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4 怖い笑み

――それからまた一時間後、


食事を終えて人心地ついたらしい朱里が、三人に向けて深々と頭を下げてきた。



「皆様には、ご迷惑をおかけし、すみませんでした」


反省という文字をその表情に浮き上がらせ、神妙に謝る。


「もういいよ」


美音は仕方なさそうに朱里に許しを与えた。


純花と夕海も許しを込めて頷く。



いつもは無表情の朱里なのに、このときばかりは、あからさまにほっとしたように胸を撫で下ろした。


「それにしても、朱里が乙女ゲームに嵌るとはね。こっちはそのことに驚いたよ」


純花は首を振りつつ朱里に言った。


すると朱里は、うっすらと笑みを浮かべた。


うはっ、しゅ、朱里! ちょっと怖いよ、その笑み。


ぞわっと、背中に鳥肌が立ったじゃないか!


「朱里がそこまで嵌っちゃうくらい、面白いってことなんだろうね」


まるで興味がなさそうに美音が言う。


この子は、こういったゲーム系、あまり好きじゃないからな。

身体を使って外で遊ぶほうが好きなんだよね。このグループでは唯一、アウトドア派だ。


まあ、そういう子がひとりいてくれるから、私ら三人も、少しは健康的な遊びをやるようになるわけだけどね。考えたら、ありがたい存在だ。



それにしても、蓋を開けてみたら、こんなことだったとは……

まさかのまさかだよ。


朱里がやっていたゲーム、実は私のなんだよね。


私は男のひとに対してかなり奥手でございまして……

現実では恋愛なんてまったく縁がないわけ。


なので、疑似恋愛のできる恋愛シミュレーションゲームが大好き♪


選択さえ誤らなければ、好きな男性たちとハッピーエンドが迎えられるんだもん。

しかも、攻略キャラたちは、イケメンやら美形ばっかり。


まあ、好みの問題はあるけどね。


中には、主人公である私を、さんざん罵ってくるようなやつもいるし……


そういうのが好みっていうひとにはいいだろうけど……私はそうじゃないから、そういうやつには、罵り返したくなる。


いや、実際ゲームやりながら罵り返してるけども。


なんでこんな好きでもないやつ攻略しなきゃならないんだよ!


と私は思っているってのに、私の分身である主人公は、


「罵られても、それでも好きなんだもの……」


なんて、のたまいやがるのよね。


おかげで私は、理不尽さに身悶えてしまうわけだよ。


けど、そいつを攻略しないことには、隠れキャラを攻略できないとなれば、悶々としながらでもそいつを攻略しなければならないわけよ。


まあ、そんな頑張りの末のコンプリートは、最高に達成感が……


って、いまはそんなこと、どうでもいいか。



こんな恋愛絡みのゲームなんてものに、朱里は興味ないだろうとわかっていながらも、少しはこういうものにも興味を持ったほうがいいと、無理やり貸したんだよね。


乙女ゲームの恋愛を疑似体験すれば、朱里の中にそういう感情を育めるんじゃないかという期待を込めて……


けど、まさか嵌った挙句、キャラを攻略しきれず、こんなことになっていたとは……


よくわからぬやつじゃ。


でもさ……


攻略サイトを見れば、簡単に攻略できるんだよ、朱里さん。


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