表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/6

勝手に集団転移とかホントにやめてください。

 西暦2007年。


 正直、やり過ぎたと反省しています。


「いやー。最近、君の世界から来た人達は大活躍だねぇ!」


 気分良く話してくる私の友達。

 でも対面する私は愛想笑いで誤魔化すけれど、内心では冷や汗を流してました。


 他の異世界の神様から煽てられて、褒めちぎられて。

 調子に乗った結果、もうね。


 日本の奴ら、異世界救いまくり。


 いくら二次元って概念を強く持つ日本だといっても、ここまで異世界に適応するとはさすがの私も思いませんでした。


 なにあいつら。

 なんで普通に魔物と対峙しても、「これがゴブリンか!」とかいって喜んでんの?

 なんで亜人と遭遇しても、「ケモ耳! ケモ耳!」とか「これがエルフ! まな板のイメージがあったけど爆乳じゃねえか!」とかいって興奮してんの?

 日本を作った私ですら引いたわ。


 いや、悪いことじゃないんです。

 私が送った本人だし、なにより彼らの活躍は我が子のように嬉しい。

 だけど最近はその噂を聞きつけた神様から、そりゃーもう引っ張りだこ。


 終いには私の世界からやってくる勇者を頼り過ぎて、自分の世界の管理すら怠け始めてるくらい。

 それに気を悪くした最高神様が、原因は私にあるとみているという話すら出ている。


 もしもこれが原因で地球の管理者から降格になったらと思うとゾッとします。

 またちっちゃな世界の中でチマチマ木を生やしたり、自然現象を起こしたりするバイトをしなくてはいけなくなります。

 それは困る。大変困る。


 なのでこれ以上は他の異世界の神様からの依頼は断ることにしました。


「俺の世界で魔王が暴れてんだよねー。なあ、助けてくれないか?」


 どうやら彼の管理する世界では魔王が暴れ始めたようです。

 しかし私は丁重にお断りしました。


「ねえ。私の世界でとあるスケベジジイが皇帝だからって調子にのり始めたの。でも他の国は全然使いものにならないのよねー。あなたの世界の住人を転生させてもらってもいい?」


 どうやら彼女の管理する世界では人間同士の大きな戦争が起ころうとしているようです。

 しかし私は丁重にお断りしました。


「やばい。なんか邪神とかいうわけのわかんねーもんが出始めた。神でもないのに神様名乗るとかマジで許せねー。つーわけで勇者ちょっと貸してくんね?」


 どうやら彼の管理する世界では邪神という存在が突然変異で現れたそうです。

 しかし私は丁重にお断りしました。


 次から次へと押し寄せてくる依頼。

 だけどその一つ一つを断っていきます。

 地球と私の地位を守るためです。このくらいの手間は、惜しいですが我慢します。


 そうしていくと。

 徐々に依頼も少なくなってきました。

 私がホッと安堵したのも仕方のないことでしょう。


 そして少しの時間が経った、ある時のこと。


「君の世界から連れてきた勇者、変わらず大活躍だね!」

「は?」


 呆けてしまったのも無理のない話です。


 確かに少し前までは勇者を送りまくっていたので大活躍をしていました。

 でも最近ではそれもありません。

 だって私、異世界に日本の奴らを送ってないですもん。


「特に集団で転移させるなんてことは画期的だったよ! 僕も驚いたんだからさ!」

「なにそれ詳しく」


 友達の神様は困惑していましたが、私はお構い無し。

 根掘り葉掘り聞きました。

 そしてわかった新事実。


 他の世界の奴ら。


 私の世界の住人を勝手に(・・・)召喚しやがってる!


 さらに友達の話を聞くと、なにやら自分達の管理する世界の国に魔法陣の作り方とか教えて、住人の奴らに転移の仕事を任せていることが発覚した。


 確かに自分の手で転生させなければ、情報は神界には渡ってこない。

 ちくしょう。やられた。


 しかも大胆なのは、集団で転移させてる奴らです。


 一人一人チビチビと召喚するよりも、十人単位で召喚した方が戦力増加に繋がると思ったらしい。

 地球でいう学校のクラス単位で自分の世界に招き入れてる。


 しかも終わったら返すどころか、子孫を残して自分達の世界に地球の住人の血を受け継がそうともしてくる。


 さすがにこれは見逃せない。


 それからの私、ちょー頑張った。

 そりゃーもう。すんげー頑張った。


 あらゆる世界を駆けずり回り、地球の住人を元の世界に戻していきました。

 ほとんどが日本の、中、高校生だった。たまーにおっさんもいたけど。

 ここまで日本率高いとか、どんだけ神に評価されてんの。この島国の輩。


 でも私の頑張りの甲斐があって、だいたいの日本人の送還が終わりました。

 神様ってやろうと思えば何でもできるんですね。

 ここまで頑張れば、最高神様からもお咎めはないでしょう。


 今夜は枕を高くして寝られるぞ、と。

 安心しながら地球の管理に意識を注ぎ直しました。





 これが原因で、数年後の私はノイローゼになりかけた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ