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マジック・マキシマム  作者: フィー
前編 第1章:強さと決意
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第4話 ブルーランド

 ソムとアスマスはグリフォンに乗って、水路をたどっていった。デオンもグリフォンに乗り、湖中央に向かって飛んでいった。


 コリンは茶色で横2本縦2本を空中に書く。すると水路の幅に合った、厚さ10cmくらいの銀色の壁が出現する。

「準備できました」


「よし、俺たちも始めるか」

 ライエンが湖の岸に近づく。待ってたかのようにピランが一匹飛びかかってくる。


 エーヴァは白で横2本縦4本を空中に書く。すると、エーヴァの頭の上と地面に半径5mのマジックサークルが出現する。その円をすぐにピランの方へ移動させる。そして、ライエンに飛びかかってきたピランに上から光線を浴びせる。ピランは飛びかかった勢いのまま地面にぶつかったが、跳ねることはせず、動かなかった。


 マジックサークルの範囲の中だったら、上から光線を落とすことが出来る。

 その技がエーヴァの十八番だ。


 ピラン程度なら一撃でやっつけられる。光線を細くすることで、威力を大きくすることもできるが、今回はその必要はないようだった。


 最初は、一気に3匹程度襲い掛かり、エーヴァがまず襲い掛かってきたピランを攻撃、撃ち漏らしたピランをライエンが剣で切るという役割分担して、ピランを効率よく倒していたが、そのうちピランがあまり飛びかからなくなってきた。

 

「この魔器具使うか?」

 ライエンがエーヴァに尋ねる。


「そうだねぇ。あのSランクに襲い掛かってきた勢いで来られると、ちょっと厄介だね。それは使わず、場所を移すだけにした方が良いんじゃないかい?」


「無理することはないからな」

 ライエンは了承した。ユス湖に最初にきたときのデンゼルに向かって次々と襲い掛かってくるところを思い出した。エーヴァは意外と冷静なのだ。





  ソムとアスマスはグリフォンに乗って、水路をたどっていた。水路は相変わらず直線だった。

「ここか」

  水路と川の合流地点が見えた。


「はい、あれがバイズ川です」

 バイズ川。幅50kmの大きな川はロンドの森から下っていき、しばらく北へ下っていった後、東に曲がり流れていく。アスマスの言う通り、バイズ川はピランが大量にいるため、大きな船でないと渡れない。

 さらに頑丈であっても、ピランが船にかじりついてくるためすぐボロボロになり、割に合わないらしい。

 時間はかかるがユス湖を渡り、徒歩で歩いていった方が総合的にみて得策なのだ。


「……何もないな」

「そうですね」

  グリフォンから降り、水路と川の合流地点の近くに行くが何もない。水面をみようと近づいたら、ピランが飛びかかってきたが、バリアで防いだ。バリアに弾かれて勢いを失い、空中で佇んでいる魚を剣で撃退する。

 バリアは魔術師の基礎中の基礎である。戦闘をする者なら誰しもが覚えている魔法である。

 基本のバリアは自分を包むように半球の形をしている。


「収穫なしか、無駄足だったな」

「でもピランがユス湖で見つかった理由はわかりましたね」


 ──と、二人がグリフォンに乗っかろうとしたとき、

 ドバッッッッシャーーーーーン!!!


「───」


 バッと後ろを振り返る。

 そこには、川の水面から頭と体で高さ4m程ありそうな、巨大な蛇が出てきていた。頭はドラゴンのそれにえらがついたものといってもいいだろうか。

 グリフォンたちが驚き、乗っかろうとしていたソムとアスマスを振り払い、逃げてしまった。



 ──ここままではまずい。


「走るぞ!」

 ソムは叫ぶ。アスマスはうなずき、ソムと一緒に水路に沿って走る。

 しかし、モンスターの光線がソムたちの目の前を通る。ソムたちは止まるしかない。砂埃が舞って辺りが何も見えない。ソムは黄色の線で横3本縦1本を書く。剣に電気を帯びさせ、川に刺す勢いで刃をつける。川に電流が流れ、ところどころでスパークを起こす。


「こっちだ!」

 その光を見逃さずに、アスマスの手を引っ張り、川に沿って砂埃の中を走る。

  砂埃から抜けてしばらく走り続ける。あの砂埃のおかげで目くらましになったはずだ。ソムは後ろを振り返る。

 

 目の前は、水色の光。

 ソムはとっさの判断で半球の形をしたバリアを張り、防御する。

 数秒間、光線が出し続けられ、バリアの張り続けるしかない。

 モンスターは光線を撃つのをやめると、次に1秒口から魔力を溜め、また光線を発射する。

 ソムはまたバリアを張ったが、今度はバリアに当たった瞬間、バリアと光線の接触部分が水となり、穴が開いた。

 とっさに左に避け、攻撃を免れる。


「バリア貫通とか聞いてないぞ!」

 ソムはイラつきを叫びで発散する。


「そのはずです! あれは『ブルーランド』です!」

 アスマスもソムと調子を合わせる。彼も焦っているのだろう。


「『ブルーランド』!? なんだそりゃ!?」

 ソムはアスマスに顔を向ける。


「水路が出来ていたのも納得です。あれは大地を水に変える魔法攻撃を使うんです!」

「なんだそりゃ!?」


「とにかくデンゼルさんと合流しないと、非常に危険だということです!」


「何か策はあるか!?」

   ソムはアスマスに叫ぶ。


「わかりません。ブルーランドの鱗は頑丈ですから、そこらの攻撃じゃ効果がないと思います。電気もほとんど通しません」

 ソムとアスマスはブルーランドを睨みながら、一歩一歩後ずさりする。

 両者はお互いの様子をうかがう。


「背中向けたら、攻撃してくるよな……」

「気をつけてください。ブルーランドのさっきの魔法は、大地や無機質属性の魔法を水に変えてしまいます。体に当たっても、その部分も水になります。つまり急所に当たったら、即高度な治療をしてもらわないと、死んでしまいます」


「はっ!?」

 あの時とっさに避けてなかったら、どうなっていたことか。


 それに無機質属性の魔法を水にする。バリアは魔術師が使う基礎の基礎の魔法である。つまり、防御の役割を果たしてくれないということだ。基礎の基礎のバリアは、無機質属性の魔法なのである。

「何か足止めできるものがあればな……」


 そうこうしているうちに、ブルーランドが己がつくった水路へ入り込んでいく。水路の幅はブルーランドの体の幅ぎりぎりのところである。深さは川とあまり変わらないのか、体の後半部分は沈んだままである。

 ソムは水色の横3本縦1本を書き、剣を右上から左下へ振る。斬撃がブルーランドの水面近くの体へ飛ぶ。

 ブルーランドは避けようと水の中へ潜ろうとするが、頭が地面に当たり、潜ることに失敗する。

 

 斬撃がブルーランドに当たる。しかし傷もつかない。

「くそっ、やっぱダメか。」


  矢が飛んできて、ブルーランドの頭に当たるがはじかれる。

「僕の矢もダメです。目つぶしも期待できそうにありません」

「……」


 ブルーランドのような水属性のモンスターに効きそうな電気がダメ。自分の最大火力のかまいたちもダメ。他には……。

「アスマス、何か使えるのもってないか?」

「自分ができることは、この大型モンスターにはすべて無意味だと思います」


  水、火、闇、光、木、無機質……。

「ちくしょう!」

  文句を吐きながらも、次の作戦を実行する。水色の横1本縦1本と青色の横3本縦5本を組み合わせる。


「逃げるぞ!」

「えっ!?」


 ソムがアスマスを引っ張り、ブルーランドを背に走り出した。

 数秒して、後ろから大きな音がした。

 そのすぐ後に、ブルーランドの光線が地面をえぐる音がソムたちのかなり後ろからする。


「何をしたんですか!?」

「簡単な子供だましだ」

 騒音を出す波属性魔法に、数秒先の未来に魔法が発動する水属性魔法を組み合わせたのだ。ブルーランドから背を向けて逃げることで、注意を引いて、その直後にブルーランドの後ろから音を出すようにしたのだ。


 ソムとアスマスは水路から距離をとりながらも、水路に沿って走る。水路が他のメンバーがいるところの最短距離だからである。

 作戦は成功。しかし結果は所詮子供だまし、すぐに追いつかれてしまう。

 ブルーランドはしびれを切らしたのか、光線を続けて出してくる。


「仕方ない! 水路から離れるぞ! なるべくあいつから離れるんだ。遠くにいたらあの光線もなかなか当たらないだろう!」

 ソムとアスマスは光線をかわしながらバリアで守りながら、上から見れば水路から垂直に離れていく。


「そんなことしても……」

 意味はない。ブルーランドはその名のごとく大地を青く染め上げてしまう。ブルーランドは水属性魔法を何発も放ち、ソムとアスマスの周りを青い直線で囲んでしまう。


「ちくしょう……」

 もう何度目とも知らない文句が出てくる。


「もう魔力も使い切りそうです……」

 無理もない。ブルーランドの高威力の光線を何度もバリアで防いでいるのだ。バリアに消費する魔力も半端なものではない。

 ブルーランドはソムたちの一番近くの水路へ移動してきた。獲物を追い詰めた蛇はどっちから食べようか迷っているのか、ソムたちを睨んだままゆっくりと移動してくる。


「これはどうだ!」

 ブルーランドが目の前に来たとき、青の横2本縦3本で魔法を発動し、剣を水路に突っ込む。

 とたんに剣の周りから水路の水が凍り始め、ブルーランドの周りの水も凍り始めた。

 しかし、ブルーランドは何ともないようにガリガリガリッと氷を削って、進んでくる。

  打つ手なしか。ソムは周りを見回す。周りは平原と直線の水路だけ。ソムは交差している水路を見た。


「ん?」

 ひとつ、ソムは賭けともいえる案を思いつく。

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