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第七話 盗賊討伐

「こっちで間違いないんだろうね」

「ああ、この状況で化け物みたいなあんたを騙そうなんて、

 恐ろしくて考えねえよ」


 尾行して来た野盗を叩きのめした後、後ろ手に縛り上げてアジトへ案内させている。


 それにしても化け物とは酷い言い草だ。


 僕が精神も女性だったら更にぶちのめしているぞ。


「見た目は上玉の女だから愉しめると思ったのに…」


 愚痴る様な野盗のこの言葉である懸念が浮かび上がった。


「アジトには人質、というか、あんたたちの仲間が捕まえてる人がいるの?」


 どうもこいつらは女性を攫って、酷い事をしているような言動をしている。


 僕に襲いかかって来たのも、それが目的だったようだし。


 人質がいるといないのではかなり状況が変わってくる。


「今はいねぇよ。

 だから俺が”調達”に...、ひっ!」


 ”調達”の言葉に怒りが湧き、無意識の内に険しい顔になってしまった。


「お、俺は頭目に命令されたんだ。

 逆らったら俺が殺されちまうんだ。

 だから許しくれ、許してくれよぉ」


 心底僕に怯えているな。


 まあ、後ろ手に縛られていては、碌な抵抗も出来ないので無理もないか。


 それでなくても『パイルドライバー』を道で喰らわしているし。


 ただこれで決定した。


 こいつらに掛ける慈悲は無い。




「あそこか…、嘘も間違いもないだろうね?」


 夕方になった頃、遠目に洞窟が見える所まで案内させた上で野盗に確認をする。


「あ、あぁ、本当だ、信じてくれ!」


 洞窟の前に二人ほど見張りと思しき人間がいるし、ここまで怯えているなら嘘は言わないだろう。


「ご苦労さん、貴方の役目は終わったよ」

「え、じゃあ、助け...、ぐえっ!」


 野盗の言葉が終わるのを待たないで、その首を掻っ切った。


「そ、そんな、ひ、ひでぇ...」


 ヒューヒューと気道から空気を漏らしなが、必死で僕に訴えてくる。


 「お前らに攫われた女性は同じ様に助けてと言わなかったのか?

  それでお前はその人を助けたのか?」

なんてありきたりの事を尋ねるつもりはない。


 ただこいつも野盗の一味なので許す訳にはいかない。


(それにしても...)


 初めて人を殺した時はあんなに落ち込んだのに今回はさほどではない。


 決して良い気持ではないが、しっかりと自分を保っていられる。


 一度行った慣れと決意のおかげだろうが、もうあんな醜態は晒さない。




 僕は迂回して洞窟の上へ回った。上と言っても急斜面を通り越して、10m程の断崖絶壁とでもいえる場所だ。


 ここを下らないと洞窟の前に行けないのだが、下って行けば相手の意表を突いて上から一撃を加えることが出来る。


(源平合戦の”鵯越の逆落とし”もこんな感じだったのかな)


 あの話は騎馬で行ったのだが、人間で出来ない道理は無い。


 僕は迷わずに崖を駆け下っていく。


 少しだけ小石を落としてしまうが、あちらもここから攻めてくるとは思わないだろうから気にしていない。


「せいっ!」


 地面に着地するのが早いかどうかのタイミングで僕は見張りの一人を斬り殺した。


「な、なん...」


 相手の疑問の言葉さえ聞かずに、間髪入れずにもう一人の見張りも斬った。


(これで残りは20いるか、いないか、だな)


 ここまで案内させた野盗によると数はおよそ20人強。


 その野盗と今二人斬ったのだが、それでも結構な数になる。


 引き返してギルドを通して冒険者の増援を頼む手も間違いではない。


 しかし冒険者を集める時間も考慮すると、その間に他の場所に逃げられてしまう可能性は充分にある。


 それでは被害を受ける街が変わるだけで、解決にはなっていない。


(さてと、行きますか)


 結局一人で行動する事にした。


 一本道の通路になっている所を奥に向かって疾走を始める。


「うん、なんだ、お前...」


 正面から歩いてきた野盗の横を素早くすり抜け、すり抜けざまに首を掻っ切った。


 この野盗は自分が斬られた事すら判断出来ない内に、命を散らせた事だろう。


 それから2,3人、若しくはもっと多人数の集まりと遭遇するが、全て首を掻っ切って仕留めていく。


 相手が所詮野盗で戦闘訓練を受けてない事も大きいが、この洞窟の様に狭い空間は僕のとって最適なのだ。


 壁を蹴り、天井まで飛び上がり天井を蹴り、人間が対処しにくい立体的な動きを駆使するのに最適な場所だ。


 一方的な蹂躙と言っても過言でなく、野盗は次々と血飛沫を上げて絶命していく。


「あんたがこの野盗の頭目だね」


 洞窟の最奥が広間になっており、そこに残っていたのは5人。その中央の突き当りに偉そうにふんぞり返っている男がいる。


 もう、間違いないだろう。


「なんだ、こんな処には似つかわしくない上玉だな」


 そう言いながら、状況を鑑みて僕が討伐に来た冒険者である事は察しているだろう。


 ゆっくりと立ち上がりながら剣を抜き始める。周りにいる残りの4人もそれに倣う。


「はっ!」


 相手の動きを待つまでもなく、僕が斬りかかった。


 但し、頭目ではなく向かって一番左にいる男だ。


 会話の流れからすると、頭目に斬りかかる所だが、複数人で取り囲まれるのが一番怖い。


 だから一人ずつでも確実に減らしていく。


 それに一番左という事は

「このアマー!」

向かってくる相手は右側にしかいない。


 一瞬ではあるが、その一瞬で更に相手の数を減らす事が出来る。


 そして狼狽したところを立体的な動きで翻弄して、棒立ちの所を連続で斬る。


 これで残るは頭目のみ。


 頭目は長剣を構え、ゆっくりと間合いを詰めてくる。


(あと半歩踏み込んできたら、そこで...、えっ?!)


 動こうとした瞬間、僕の足首が何かに掴まれた。


「あ、浅かったのか?」


 斬ったと思ったが浅く、まだ絶命していなかった野盗に足首を掴まれてしまった。


「ちぃっ!」


 足首を掴んでいる手を切り離すが、その隙に頭目も僕に斬りかかって来た。


 ”カキーン”


 双剣の片方で何とか受け止めるが、その威力で手が痺れるような衝撃に見舞われてしまう。


 受け止めた短剣を落とし、動きが止まった僕に頭目は動きを止めずに体当たりをしてくる。


 これは躱せずにまともに喰らってしまった。


 そのまま押し倒されて、地面に抑え込まれた。


 最悪だった。


 小柄で力に劣る僕が最も避けなければ無ければならない状態にされてしまった。


 一縷の望みでまだ手にしていた短剣を振るおうとしたが、その手首を掴まれてしまった。


 そして力任せに短剣をむしり取られ

 ”カラーン”

手の届かない所に投げ捨てられてしまった。


 そして野盗は僕の両手首を一纏めに掴んで地面に抑え込んだ。


 これで僕は身を守る術がない。


 そして野盗の頭目は片手が自由になっている。


 このまま首でも絞められれば、そのまま殺されてしまうだろう。


 だが

「ほう、見れば見る程いい女だな」

僕の顔を見て舌なめずりしている。


 これからされるおぞましい事を嫌でも想像して、背筋に冷たいものが走る。


「くくく、そそられるぜ、この体...」

 ”ビリビリー”

「きゃあー!」


 僕の全身を見下ろしていた頭目がいきなり服の前面を縦に破り捨てた。


 胸の頂点は左右の布でギリギリ隠れているが、谷間を曝け出されて僕は悲鳴を上げてしまった。


「やめて、ごめんなさい、許して、許してください...」


 涙目で顔を背けて懇願する。もう完全に貞操の危機に瀕した、か弱い女性にしか見えないだろう。


「ははは、許すとでも思ってるのか、え…」


 頭目が僕の涙目での懇願に僅かにした油断。その油断を突いて、片手を頭目の手での拘束から抜き取った。


(ウソ泣き、成功♪)


 そして抜いた片手で軽く目を擦ってやる。


「ぐあっ!」


 目は軽く擦ってやるだけでも充分な効果を発揮する。


 両手の拘束がなくなった僕は頭目の下から抜け出そうとしたが、簡単には許してくれない。


 なんとか体半分頭の方向へとずり上がる事が出来たが、

「逃がすか!」

頭目は僕の腰から片足に掛けて、絶対に離れようとしない。


(ゾンビ映画かよ!)


 さながら、生者にまとわりつこうとするゾンビを連想してしまうが、

「これなら逃げるまでもない!」


 僕は体半分が上にずり上がっている上に片足は完全に自由だった。もう片足の位置も悪くない。


 ここで頭目の頭部に足を絡めて『縦三角締め』を仕掛けた。


 柔道の締め技の一つで、完全に決まれば落とす(失神させる)事が出来る。


「ぐ、ぐ、ぐぐぐぐ...」


 頭目は呻き声を上げているが、完全に決まったこの技を外す事は出来ない。


 程無くして、頭目の全身が脱力して完全に落とす事が出来たのだった。




「これで全員、だよね」


 失神している頭目に止めを刺して、注意深く辺りを見回すが誰も息をしていない。


 僕は盗賊の討伐を完了して洞窟から出た。


 もう日が殆ど暮れており、家路の途中からは月明りだけになってしまった。


 そこでふと

「このままの状態で戻るのは…」

僕は今の自分の姿を思い出した。


 野盗達の血飛沫での返り血を全身に浴びている上に、服の前面はボロボロになって胸が露出する寸前。手で押さえているからなんとかなっているが…。


 こんな露出過多の返り血べっとりの女性冒険者が入ってきたら、受付嬢が腰を抜かしかねない。


 幸い泉が見えたので、そこで血を落として着替える事にする。


 前に巨大蛸に襲われたが、今回は警戒をして...、と。


 僕は服を脱いで全裸になると、泉に足を踏み入れた。


 戦闘で熱く火照っていた体に、冷たい泉の水が心地よい。


 手で掬って体にかけて、返り血を落としていく。


 そうしているとどうしても自分の体が目に入る。


 何度も見ているが、つくづく男を魅了する体型をしている。


 胸も結構大きく、腰も括れて、尻も肉付きがいい。


 少々、太腿が太いかもしれないが脚線美は中々のものだと思う。


 月明りの中、湖面に映る姿は煽情的な魅力が更に増している。


 自分の体だからじっくりと心の中で品評できるけど、他人の体でやったら変態だよね。


 そして今回はその体に助けられた。


 油断した訳ではなかったが、蹂躙される寸前だった。


 助かったのは僕が男にとって魅力的な女性の容姿、特に体をしていたからだ。


 納得できなかった女性の体だけど、今回は完全に助けられた。


 同時にそれは僕の単独(ソロ)での活動の限界を思い知る事になった。


「『ルシフェルス』に着いたら、

 パーティーを組む事を考えるべきかもしれない」


 今の僕が単独(ソロ)で行動してるのは、僕が実質お尋ね者だからだ。


 しかし『ルシフェルス』に着けば探索も鈍るし、遠からず打ち切られるだろう。


 それなら...。


 でも誰と組む?


 冒険者に知り合いはいない。


 見ず知らずの冒険者と組むにしたら、男の冒険者は危険だ。


 全ての男がそうだとは言わないが、やはりこの体が目当ての輩が近づいてくるかもしれない。


 そうなると女性冒険者となるが、数が少ないのが最大の問題だ。


 両方に言える事だが、実力と人格、双方を完全に把握するのは難しい。


(いや、一人だけ知り合い、しかも凄腕の女性冒険者がいたっけ。

 でもあの人は…、そもそも今どこにいるやら)


「ふう、ここまでにしよう。

 これ以上、体を冷やしたら折角回復したのに、

 また風邪をひいてしまう」






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