主人公に変化が現れて来たというところでしょうか…

お話の展開のスピードも遅く、雰囲気もまだ十分に伝えられていないと思います…


まだまだ初心者ですが、これからも最後まで読んで頂けるよう頑張ります。


読んで頂きありがとうございました。


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