episode8
そうして二人は雅臣のバイト先である喫茶店へと向かう。明楽は緊張して話せなくなるのでは...と思っていたが杞憂に終わった。何故なら、雅臣が学校の事やバイト先の話しなど色々と話してくれたからである。そうして普通に歩いている二人であったが...視線がとても集まった。「見て、あの二人」「凄いカッコイイ」「片方の子女の子なの?!」と囁かれているのが耳に入る。パッと見、王子様が二人で歩いている様に見えるからだろうか。
「あ、ここだよ。」
そうこうしているうちに喫茶店へ着いたようで、雅臣に促され明楽は店内へと入っていく。「いらっしゃいませー」と店の奥から声が聞こえ、声の持ち主が明楽達の元へとやって来る。
「お疲れ様です。店長。」
「おぉ、雅臣か。てことは、コチラが?」
「あ、初めまして。花ヶ崎 明楽です。」
「雅臣から話しは色々聞いているよ。さ、立ち話しもなんだし座って座って。」
明楽は「話しってなんの事だろう。面接の事かな?」と思い彼女は雅臣に目をやると、何故か彼は耳まで真っ赤になっていた。
「小鳥遊先輩?」
「あぁ!いや、なんでもないよ。大丈夫大丈夫。」
雅臣はなんとか誤魔化しながら「さぁ、座って。」と席へ案内してくれた。
「それじゃあ面接...て言うか面談かな?を始めます。僕がここの店長の佐々木 歩です。よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
「いやぁ、ホント助かったよ。なにぶん深刻な人手不足でね。ホント猫の手でも借りたいくらい。」
店長の佐々木はフランクな性格なのか緊張を感じさせる事は無かった。最初に、週何回入れるか?曜日は?何時間まで働けるか...等と事務的な質問をされ、明楽はそつなく応えていく。一通りの質問が終わる頃、見計らっていたかのように一人の男性が人数分のコーヒーを持って来た。
「良かったら飲んでね。」
「ありがとうございます。いただきます。」
佐々木に促され一口口にふくむと、明楽は目をキラキラさせながら「美味しい」と呟いた。
「ウチのコーヒーは絶品でしょー。」
「はい。とても美味しいです。」
佐々木は明楽のそんな様子を見て、「よぉし。」と言うと、こう言葉を続けた。
「明楽ちゃん、是非ウチで働いてくれないかい?」
「...私なんかで良いんですか?」
「もちろん!事前に雅臣から話しも聞いていたし、面談の受け応えもバッチリ。何よりウチのコーヒーを美味しいって言ってくれたからね。」
「ありがとうございます!よろしくお願いします。」
「それじゃあ、早速来週からお願いしようかな。安心して。慣れないうちは雅臣とシフト被せとくから。」
「詳しく決まったら連絡するから連絡先聞いてもいい?」と聞かれ明楽はそれに応えた。
「うん。こんなもんかな。今日はありがとう。来週からよろしくね。雅臣、ちゃんと明楽ちゃんを送って行くんだよ?」
「もちろんですよ、歩さん。」
「今日はありがとうございました。コーヒーもご馳走様です。」
「二人共気をつけてね。」
そう言って明楽と雅臣は店を後にし帰路へと着いた。
「小鳥遊先輩、今日はありがとうございました。」
「こちらこそ。...ねぇ、二つだけお願いしてもいい?」
「?なんですか?」
雅臣は少し言い淀むがなんとか言葉を紡ぐ。
「"小鳥遊"じゃなくて"雅臣"って呼んでくれないかな。...ダメ?」
明楽は一瞬何を言われたのか分からずフリーズしてしまったが、顔にカァッと熱が集まるのを感じ状況を飲み込んだ。
「い、良いんですか?」
「うん。それからもう一つのお願い。"明楽"って呼んでもいい?」
明楽はその言葉に嬉しくて泣きそうになるのを堪えながら「もちろんです!」と返した。
「ありがとう。改めて、これからよろしくね、明楽。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。...雅臣先輩。」




