表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

第一話

「ところで、当店の謎ティーのお味はいかがでしたか?」


ユヅキが起き上がりながら微笑みを浮かべて、俺は苦笑いする。


「メニューだったのかよ。淹れたの俺ですが……ただ、あの配分は絶妙だと思いました」


「ふふ、何よりです」


「ユヅキさんは、お客さんみんなに逆にお茶を淹れさせちゃったりするんですか?」


「いえ、薫君が薫君だったからです。あとは--まあ、淹れてくれそうだったし?」


テヘ。という感じに笑われて、がっくりと両肩を落とした。

こいついっぺん清水の舞台から突き落としてみようか……いや、こいつはなんか這い上がって来そうで怖いからいいか。


浮き沈みしている俺を横目に、ユヅキはさらさらと言葉を繋いだ。


「今回のお茶はですね、橋渡しのお茶と申しまして……一時だけ、まだあちらへ逝って間もない魂と、こちら側の生きた人間とを繋ぎやすくする効能があります。体内で消化されたら数時間で効能がなくなる、砂時計のようなお茶なんですよ。…ちなみに、僕が最初に飲んでいたのは滋養のお茶です」


「滋養はまあユヅキさんを見てれば必要なのはわかりますが…。そうか、不思議なお茶だったんですね。なんだか成分が違法でないか怖くなってきたような」


「大丈夫大丈夫、合法ですよ。まあ、作りかたは僕しか知りませんし、合法です」


「それはつまり……い、いや、な、なんでもないデス」


うろたえながら後退りした俺の腕を、ユヅキは、尋常ではない圧力を加えながら握った。

滋養いらないんじゃ?とか思ったのは内緒だ。


「薫君」


ドスのきいた声と凍てつく眼差しで、ユヅキは俺の顔を真っ直ぐに眺める。


「君の希望は、どこにある?」


その問いに、俺は一瞬はっとして、それから自分の胸のあたりに手を当てた。


「--ここに、あるみたいでした」


ユヅキは一瞬だけ天使のような笑みを浮かべ、再び、何を考えているのかわからない謎の笑みに戻す。


「それは、何よりです」


先ほどのお茶の味の時より、穏やかな響き。

今までが強烈すぎて、不思議なユヅキを見たような気がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ