第五章:部活動
朝はやはり辛い…
前日に準備をしても起きるのが遅いため、いつも遅刻ギリギリだ。
それに、最近は起きていても頭が一日中モヤモヤしている…
…まるで何かを見落としているかのように…
拓斗
「…考えても仕方ない、学校に行こう。」
身だしなみを整え、朝食を摂り、待ち合わせ場所へ向かう…
待ち合わせ場所にはやはり僕以外の全員が来ていた。
4人
「遅い!」
拓斗
「…ごめん…遅れて…」
一輝
「拓斗、最近どうした?一段と遅くなってるぞ。」
拓斗
「え?ホント?」
…気がつかなかった。
最近の僕が待ち合わせ場所に来る時間は少し前に比べて格段に遅くなっていた…
理由は…判らない。
遅いのはいつもの事だし、何せ僕自身今一輝に言われるまでは気づかなかったのだから…
啓介
「あんまり気にすんなって!」
剛毅
「まあ、遅くなってるって言っても遅刻するほどじゃねーしな。」
皆は心配するなと言ってくれているが、僕には何故かそうは思えなかった…
少し思い当たる事が2つある…
1つは、今言われるまで気にはしていなかったが、最近不思議な夢ばかり観ていること…
…その夢は誰かを追いかけている夢…
必死に追いかけるのだけれど、その差はどんどん開いて、いつも追いつけずに夢から覚めてしまう…
それが一度ならなんとも思わないのだが、ここ毎日その夢を観ていると少し不思議に思えてきた。それだけではない、その夢は観るたびに景色が変わっている…そんな気がするのだ。
そしてもう1つ、起きている間ずっと頭の中がモヤモヤする事…
…どうしてかは判らないが、僕はこの2つが何か関係し合っているような気がした。
美紗
「…どうしたの?そんな深刻な顔して…」
拓斗
「え?あ、ごめん、考え事してて…」
剛毅
「お、お前もしかして……色恋沙汰か!?」
拓斗
「違うよー」
啓介
「なに!?本当か?……なあ、誰?誰なんだよ〜」
わざとらしく啓介が話に入ってくる…
拓斗
「だから違うんだって!」
怪しいと思ったのか更に啓介は、話を広げようとした…
啓介
「ま……まさか……美紗ちゃ…ぐへっ…」
拓斗
「だーかーら、違うって言ってるでしょうが!」
久しぶりにキレた…半年ぶり位か…
…まあ、どうやって啓介を止めたかはご想像にお任せするとして…
こうやってワイワイやっている間は頭のモヤモヤもあまり気にならないのかもしれない…
一輝
「あんまりゆっくりしてると遅刻するぞ!」
腕時計を見ると時刻は8時27分……
拓斗
「うわっもうこんな時間?」
剛毅
「8分か…またギリギリだな…」
啓介
「ハァ…また走るのかぁ…」
美紗
「つべこべ言ってる場合じゃないよ、行こ!」
5人は学校に向かって走り出した…
走ってる途中、僕は思った…
『…まだいいよね…きっと……きっといつかあの夢の意味が…頭のモヤモヤの意味が判る日が…きっと…』
また何気ない学校生活が始まる…
ホームルームで始まり、1時間目、2時間目…と、そして、お昼休みがあり、5時間目、6時間目、…最後にまたホームルームで今日1日の授業が終わる。
更に今日は放課後に部活もある。
恐らく、帰りは6時位になるだろう…
啓介
「おーい拓斗、早く部室行かないと一輝に怒られるぞー」
啓介が教室のドアの所から呼んでいる。
剛毅も一緒のようだ。
拓斗
「あ…うん、今行く。」
僕は啓介達の所へ向かった。
啓介
「3人揃ったし…そろそろ行った方がいいよな?」
剛毅
「ああ、何せ部長は一輝だ、ちょっと遅れただけでも怒るだろうな…」
啓介
「よし決まり!急いで部室に向かおう!」
3人は部室に向かって走り出した…
僕達はサッカー部に所属している。
今では3年生が引退し、部長は一輝に引き継がれ、新たな部としてスタートした。
ちなみに副部長は啓介だったりする…
サッカーの実力はまあまあ強く、大会では優勝までは無くとも、ちょこちょこベスト4に進出したりしている…
その割りに顧問の先生はあまり厳しくなく、どちらかと言うと顧問の先生と言うより、怪我をしないか見守っている親と言う感じだ。
試合の時も、決して無理な事は言わず、1人1人の実力や性格などに合わせて指示を出している…ような気がする…
とにかく凄く優しい先生だ。
それとは裏腹に、新しく部長になった一輝は普段どおり凄く厳しい。
…それでチームとしての輪が保たれているので、決して悪い事ではないのだが、それが練習にも反映されて、あまりの厳しさに音を上げる者もいる。
幸い練習日程が基本週4日なので、僕もなんとかバテずにやっている。
『ハァ…もうちょっと気楽にサッカーやりたいなぁ…』
…部室に着くとそこには既に一輝の姿があった。
一輝
「ん、来たか。」
一輝が気ずき、僕達の方へ歩いてきた…
周りを見渡すと部活メンバーのほとんどは既に集まっているようだった。
剛毅
「今日の練習メニューは?」
一輝
「今日は、初めにグラウンドを10周、次に準備体操、パス練習、シュート練習をしてから攻めと守りに別れてそれぞれの練習をする。それが終わったら、そのまま攻めと守りで1対1、3対2をして、最後にチーム分けをして試合をする予定だ。」
啓介
「…なあ、なんかいつもより多くないか?」
一輝
「もうすぐ大会だからな、そろそろ本格的に練習しようと思ってな…」
拓斗
「え…って事は…」
一輝
「大会まではこのメニューでいこうと思っている…」
3人
「なにぃー!?」
僕達は揃って声を張り上げた。
3人の声が部室中を響き渡る…
剛毅
「休日は良いとして、平日はどうすんだよ?…時間無いんじゃねーか?」
一輝
「それなら心配ない。大会まではいつもの練習時間を30分延ばすからな。」
さっきのインパクトが強すぎて、もう驚くことも出来なかった…
『僕…死んじゃうかも…』
つい大げさな事を考えてしまった…
多分、大会までこのメニューをやり通すことの出来るのは一輝だけだろう…
啓介
「まあ大会ならしゃーないな。よっしゃ、いっちょやるか!」
どうやら啓介はやる気のようだ…
啓介はサッカーが上手いがそれだけではなく、誰よりもサッカーをやることに喜びを感じている。
…もしかすると啓介もこのメニューをやり通す事が出来るかもしれない…
一輝
「よし、そろそろ始めるぞ!」
僕達はジャージに着替えてグラウンドに出た…
グラウンドに出るとすぐに練習が始まった。
始めはグラウンド10周、本来なら5周しかしないのだが…2倍は正直辛い…
拓斗
「…ハァ…ハァ…後何周だっけ…?」
剛毅
「…後、5周だ…」
拓斗
「…えぇ?まだ半分…?」
僕は少しフラフラになりながら走り続けた。
啓介と一輝が後ろから段々と近づいてくる…
走り出したのは同時なので僕達より約1周速い事になる。
…そしてついに、僕と剛毅に追いついた。
一輝
「…頑張れ…後、半分だ。」
拓斗
「…うん…」
先に追い抜いて行ったのは一輝だった。
続いて啓介も僕達に追いつく…
啓介
「へっ…剛毅、サッカーでは絶対負けねぇからな。」
剛毅
「…俺はサッカーでお前に勝つ気はない……それより、グラウンドの走り込みくらい一輝に勝ったらどうなんだ?」
啓介は部の中ではかなり上手いのだが、一輝には一度も勝った事が無かった。
…今までも、1対1や練習試合など色々とやって来たが、一輝と啓介が敵対してやる練習は全て一輝が勝っている。
そもそも、サッカーは個人競技ではなく集団競技であり、グラウンドの走り込みはサッカーですら無いのだが…
啓介
「そうだった…待てぇぇ一輝!」
そう言って啓介は一輝を追っていった…
剛毅
「俺達はゆっくりで行くか…」
拓斗
「うん…そうだね…」
僕達はゆっくりペースで走る事にした…
ようやく走り終わり、準備体操をし、パス練習、シュート練習、そして攻守別れての練習へ…
今回は攻めが僕と啓介、守りが一輝と剛毅に別れた。
一輝
「練習開始だ!」
攻めと守りにそれぞれ別れ、別々に練習を始めた…
僕ら攻めの練習は、コーンを等間隔でゴールに向け並べ、一人ずつそのコーンを右左と交わしていき、ゴールにシュートするというものだ。
啓介
「よし、すぐに準備して始めるぞ!」
皆で協力して並べ、練習を開始した…
20分後…
啓介
「そろそろかな…おーい、一輝!そろそろ合同でやらないか?」
啓介が一輝に呼びかけた…
一輝
「そうだな…よし皆、1対1を始めるぞ!」
一輝の呼びかけで練習が始まった…
大体1対1では実力の見合った人同士でやるのだが、僕は攻めでも守りでもそこまでいい成績を残していない…
啓介
「行くぞ、一輝!」
一輝
「来い!」
初めは一輝と啓介の部長対副部長の戦いで始まる。
2人とも一定間隔のまま相手の様子を伺っている…
先に動き出したのは啓介だった。
啓介
「そこだぁ!」
右足でボールを操り、一輝を抜きにかかる…
右にボールを蹴りだした…右から抜くつもりだ。
一輝
「…甘いぞ、啓介。」
啓介
「何!」
…啓介と同時に一輝も動き出した、どうやら啓介の動きを読んだようだ…
そのまま啓介のボールを取ろうとする。
啓介
「…フッ…甘いのはお前の方だ一輝!」
一輝
「!!」
啓介は一輝をギリギリまで引き付け、左へ切り替えした…
啓介
「よし、抜けたぞ!…このままゴールまで一直せ………!!」
気づいた時には既にボールに一輝の足が絡み付いていた。
取られまいと必死に抵抗するものの、その努力虚しく…
一輝
「…いい勝負だった…」
啓介
「…くっ…」
勝負は一輝の勝利で終わり、この後も啓介が一輝に勝つ事は一度も無かった…
一方、僕はというと…
後輩
「行きますよ、先輩。」
拓斗
「あ、うん。」
後輩からボールを受け取りドリブルを始める…
拓斗
「…ほっ…よっ…」
慣れないフェイントを使い相手を翻弄しようとする…
『…今だ!!』
そして、抜きにかかろうとするのだが…
スパーン……
拓斗
「あ…れ…?」
…あまりに綺麗に取られてしまい呆然と立ち尽くしてしまった。
しばらくして一輝が切り出した…
一輝
「そろそろ、3対2始めるぞ!」
啓介
「待て……時間って6時半までだったよな…?」
と言って啓介は学校の時計を指差した。
時刻は6時14分…
後片付けもあるので、もう練習出来るような時間ではない。
一輝
「ん、もうこんな時間か…皆、今日の練習はここまでだ!後片付けするぞ!」
皆で急いで後片付けをし、着替えて家路についた…
後の話だが、帰る時まで僕は後輩にあっさりボールを取られた事で、啓介達に散々からかわれる事になった……
今回は主に部活での事を書きました。少し最後の方がぐだぐだになってしまいました…まだまだ読みにくい文章ですが、読んで頂きありがとうございました。