2 大絶叫
――エントランスの扉のロックが解除された。
もう夕海にはかまわず、純花はふたりを急かすようにしてマンションの中に入った。
「美音、朱里は何か言った?」
純花は、エレベーターに急いで歩み寄りながら早口で聞く。
「なんか、ぜんぜん元気なかった」
「そ、そう……」
純花と美音はそんなやりとりをし、どうする? と、無言で相談し合う。
すると美音が顔を歪めたが、純花だって同じくらい顔を歪めているだろう。
ああ、困った。
いったい、どうやって慰めれば……
「な、な、なんかね、朱里、泣いてた……みたいだったよ」
夕海がぼそぼそっと言った。
純花と美音はハッとして夕海に向き、三人して真顔で見つめ合ってしまう。
あの、どんなことにも決して動じることのなさそうな朱里が……泣いていたって?
こ、これはもう、事態はそうとう深刻のようじゃないか。
「大丈夫かぁーー」「朱里ーーっ!」「うおーーっ」
美音、純花、夕海の三人は、それぞれ叫びつつ、転がるようにエレベーターに乗り込んで上を目指した。
朱里の部屋のインターフォンを押したのは、一番最初にドアの前にかけつけた美音だった。
数秒遅れで美音に追いついた純花は、息を荒らげながら美音の背中にしがみついた。
さらに純花の腰に、夕海もしがみついてくる。
玄関のドアが開くのを、縦並びでくっついたまま、三人は緊張からドキドキして待った。
緊張マッスクのところで、ドアが開けられた。
純花は思わずビクッと身を震わせたが、あとのふたりも同じ反応をした。
「みんな……来てくれたんだ。私ね、もうどうしていいか……わかんなくて……」
そんな台詞を朱里は涙ながらに……
ではなかった。強烈に疲弊した様子で言い、三人に「どうぞ」と家に上がるように勧めてくる。
「朱里?」
「う、うん。ごめん……もうスタミナなくって……誰か、ご飯作っ……」
そう言った途端、朱里の身体はふらりと大きく揺れ、前屈みに倒れ込んできた。
「きゃーっ!」
一番前にいた美音が悲鳴を上げて、倒れてくる朱里をなんとか支えた。
純花は情けなくも、「しゅ、朱里ーーーっ」と叫ぶばかり。
残る夕海はというと、
「いやーっ! 死、な、な、い、でぇ~~~~!」と、大絶叫した。