表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/5

再会。

 好きな音楽を聴きながら、来年に向けての仕事の企画書をノートパソコンで製作していると、パソコンにつないで充電中になっていたスマートフォンが着信を報せた。

 僕はパソコンのキーを叩く手を止めて、スマートフォンの通知を確認した。内容は高校時代の友人たちと作ったグループLINEだった。確認すると、高校時代のクラスメイトである藤崎空からのLINEだった。

「今年もあとわずかになりました。今年も恒例のクリスマス会兼忘年会を行います。会場はカフェ&ダイナ―ROKKINGIRLです。クリスマスケーキの準備があるので、参加表明は早めにお願いいたします」

 藤崎のメッセージの下には『出席する/出席しない』の投票欄が用意してあった。

 僕はメッセージ欄の『出席する』をタップした。



 クリスマス会当日の夕方、僕はクリスマスプレゼントの発泡ぶどうジュースの瓶を二本鞄に入れて、中古で買ったハーレーのダイナローライダーに跨り、会場となる埼玉のカフェ&ダイナーへと向かった。

 茜色に染まってゆく空を背にしながら信号で止まると、僕のハーレーのエンジン音とは違う、古い国産オートバイのエンジン音が聞こえてきた。バイクは何だろうと思ってミラーを確認すると、バイクは黒いカワサキのZ1だった。いいバイクに乗っているなと思わず胸の中で呟くと、黒いジャケットに身を包んだZ1のライダーは、僕に近づいて声を掛けた。

「谷崎君」

 Z1のライダーは僕の名前を呼んだ。それをきっかけにして、僕はZ1のライダーが同級生の影山君である事に気づいた。彼は先月の中頃に、カワサキのZ1を購入した事をインスタグラムに上げていたのだった。

「谷崎君もクリスマス会かい?」

「そうだよ、君もバイクで来たんだ」

「まあね」

 影山君は自信に満ちた様子で答えた。所帯を持ち仕事も順調となれば、バイクに乗った姿が自信に満ちているのも当然だった。

 僕は影山君のZ1を見ながら、こう続けた。

「良いバイクだね」

「憧れのバイクだったからね」

 影山君が答えると、信号が青になった。僕たちは申し合わせたようにバイクを走らせた。


 会場のカフェ&ダイナーにたどり着くと、僕と影山君はバイク置き場にそれぞれのバイクを停めた。店の入り口では、藤崎空が参加者の受付を行ってくれていた。

 受付を済ませて、挨拶を交わしたあと、僕が手土産のぶどうジュースを手渡すと、藤崎は「ありがとう」と礼を言ってくれた。

 僕と影山君が来て三十分もすると、今回のクリスマス会兼忘年会に集まる面々がそろった。僕たちは久々の再会を祝いながらお互いの近況報告を行い、皿に盛られた飲食物や飲み物に手を伸ばした。僕と影山君はバイクだったので、アルコールは飲まずソフトドリンクだった。

 煙草を吸うために会場を離れると、影山君も僕と同じように会場を離れて煙草を吸っていた。僕は軽く彼に挨拶をすると寒い空気に身を晒して、会場の熱気で熱くなった身体を冷ましながら、煙草に火をつけた。

「どうよ、最近調子は」

 火をつけた煙草を一口吸って煙を吐き出したあと、僕は影山君に訊いた。

「どうもこうも、離婚したよ」

 影山君はため息交じりに答えた。はっとした僕は彼の横顔を見て、クリスマスも煙草を吸うのもつまらないと言った様子で、こう続けた。

「お互いの時間が確保できなくてさ、それで別れたんだ。一応、子どもが高校を卒業するまでの養育費は払うけれどね。時々バイクに乗って会いに行こうとは思っている」

 影山君は起きているはずの出来事を、過去を振り返るように語った。影山君の視線の先には、彼が買ったZ1と、僕のハーレーが会場から漏れた明りに照らされて、青白く浮かび上がっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ