再会。
好きな音楽を聴きながら、来年に向けての仕事の企画書をノートパソコンで製作していると、パソコンにつないで充電中になっていたスマートフォンが着信を報せた。
僕はパソコンのキーを叩く手を止めて、スマートフォンの通知を確認した。内容は高校時代の友人たちと作ったグループLINEだった。確認すると、高校時代のクラスメイトである藤崎空からのLINEだった。
「今年もあとわずかになりました。今年も恒例のクリスマス会兼忘年会を行います。会場はカフェ&ダイナ―ROKKINGIRLです。クリスマスケーキの準備があるので、参加表明は早めにお願いいたします」
藤崎のメッセージの下には『出席する/出席しない』の投票欄が用意してあった。
僕はメッセージ欄の『出席する』をタップした。
クリスマス会当日の夕方、僕はクリスマスプレゼントの発泡ぶどうジュースの瓶を二本鞄に入れて、中古で買ったハーレーのダイナローライダーに跨り、会場となる埼玉のカフェ&ダイナーへと向かった。
茜色に染まってゆく空を背にしながら信号で止まると、僕のハーレーのエンジン音とは違う、古い国産オートバイのエンジン音が聞こえてきた。バイクは何だろうと思ってミラーを確認すると、バイクは黒いカワサキのZ1だった。いいバイクに乗っているなと思わず胸の中で呟くと、黒いジャケットに身を包んだZ1のライダーは、僕に近づいて声を掛けた。
「谷崎君」
Z1のライダーは僕の名前を呼んだ。それをきっかけにして、僕はZ1のライダーが同級生の影山君である事に気づいた。彼は先月の中頃に、カワサキのZ1を購入した事をインスタグラムに上げていたのだった。
「谷崎君もクリスマス会かい?」
「そうだよ、君もバイクで来たんだ」
「まあね」
影山君は自信に満ちた様子で答えた。所帯を持ち仕事も順調となれば、バイクに乗った姿が自信に満ちているのも当然だった。
僕は影山君のZ1を見ながら、こう続けた。
「良いバイクだね」
「憧れのバイクだったからね」
影山君が答えると、信号が青になった。僕たちは申し合わせたようにバイクを走らせた。
会場のカフェ&ダイナーにたどり着くと、僕と影山君はバイク置き場にそれぞれのバイクを停めた。店の入り口では、藤崎空が参加者の受付を行ってくれていた。
受付を済ませて、挨拶を交わしたあと、僕が手土産のぶどうジュースを手渡すと、藤崎は「ありがとう」と礼を言ってくれた。
僕と影山君が来て三十分もすると、今回のクリスマス会兼忘年会に集まる面々がそろった。僕たちは久々の再会を祝いながらお互いの近況報告を行い、皿に盛られた飲食物や飲み物に手を伸ばした。僕と影山君はバイクだったので、アルコールは飲まずソフトドリンクだった。
煙草を吸うために会場を離れると、影山君も僕と同じように会場を離れて煙草を吸っていた。僕は軽く彼に挨拶をすると寒い空気に身を晒して、会場の熱気で熱くなった身体を冷ましながら、煙草に火をつけた。
「どうよ、最近調子は」
火をつけた煙草を一口吸って煙を吐き出したあと、僕は影山君に訊いた。
「どうもこうも、離婚したよ」
影山君はため息交じりに答えた。はっとした僕は彼の横顔を見て、クリスマスも煙草を吸うのもつまらないと言った様子で、こう続けた。
「お互いの時間が確保できなくてさ、それで別れたんだ。一応、子どもが高校を卒業するまでの養育費は払うけれどね。時々バイクに乗って会いに行こうとは思っている」
影山君は起きているはずの出来事を、過去を振り返るように語った。影山君の視線の先には、彼が買ったZ1と、僕のハーレーが会場から漏れた明りに照らされて、青白く浮かび上がっていた。




