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6 激痛、朦朧、イケメン登場



いた、いたたた、痛いぃーーーーっ!


おでこの右側のあたりが焼けつくように痛い。

さらにこの痛み、徐々に強くなっていく。


純花はもう堪らず、痛むところに手を持っていこうとして、その手をガシッと掴まれた。


「触れてはダメだ!」


鋭い制止の言葉が耳にガンガン響き、純花は「ううっ」と呻いた。


「意識が戻ったのか? スミカ、スミカ」


や、やめてぇ、大きな声出さないでぇ。頭に強烈に響くぅ。


ぎゅっと目を瞑り、顔をしかめた純花は、おかしなことに気づいた。


いまの声、男のひとの声だったけど……いったい、誰なの?


私は、いま朱里の家にいて……


朱里の蹴ったコントローラーが私に向かって飛んできて……それを受け止めた。……そしたらパシンって凄い音が響いたと同時に、頭も殴られたみたいにガツンって……


まったく気づかなかったけど、あのとき頭にも何か硬い物体が飛んできたのかな?

それが頭に当たって、いまこの状況……とか?


この男のひとは、きっと朱里の知り合いなんだろう。

私はかなり長いこと気を失っていて……その間に朱里が助けを呼び、このひとがやってきてくれた。……それなら納得できる。


いや、納得とかいまはどうでもいい。


い、痛いよぉーっ!

この痛み、早くどうにかしてぇぇーーーっ!


そうだ。救急車、救急車呼んで!


「きゅ……しゃ……よっ、よ……」


ダ、ダメだ。声に出せない。


「スミカ、気を強く持て。すぐにアッシュが戻って来てくれる。もう少し我慢しておくれ」


なだめるように言葉がかけられる。


アッシュ? そのひとに、この痛みをなんとかしてもらえるの? それより、救急車のほうが……それとも、そのひとお医者さんとか? ああ、きっとそうなんだ。


希望を胸に、必死に痛みに耐えるものの、痛みに負けて「ううう……」と呻きが唇から漏れる。


な、なんか気のせいかな? 熱も出てる気がする。


「ハァ、ハァ、ハァ……」


ああ、息苦しい……頭痛い……誰か早くなんとかしてぇ!


朱里、朱里はどこ? 美音は? 夕海は?


目尻に涙が滲んだ。

すると、純花を抱きかかえてくれているひとが、涙をそっと拭ってくれた。


「ああ、大丈夫だろうか? アッシュはまだなのか?」


不安いっぱいの言葉が耳に届く。


アッシュ……お医者さん……けどどこかで聞きいたことがある……ような?


あー、ダメだ……この強烈な痛みのせいで考えがまとまらない。

唇まで小刻みに震えてるし……


私、大丈夫なの? まさか、このまま死んでしまうんじゃ?


い、いやだ。死ぬのは嫌だよぉ。


思わず身体をよじってしまったようだ。純花を抱えてくれているひとが、慌てた声で「スミカ」と名を呼ぶ。さらに、「大丈夫だ。私が絶対に助けてやるからな。安心しろ」と必死になってなだめてくれる。


助けてくれる? ほんとに安心していいの? 私、死なない?


このまま死ぬのは、残念過ぎる。


だって私、疑似恋愛はたっぷりしたけど、リアルでは恋すらしたことないんだもん。

このままじゃ、死んでも死にきれない。


そっ、そうだよ! こんなところで死ぬもんかぁ!


痛みにあがき、なんとか瞼をこじ開ける。


視界はぼやけていたが、目の前にいるひと……純花を抱きかかえてくれている男のひとの顔はぼんやりとだが見えた。


へっ?


「スミカ?」


だ、誰なんだこのひと? 金色の髪に青い瞳……とんでもなくイケメンだぞ!


ええっ、私、こんなひとに抱きかかえてもらってたの?


湧き上がった胸のトキメキに、純花はこの場だけ痛みを忘れた。


朱里の知り合い、ハンパねぇ!


確かに、朱里も美女だけど……知り合いに外国人の金髪碧眼の超イケメンがいたとは……


「スミカ」


じっと見つめていたら、そのひとが囁くように純花の名を呼んでくれ……心臓がパコンと跳ねた。一瞬破裂したかと思う勢いだった。


そのせいで身体を大きく揺らしてしまい、金髪碧眼の超イケメンがさらに不安そうに眉を寄せる。


なんかよくわかんないけど、このイケメンさん、私のことを物凄く心配してくれているみたいだ。


うわーっ、ドキドキする♪


こ、これって恋の予感?


頭には、相変わらず激痛が走ってますけども……


「スミカ、無理をしなくていいんだぞ。私を安心させようと無理に微笑まないでくれ、かえって心配になるではないか」


いや、そんなつもりで笑ったんじゃないんです。


でも、私、もう限界みたい。


イケメンさんに抱かれて心配されているというこの美味し過ぎるシチュエーションに、変にテンションあげちゃったのがよくなかったみたいだ。


急激に意識が薄れていく。


えーっ、もうお終い?


これで私の人生は終わっちゃうの……?


あああああ……た~す~~け~~~てぇ~~~~


自分の声が頭の中で徐々に小さくなり、純花の意識はついに途絶えた。



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